概要: UniswapのDAIプールの流動性提供者は3種に分類できて、各々が投資判断のために目安とするリターンの値を考えているでしょう。
この記事は以下の記事の日本語訳です。
Uniswapの流動性提供者(Liquidity Provider, LP)は取引手数料を得ることができる代わりに価格変動損失(impermanent loss)のリスクを負います。こみこみの利益を理解するのに便利なツールが最近いくつか開発されました(Pools, zumzoom など)。
数あるプールのなかで、DAIプールは2019年2月にKyberに使用され始めて以来、安定して20%以上の手数料収入を集めています(図1の濃い緑線を参照)。こみこみの利益はというと、おおよそ20 +/- 15%くらいで推移しています(図1の薄い緑線を参照)。ちなみにこれらは90日間の移動平均で算出されています。このデータから言えることは、DAIプールの流動性提供者にとってはもはや損得が問題なのではなく、ただのレンディングより儲かるかどうかが問題になっているだろう、ということです。
CompooundやdYdXといったDeFiのプロトコルを用いたDAIのレンディング金利は2019年4月以来、約10%で推移しています(図2)。ETHのレンディング金利はDeFi系では今は高くないですが、BlockFiのようなcentralizedなサービスでは約4%です。これらの値はLoanScanで確認できます。
ざっくり言うと、LPは次の3種類いるということができるでしょう。
1. 中間の人: ETHとDAIを半々で持っている
2. ETHマキシマリスト: 資産が全てETH
3. フィアットマキシマリスト: 資産が全てDAI
そして彼らはそれぞれ、レンディングをするか流動性提供をするかの境目となる年利の値X%を心に持っているでしょう。それについて考察してみましょう。
Xを見積もるために、以下のような値を想定しました。
- ETHのレンディング金利: 4%(BlockFi等)もしくは無視(DeFi系)
- ETHの借り入れ金利: 1%
- DAIのレンディング金利: 10%
- DAIの借り入れ金利: 15%
- 借りるときの担保率: 500%
この人はETHのレンディングで4%、DAIで10%を得ることができます。トータルで見れば7%なので、Xはこれを上回れば良いです: X > 7%。
この人はDAIプールに参加するためにDAIを借りる必要があります。借りるDAIの価値を1とすれば、担保に入れるETHの価値は5です。そしてこの人は借りたDAIと同じ価値1のETHを合わせてDAIプールに参加します。つまり、もともとの資産価値は6です。
プールには価値2相当を提供しているので、Uniswapからのリターンは2X%と表すことができます。ちなみにDAIを借りるために15%の金利を払っています。担保に入れているETHからのレンディング金利も少しはありますが、ここでは無視します。すると、全資産から見たこみこみのリターンというのは、(2X - 15)/6%です。ただのレンディングでは4%を得られるとして、これよりもUniswapが良い選択となる条件はX > 18.5%です。
ETHマキシマリストの場合と同様に、この人もETHを借りる必要があります。ETHマキシマリストの場合との違いは、ETHの借り入れ金利が1%と安価で、担保に入れるDAIの金利が大きい(10%)ということです。
そうすると、この人が気にする条件は(2X - 1 + 5*10)/6 > 10%が成り立つかどうかで、つまりX > 5.5%です。
いくつかの前提条件をおいて、DAIプールの流動性提供者の各人種について投資判断に関わるリターンの値を計算してみました。DAIプールの成長に関わる要素は多数あると思いますが、ここで示した人種の割合というのもその要素の一つでしょう。
著者: kyoronut