前回
表題の通りです
今日はすごい珍しくわざわざツタヤにいって本を物色して一冊かって併設のタリーズで読んできました。なんてことない、夫と私のPCの調整の話でもめて家から出てけといわれたので腹を立てて出て行った先でクールダウンするべく滅多にしない読書を選んだって話なのですが。(ちなみに幼い頃から実母と喧嘩しても家を出て行く女だったのでそういうもんだと思ってください)
まぁ本を買って読むのは決めてたのですが、肝心の何の本を買うのか、というのをなにも決めずに店についたので大体のジャンルの本を右から左へ。少女マンガ少年漫画BとLみたいな漫画を眺め、ゲームの攻略本、画集を眺め、資料目的で建築の写真集見てみたり歴史書をみてみたり、むしろこれを気に仮想通貨とか勉強する?とビジネスコーナーにも行って本のなかをパラパラと見て『あ~~~~ん脳みそを右から左だ~~~~~』と戻したり、海外作家の小説コーナーを眺めてタイトルだけは効いたことある本を手にとってみたり、日本人作家のコーナー見てみたりダラダラダラダラと歩き回って、とうとう普段読まない普通の文庫本のコーナーへ足を伸ばしました。
最近は表紙だけ見たらすごい綺麗なイラストの表紙の普通の小説ってたくさんあるなーヲタク向けのラノベとはまたやっぱ違うんだよなーと見てて目に留まった一冊。
あんまりにもそのコーナーには向いてなさそうな?ちょっと浮いているタイトルに引かれて手に取りあらすじをぱーっと読んで出だしの部分もすこし読んで、それから今まで悩んでたのが嘘のように気持ちよくお会計に持って行ってタリーズでひらきました。
↑これになります。アフィとかじゃないので気軽に踏んで大丈夫です。
表紙はイラストなのでとりあえず目に留まったのですが、タイトルがちょっとこう、ネットスラング感があり、普段純文学?とか読まない私でもなんかこうものめずらしい感じがするなとか思って手に取りました。
短編というにはすこしだけ長いのかな?って話が3本入ってます。
まず私があらすじで目に留めたのは1本目の話、『✝夢小説十夜✝』という話。
主人公は普通の大学生。飽きっぽく、その時にハマってる作品の夢小説を書くことだけが唯一続いてる趣味という女の子。その子が文学関係のオフ会でツイッターでフォロワーが多い森鴎外なりきり系アカウント『鴎外パイセン』の中の人と出会う・・・という感じのあらすじ。
・・・まずこの突っ込みどころだらけのあらすじ。
一応夢小説について補足すると、既存の作品の二次創作小説ってカテゴリの小説になります。普通の二次創作の小説と違うところはオリジナルのキャラクターを登場させて既存のキャラクターとの恋愛模様を繰り広げたり、その作品の世界を旅させたり、はたまた原作にそって展開する話にオリジナルのキャラクターを介入させたりといった話になります。このオリジナルキャラクターには自分で好き勝手名前をつけることが出来るというのも特徴的な小説です。ヲタクの中では好き嫌いは分かれるところがありますが、私は割りと好きです。
そんな感じの話から始まるのですが、いざ読んでいくと驚くことに心当たりがある感情がジワジワと広がってくる展開が続きます。
残りの二作にも同じ感覚を覚えていくのが恐ろしい。読みながら、ページが全体から見ての半分を超えた頃にはある種のホラーのような感覚が私の全身を襲っていました。
この作品のいたるところに埋まっているヲタクにありがちなムーブ。それでいて創作まで手を出してしまった時のヲタクのソレ。
最初は自分の為に夢小説を書き、それが見える数字で伸び、あるところで伸びがとまりそれに歯がゆさを覚え読者のコメントやリクエストに答えれば伸びるのでは?と考え振り回されて嫌になって筆を止める。
この主人公の女の子、美里はまるで在りし日の自分のような行動をし、似た様な理由で悩んでいました。私は夢ではなかったのですが、携帯サイト全盛期に二次創作小説を書いてて同じようなことを悩んだりして結局緩やかにサイトを閉めたり、同人誌を出すようになっても自分のために描いたのに気がつけばどれくらい手にとってもらえたのかを気にし・・・・と心当たりアリアリで怖かった。
そしてそれでいてこの美里にはいっぽ違っていたら自分もこういう行動をしていたのかもというところがあります。
彼女の悩みである『普通』という話。
彼女は東京藝大の近所(ただし別にそこに通ってはいない)でそこの学生とシェアハウスで生活をしているのだけど、まずそこで彼女の、というかヲタクありがちな思考をしていることが示唆されていて興味深かった。
藝大の人たちだから周りの人たちは濃い、から負けないように自分もキャラ付けをしないといけない。そう思い込んで何も無いのに甚平を着て歩いていたけど、意外と着付けが面倒くさいうえ、後からシェアハウスに入ってきた別の女の子がただでさえキャラが濃いのにいいなーって思ったからと甚平を着始めてソレがとても似合っていて対抗できてないから昔買ったロリータ服を着る、という行動が描写されます。
この発想がもうヲタクのムーブ。別に濃い必要なんかないんだよ、濃いか薄いかなんか本来は気にする必要はない。ないのに関わらずに気になる。
漫画とかに触れて惹かれる作品のキャラクターって何かしら濃い特徴があることが多いと思います。地味目なキャラクターが好きって人もいるとはおもうけど実際にはその作品では地味という特徴になってますよね。
だからこの美里という女の子とは自然と自分も漫画のキャラクターみたいに濃くないといけないと思ってるんですよ。でもなんか気持ちわかる、若い頃はキャラクターつくりまで行かなくてもなんだかんだ自分のキャラクター性とか考えることくらいはしたことあります。
普通ということを気にするこの姿勢自体が普通ではないことに彼女は気がつかないというが盛大な皮肉にも見えました。
この話のオチにもなってくるのですが、オフ会で出会った鴎外パイセンと呼ばれるアルファツイッタラーの中の人と出会い、親密なやり取りをして優越感を得て、デートの後にホテルに入ったものの結局することしないで帰ることで鴎外パイセンに幻滅をするのですが、ソレに対して美里が出した答えもすごかった。大オチなので明言しませんが、まさにヲタクの思考回路丸出しなムーブに震えました。お前どこが普通なんだよ!!!!!!!!!!
※ちなみに美里は自分がヲタクとかの類とは考えている描写がないです。ただの漫画好きというスタンスで一貫して話が進みます。そこがまた闇が深い。
この短編集は基本的にそういった創作活動、執筆活動をしたことある人には刺さる、それでいてそんな人たちの何気ない出来事を描写していて、3つの短編全てがとても大きな成功を収めたわけではないけど、書き手と読み手の需要供給で成り立つ関係において書き手としてある程度は成功した・したことがある人たちのにとって読んでいてムズかゆくなる話が続きます。
ちなみに残りの二本・・・片方は新人賞でデビューしたけど二冊目が出せなかった男、岡村の話。もう一本は本のタイトルにもなっている鴎外パイセンの話です。
この三本はつながっていて、鴎外パイセンの話は美里視点と岡村の視点での話を見ていくとなかなか面白いです。というか美里の視点での鴎外パイセンは『アルファツイッタラー』というフィルターのすごさを見せ付けてくれます。
そしてこの作品には唯一3作品通して出ている成功者がいるのですが、その人物に関して1本も話が描かれていないところがまた良いと思いました。あくまで苦労の末に大成功を収めた!という話ではなくそれぞれの悩みに対して大きく成功が約束はされていないものの前向きに進むというところがとても良かったです。
・・・長くなってしまうので美里の話をメインで感想を書きましたが、残りの二本も個人的に刺さる部分が多すぎて、あんまりに刺さるからこういう界隈の女ヲタクが書いたのかと思ったら作者近影でおじさんと発覚して困惑しました。(※追記あり)
ちなみに8/30に発売したものらしいので書店で見たら是非手にとって見てください。
最初は『たまには本読むか』と適当にフラフラしてたと思えないくらい読んだ後満足しました。推敲してない文章なのでアレですが、気になったら手直しするかもしれないのでその辺はご容赦下さい。
9/12:追記お詫び
作者様がこの感想を読んで下さったらしく、ツイッターで反応を頂いたのですが、お顔確認したところ、全然若い方でした・・・。
大変失礼致しました!!
勘違いした自分が恥ずかしいです・・・。今後は気をつけます。