プールの非対称度が大きくなるほど、スリッページ耐性が弱くなります。
前回の記事ではBalancerプールの非対称度を大きくすると価格変動損失を軽減できることを紹介しました。今回はその副作用ともいえるスリッページへの影響を紹介します。
導出はこちらの記事に任せるとして、いきなり答えを書くと、2アセットプールでのスリッページは次のようになります:
r / (2 * w * (1 - w))
ここでrはトレード額 / プール総額、wはアセットのウェイトで w < 1 とします。
図にしたほうが分かりやすいと思うので、r=0.5%の場合(例: プール総額が1億円で、50万円を取引するような場合)を描いてみました。
w=0.5の対称プールの時にスリッページが1%で最小となりますが、そこから離れるにつれて大きくなり、80:20プールでは約1.5倍、90:10プールでは約2.5倍となることが分かります。
対称プールに近づくほど低スリッページで効率のよい取引環境を提供できることから、BalancerのBALトークン配布計算では対称プールほど配布量が多くなるようにratio factorという重みづけが考慮されています*。2アセットプールでは次式のようになります:
w * (1 - w) * 4
*3つ以上のアセットプールの場合など、詳細はこちらをご覧ください。
Balancer非対称プールとスリッページの紹介でした。個人的な印象では、90:10までバランスを崩してもスリッページが2.5倍程度しか増えないことに驚きました。つまりプール総額を2.5倍増やすだけで対称プールと同じスリッページを提供できるんですね。さらに、非対称プールのほうが価格変動損失は小さいので、プール提供者は参加しやすいという性質があります。今後のBalancerプール群の成長に注目です。
著者 kyoronut