前回
先週の木曜夜くらいから実家に帰ってました。別に家族間のアレそれってわけではなく、妹とテニスのミュージカルに行くために帰ってました。早めに帰らざる終えなかったのは電子機器に疎すぎる妹に『iphone11買いに行くからはよ帰って来い』といわれたので夫に相談した上で単独帰省です。今の携帯屋さんは『お年寄りの方は分かる方をつれてきてね★』というお願いを予約時にいってくるもんだから困りますね。まぁ私の妹ということは少なくともお年寄りではないのですが。
さてそんな感じで日曜にテニスラケットをふりまわすミュージカルに行ってきました。ウッカリ2.5に手を出してしまったきっかけであり、知る人はピンと来るとおもうけどやり始めくらいの頃、主人公校の代替わりで空耳ミュージカルとして特定のコミュニティで猛威をふるっていたアレです。今その界隈に踏み入れて空耳ミュージカルは当時の手探り状態の産物だったと知ったのですが、時は流れて現在は若手の登竜門。所謂普通の芝居を好きな人からしたら『なんじゃこりゃ』といわれることもままあるミュージカルです。
で、まぁサイドシートとはいえ最前列だったんですよ。見てる最中は首が痛いけど客降りではまんまと若い男の子が目の前でニコニコしたりハイタッチされたらそりゃあもう帰る頃にはもう一度物販いってブロマイド買い足すよね。で、帰り道には妹と私の友人と話すわけですよ感想を。(私の友人と私の妹と私という謎布陣で行った)
ここまで顔の話をしといていうのはてんでおかしいのですが、意外と出るのが誰はダンス上手いね、とか誰は歌が良かったね、とかあの子は何公演も出てるのに上手くならないの?とか割とちゃんと内容の感想を言ったりもします。
私の友人はもともと自分が演劇部をやったりしていて、2.5だからとか関係なしに観劇が趣味なところがあったり、私の妹は割りと3次元よりの感覚があります。何故か私を介することなく最近では二人で推しのイベントに行ったりして楽しんでいるようです。おねえちゃんはうれしいよ、いもうとにともだちがふえてね。
そして私は2次元よりの目線で2.5をみます。いいなと思った俳優さんの円盤とかブロマイドとかは買うけどリアイベまでは別にいいかなという、所謂『茶の間』と呼ばれる層です。が、気質がヲタクなせいか、いいなと思った俳優を『調べて』しまうんですよ。元々テニスのミュージカルは歴史が長いことが良いことも悪いことも呼び寄せているのですが、悪いこととして、キャストの行動によって円盤が販売停止になるというケースなどがあります。そういう知識のせいで『余計なことを調べる』ということをしてしまいます。
今回こちら↓を読みました。さらっと小さなネタバレなどが挟まるかもしれないので注意。
以前に感想を書かせていただいた本の作者さんの既刊になります。
この本を読もうとしたきっかけは間違いなく先日読んだ新刊が面白かった、というのもあるのですが、書かれている方が舞台の脚本・演出などをされてる方と知ったのが大きいです。取材も何もそれ以前によく現場を知ってる方が書く不穏なタイトル。行く先々の本屋でチェックをしていたのですが、何の因果かテニミュをみたあとの帰宅途中に見つけたのでこれはもう買うしかないとノータイムで会計に行ってきました。
あらすじとしては、
俳優ヲタクの女、りさ子。そしてりさ子が推してる俳優『瀬川翔太』。いつものように彼の舞台を全部見に行き、熱い思いを手紙にしたため、プレゼントを渡す。観劇後は同じ俳優を推す友人と熱く感想を語り合い、帰路について日常に戻る。しがない普通のOLだけど毎日お仕事頑張って推しの為にお金を稼いでまた舞台へ・・・。そんな最中推しに彼女がいるのでは?という疑惑が出て・・・
という現実にも全然あるようなあらすじ。
まず一つ目、読み終わった感想があるのですが『ホラー』でした。ジャンルカテゴリってそんなに私は読解力も語彙力ないのでアレなのですが、多分ホラーかミステリーだと思う。あ、いやサスペンスかな?
鴎外パイセンの話で言うなら間違いなく美里と同じカテゴリの女、りさ子。
りさ子の視点からスタートするこの本は、最初から不穏な空気から始まります。基本的にはりさ子の俳優へのクソデカ感情を見せ付けられます。
推しとハイタッチした時になんとなく軽く握られた気がした、目線がこっちに向いてた、目が語ってた、彼は私を認知している?
並べられる情景描写にゾクゾクしました。何故だろう、開始から入るこの描写に対しての『いやそれは多分勘違いだよ』という気持ちのオンパレード。でも気持ちはわかる。私も俳優と目線があってしまえばドキっとするし、なんならライブ中にこっちに手を振ってくれた俳優に合わせたペンラの色が、周囲を確認したら私だけ・・・もしや私に手を振ってくれたか?!とか超ポジティブエンジョイシンキングをかました経験もある。妹よあの時は冷たいツッコミありがとう、お姉ちゃんは冷静になったよ。
手紙を渡す際も千秋楽だとゴタゴタしちゃって俳優さんの手に渡らないかもしれない、そんなうわさを聞いたから出待ちして直接渡そう!
出待ちすんな。アウトや。
物語の序盤に行われるこの行為、中盤に差し掛かった際にりさ子が『出待ちするやばいファンがいるから私が見張らなきゃ』という綺麗な矛盾とダブスタまでワンセットでもう笑いました。お前が見張った時点でお前も出待ちファンと同じだやめよう。
そんでもって推しのツイッターでのファンサタイムに『彼女の有無』をリプライで聞く。
いや聞いても事実を言うわけないだろう。いたとしたら言わない。結局本当なのかな?嘘なのかな?と不安になるようなことを聞いていく彼女の思考が全くトレースできない。
この辺で思ったのが、この思考回路をトレースできる女はいるのか、客観的な同情とかではなく、普通に感情移入をして、りさ子の視点にたつことが出来る人はどれくらいいるのか気になりました。第三者の視点で『いや、お前りさ子とおなじことしてるよ』というような人は存在していると思うけど、そんな人が見たときにこれを自分に当てはめることができるのか?
その位りさ子の感情はどこかボタンを掛け違ったまま話が進みます。たまにいるじゃん、まじで回りに諭されてるのにおかしなことを言ってる自覚のない人。そういう人がものすごくリアルにえがかれてる。鴎外パイセンでも思ったけどものすごい綿密にそういう人をえがいてるのすごいと思う。
そんな彼女のしょうもないリプライに普通に『いないよ、仕事が一番だよ』と答える翔太。
あ~~~~~~~~~~~~~これ悪気なくファン傷つけちゃうタイプの見ててひやひやするやつだ~~~~~~~~~~~~~~~
余談ですが、2.5にはまった際に、割と周りで2.5を経由した友人とかがいたので色々話をしてたときにそんなタイプの俳優がいるという話になったことがあります。接触イベとか多いけど、天然入ってて発言内に時々悪意はないけど『ん?』みたいな火種が混ざってるような感じの人がいることがあるよ、そう紹介された俳優のSNSをみて、なんとなく納得した。そのときの感情がよみがえりました。
ランダムにリプ返してるのにわざわざそれを拾うなよ翔太。架空の俳優の行く末を心配する私。
案の定信じ込んだ誰がどう見てもガチ恋(無自覚)女りさ子は元気にツイッターの垢を切り替えて鍵垢へ。そして愚痴垢ツイートを眺める眺める。
・・・これが長い冒頭の私の話に出てきた『調べた』ら出てきた深淵。愚痴垢のことにも無事触れられていました。やっぱ書かれるよね分かる。舞台俳優ファンに限らず、そういうことを愚痴をいうアカウントというのは二次元ヲタクの界隈にもままあります。俳優沼になると推す対象が生きてるから多分、二次元ヲタクよりもヘイトもためるんだろうなと思うのでそういうものが生まれるのもまぁ分かる。だけど茶の間な私が見ると落ち着こうよという気持ちと同時に流されそうな勢いすらあるから行き着いたときはそのまま蓋をしました。深みに入りすぎると自分にとってもマイナスに作用することもある。
まぁそんな愚痴垢たちや推しのツイッターを眺めながらも日常生活をこなす・・・そんなときにその愚痴垢の一部から漏れ出す『こいつ彼女匂わせじゃね?』疑惑。
若手俳優のカノバレ(疑惑)、現実でも『理性では仕方ないと思うけど、お金を積んで応援してた推しの脇の甘さが腹立つ』というキレるファンの気持ちもなんとなく解かる展開・・・。
どうみても狂気一直線なりさ子(無自覚ガチ恋)。暗転からの後半突入でサスペンスのような様相に切り替わる話に読む手が止まらなかったです。
前半はりさ子中心にもすすみますが、この話は後二人、翔太と同じ舞台に立つ俳優、秋山悠、翔太の彼女(匂わせ女)・・・の視点でも進行します。
私はこの本のメインは秋山悠の話でもあると感じました。彼の目線が一番精神安定上読みやすい・・・し、通しで見れば一番話の進行での不透明な部分を解説してくれる視点になります。腐媚を仕事と割り切れる計算高さ、嫌いじゃないよ。
ファンからの一方的な視点ではなく、上昇志向の強く計算高い俳優による皮肉交じりの視点、特殊な職業の男と付き合う自分を見せびらかせたい気持ちに負けてるくせに狡猾な女。所謂デジタルタトゥーの話もあり、『あれ?なんかこれ現実にもなかったか?』といわんばかりの描写が多く、鴎外パイセンのとき同様、生々しさにヒィイイイイといいながら読みすすめました。
俳優ヲタは勿論ジャニヲタ、もしかしたらバンギャが読んだりしても面白いかもしれないです。・・・って今考えるとジャニがSNSやってないのってある意味では正解なのかもしれないですね。アピール力もあるけど運用ヘタだとつぶされる可能性もあるからね。
長々感想書いてしまいましたが、そんな感じでした。
いやー面白かったなーって感想書く前にもう少しリサーチしてかくべ!と前回の反省を活かしてある程度周りを調べてから書き始めてたのですが、このりさ子のガチ恋♡俳優沼、舞台もやられてたみたいです。