北海道出発前には、決まっていなかったことですが、
北海道全域に緊急事態宣言が出されることになりました。
私達が小樽に入ったのはその前夜のようでした。
とりあえず、ホテルにチェックイン。
待っていたフロントのお姉さんが、多言語に対応している自動チェックインマシーンを使って、チェックイン手続きをしてくれました。
夜は殆どの店が閉まっていました。
私達は出発段階で買ってあった野菜などの食料を船でほぼ食べ尽くした状態で、あんまりお腹は空いてませんでした。
しかし、少し小腹が空いてきた頃、街に出ると殆どのお店は閉まっていました。
そんな中で一軒だけ空いていたお店の店主が、ウロチョロしている私達を呼びとめてくれました。
「緊急事態宣言で明日からはお休みだけど、今日はいいよ」
「私達は小腹が空いているだけで、お酒は飲まないんですけど、いいですか」
「いいよ。ピザならあるよ」
「おいくらですか?」
「750円だよ」
薄い生地のおいしいトマトピザをいただきました。
店には数人、地元の常連客がいました。
「明日からしばらく会えないね」
などと店主と、名残り惜しそうに話しています。
「また、空いたら来てね」
酒類のあるお店はとにかく休業せざるを得ないようでした。
この仕事が好きで飲んで客と話すのが好きな店長は、運命を忍受しながら、たんたんとして見えましたが、
胸中は窺いしれませんでした。