ヒトの脳は、本能的に脂質と糖質の組み合わせを好むようにできている可能性のあることが、米イェール大学の研究で示唆されました。
この研究では、脂質あるいは糖質のいずれかを多く含む食品よりも、ファストフードや加工食品などの両方を含んだ食品の方が、脳内の報酬系のシグナル伝達を増強することが明らかになったといいます。
これまでの研究で、食欲を司る脳領域に空腹感や満腹感を伝えるシグナルは、主に腸管から伝達されることが分かっていました。
一方、最近の研究では、脂質を摂取したときと糖質を摂取したときでは、異なるシグナル伝達経路が使われることも示されています。
こうした結果を踏まえ、研究グループは、脂質と糖質の両方を含む食品を摂取すると、カロリーは同じだが一方だけを含む食品を摂取するよりも、相乗作用によってシグナル伝達系への影響が強まる可能性があると考え、今回の研究を実施しました。
研究では、健康なボランティアを対象に
(1)キャンディーなどの糖質を多く含む食品
(2)ミートボールやチーズなどの脂質を多く含む食品
(3)クッキーやケーキなどの糖質と脂質の両方を多く含む食品
のいずれかの写真を見てもらい、MRIによる脳画像検査を実施しました。
なお、対象者には、オークションで競り落とせば自分が好きなものを食べることができると説明しています。
その結果、脂質+糖質を多く含む食品に対して最も高額な値が付けられました。また、脳画像検査の結果、脂質+糖質を多く含む食品の写真を見せられた際に、自分の好きな食べ物や、より甘い食品やより高カロリーな食品、量が多い食品の写真を見せられたときよりも、報酬系を司る脳領域の神経回路が活性化していた事がわかりました。
この結果について追記すべき点は
①脳内の報酬系は単純にカロリー量の増加に応じて活性化するわけではないこと
②脂質が多い食品のカロリーを推測できる人は多いが、糖質が多い食品のカロリーを推測できる人は少ないこと
よって、多くの人は、脂質と糖質の両方を含む食品から正確にカロリーを推測することは難しいと思われます。
研究グループは、「現代人が食べるほとんどの食品は脂質と糖質の両方を多く含んでいるが、こうした食品は母乳を除けば自然界には存在しない」と説明し、「現代的なこれらの食品が脳内の報酬系のシグナル伝達をより増強するのであれば、肥満や糖尿病が蔓延していることの説明がつく可能性がある」との見方を示しています。
この事実は、食べ過ぎに気づかずに、スナック菓子、クッキーやケーキをついついたくさん食べてしまう理由とつながると思われます。また、こういったものは母乳が起源になっていることも今後の研究にとって、重要かもしれませんね(*^。^*)!
参照論文要約:DiFeliceantonio AG, et al. Cell Metab. 2018 Jun 6.