アメリカの心理学者バラス・スキナーのスモールステップ法。
「A子ちゃんのこと」 A子ちゃんのこと | 高木繁美, ディリリー | 少女マンガ | Kindleストア | Amazon
今思うと昭和40年代の通信販売はほとんど詐欺ばかりだった。アマゾンが日本で広がった頃、オジサンたちは自分の子供の頃を思い出して警戒したはず。
たとえば、近所のケンイチくんはある雑誌に載っていた「忍者キット」を通信販売で購入した。当時は「伊賀の影丸」や「隠密剣士」などが流行しており忍者が高い壁をやすやすと飛び越えることに私たちは興奮していたのだ。
ボイスドラマ『スペック・ハイ(起)』ご依頼作品 - YouTube
そこに「あなたも壁をスイスイ飛び越えられる」「夢の忍者キット」などという広告を見たら信じてしまう子もいたわけだ。で、ケンイチくんに送られてきたものを見せてもらった。すると、それは何かの種子だった。
「この種を植えて芽が出てきたら毎日飛び越えよう!」
と書いてあった。
ボイスドラマ『スペック・ハイ(承)』ご依頼作品 - YouTube
小学生の頭では「なるほど!」と思った。
「植物は毎日1ミリくらいしか伸びないだろう。それくらいなら毎日飛び越えられる」
「そっか、成長して2mくらいになった頃に自分も2m飛び越えられる!」
と、興奮したものだ。ケンイチくんは毎朝、芽が出た謎の植物を飛び越え続けた。
しかし、彼が2mの大ジャンプをすることはなかった。そして、
「ボクは忍者になれない・・・」
と、絶望の淵に沈んでいった。
ボイスドラマ『スペック・ハイ(結)』ご依頼作品 - YouTube
アメリカの心理学者バラス・スキナーによって提唱された「スモールステップ法」をご存じだろうか?スモールステップとは簡単に言うと「目標を細分化して一つずつのステップを確実に達成することで、最終的な目標へと近付ける」という、目標達成のためのメソッドです。
1950年代に生まれ今も広く応用されています。
ボイスドラマ『スペック・ハイ SP』ご依頼作品 - YouTube
受験産業でも「55段階」を掲げて指導している有名な予備校があります。公文も同じ方式を採っています。数学なら、小学レベルから高校レベルまで問題を細分化させて1枚1枚やってゆくのです。
私の塾にも中学1年生なのに
「公文で高校レベルまでの数学をマスターしました」
と言って入塾を希望される方がたまにみえます。
ボイスドラマ『ユリちゃんの「京都大学、医学部医学科」合格体験記』【ご依頼サンプル】 - YouTube
英語検定や数学検定も「級」を用いて徐々に上のレベルをめざす方式。私は、この学習方式を否定するつもりはありません。確かに小学生レベルくらいまでなら有効だと思います。しかし、私の塾は難関大学をめざす子が多いので、このスモールステップ方式は役に立ちません。
ボイスドラマ『ユリちゃんの「京都大学、医学部医学科」合格体験記-外伝-』【ご依頼サンプル】 - YouTube
最初に書かせてもらったケンイチくんは、忍者キットを使って1mくらいまでなら飛び越えられました。しかし、それ以上は無理だと絶望したのです。私の塾に
「高校レベルの数学をマスターしました」
と、意気揚々と入塾してきてくれる子も本物の京大の過去問を見たら絶望します。
ボイスドラマ『ユリちゃんの「京都大学、医学部医学科」合格体験記-数学編-』【ご依頼サンプル】 - YouTube
私は英検1級に合格したり、京大英語で8割をとっていることを公表している。それで、
「どうやって勉強したのですか?」
と、質問を受けることが多い。しかし、あるレベル以上になったらスモールステップのやり方は通用しない。
「こうやればいい」
と言う決まった方法はない。
ボイスドラマ『ユリちゃんの「京都大学、医学部医学科」合格体験記-破局編-』【ご依頼サンプル】 - YouTube
私は酒もタバコもギャンブルも女遊びも一切せず、お金と時間を勉強に向けた。これだけで
「それは、無理」
という子が多い。学生時代は部活も趣味も恋愛も諦めた。才能がないので一つのことに全力を向けるしかなかったのです。
ボイスドラマ『ユリちゃんの「京都大学、医学部医学科」合格体験記-最終章-』【ご依頼サンプル】 - YouTube
これは受験勉強だけではなくて、スポーツでも芸術でもなんでも当てはまる。徐々にレベルを上げていけば誰でも甲子園に行けるかどうか。誰でも画家になれるかどうか。少し考えたら分かるはず。
ユリちゃんの「京都大学医学部医学科」合格体験記 - YouTube
ある程度英語が分かり、ある程度野球が楽しめ、ある程度絵が描けたら人生が少し楽しくなる。みんながプロになる必要はないし、なれない。自分の出来る範囲で楽しい人生が送れたらそれでいい。
そういう本音を生徒に話してやらないと、ケンイチくんのように絶望の淵に沈んでしまう。
私の指導させてもらっている京大受験生はスモールステップのプリントなんぞリクエストして来ない。ひたすら過去問を解いている。そして、講師に求めるのは“的確な解き方”だけ。
だから、プリントなど作る時間があったら過去問の解き方、より上手な解き方の研究に専念するのが講師の仕事だと思う。なのに、多くの予備校は過激なキャッチコピーや変な髪型の講師で集客しようとしている。嘆かわしい。