今回はビットフィネックス(Bitfinex)が2019年5月8日付で、IEOにより独自トークンUNUS SED LEOを販売するとのことで、該当するホワイトペーパーをレビューしてみたいと思います!
IEOとはイニシャル・エクスチェンジ・オファリングの略で、取引所(今回はビットフィネックス取引所)によるトークン販売のこと。
翻訳するホワイトペーパーの原文が読みたい方はこちら。
目次
●概要
●ホワイトペーパー記載内容
●関連してツイッターで気になった発言
●感想
●概要
Bitfinexが10億ドルをLEOトークンと呼ばれる独自トークン(正式名称は”UNUS SED LEO”)の販売によって調達しようとするもの。LEOの供給量は10億枚を想定しており、1LEO=1 USDTで10億USDTの資金調達を目論んでいます。
●ホワイトペーパー記載内容
以下、ホワイトペーパーに記載されている内容で気になった箇所を箇条書きで、記載順通りに書いていこうと思います♬
・販売するLEOトークンは、iFinex Trading Platform(アイフィネックス・トレーディング・プラットフォーム)や商品、サービスへの利用を想定
・米国居住者は購入禁止(他にも購入不可国が挙げられてます)
・LEOトークンは投機的な要素、高いレベルのリスク、不確実性を含んでいる
・iFinex社はイギリス領ヴァージン諸島に籍を置き、Bitfinexの名前で仮想通貨取引行を営んでいる
・LEOトークンは、ユーティリティトークンとしてBitfinexやiFinex社の運営するトレーディングプラットフォームで利用される
・10億USDT分のトークン販売を予定
・iFinex社には様々なマーケット、プロダクトがあり、プロジェクトとしては「Bitfinex」「Ethfinex」「Nectar」「Bitfinex Derivatives(予定)」「eosfinex(予定)」「iFinex IEO Platform(予定)」「A Licensed & Regulated Security Token Exchange(資格を持つ証券トークン取引所、予定)」「Dazaar(予定)」「Betfinex(予定)」「Digital Assets on Lightning Network(予定)」「μFinex(予定)」を抱えている。
・iFinexは高い利益体質をもつ会社であり、非監査、いずれかの行政区におけるGAAP(一般に公正妥当と認められた会計原則)に対応していないながらも以下のような財務成績を持っています。
・Crypto Capitalとは2015年から関係を続けており、特にBitfinexは、米国のコルレス銀行によるサービス中断の直後に、Crypto Capitalとの関係を強化しました。
2018年にCrypto Capitalがカストディしていた(Bitfinexの)資金が政府から一部差し押さえされた際にはすぐに返還されると思われていたが、その年の末に返還が叶わないと懸念したため、担保付の極度貸付枠のための信用供与契約の交渉をはじめた。
現在BitFinexはこれらの資金の回収を促進するために世界中の様々な法域で積極的に取り組んでおり、BitFinexがこれらの資金を回収は確実なことではない。
(筆者注:「Bitfinexで出金できないユーザーが続出か、訴訟問題で出金依頼が殺到」という記事内で、Bitfinexは契約書なしにCrypto Capitalに対して8億5,000万ドルを譲渡していたとのことで訴訟問題が起きているとのこと)
・以下、LEOトークンに関する条件となります。
ー発行者:Unus Sed Leo Limited(Unus Sed Leo社)
ートークン:LEO、iFinexエコシステムで使われるユーティリティトークン
ー購入資格:トークン購入契約に同意した者
ー購入価格:1トークンあたり、1USDT
ー上場:LEO/USDT取引ペアをBitfinexで取り扱い予定
ー最大販売量:10億USDT相当のLEOトークン
ー調達資金の使途:運転資金、事業目的、資本的支出、営業費用、債務の返却やその他の資本増強活動
ー販売書面:トークン購入契約(Token Purchase Agreement)による
ートークン配布:最大10億トークンをプライベートセールで販売。
ーロックアップ:なし
ー利用価値:BitFinexやEthFinexでの手数料減額やディスカウント、その他サービス・商品の割引など
ー買戻し・バーン条項:iFinex(Ethfinexを除く)における連結総収入の最低27%分のLEOトークンを毎月市場から買戻し。
上記に追加して、Crypto Capitalから回収した資金の最低95%分のLEOトークンを、資金回収日から18か月以内に買戻し&バーン。
さらに、BitFinexのハッキングから回収した資金の最低80%分のLEOトークンを、資金回収日から18か月以内に買戻し&バーン。
ー税金:LEOトークンの購入見込み者は税理士などへ相談の上での購入を推奨
・初期のLEOトークン保有メリット:取引手数料割引(最大25%)、レンディング費用割引、仮想通貨/フィアットの入出金手数料割引、デリバティブテイカー手数料割引(最大2bps)、eosfinexでもLEOトークン保有と同様の扱い、将来リリースされるサービスや商品に割引適用予定
・本ホワイトペーパーを受け取った方はプライベートセールに参加するよう招待されています。プライベートセールは2019年5月11日までに実行されます。
以上がホワイトペーパーの一部翻訳となります。この部分翻訳(箇条書き)はLEOトークンのプライベートセールへの参加を推奨するものでは一切なく、単純にUSDTがBTCの価格へ大きな影響を与えているという現状などから、USDT建てで行われるトークンセールがUSDTの価値やBTCの価格へ影響を与えるのではないかという興味によるものです。
トークンセールへの参加はBitfinex社のホームページからホワイトペーパーを参照の上、トークン購入契約(Token Purchase Agreement)などをご参照の上、ご参加をお願いします。
●関連してツイッターで気になった発言
●感想
Bitfinexといえばステーブルコイン"USDT"の発行元であるTether(以下、テザー社)と近しい関係にある(参照:Wikipedia「テザー」)といわれており、今回のLEOトークンの販売もUSDTの回収を表立って行うのではないかという推測が出ていましたが、今回調べてみて「調達資金の使途」の項目において、債務の返却やその他の資本増強活動に充てる用途の記載があり、回収したUSDTをステーブルコインの担保に充てる可能性というのもあながち間違いではないのではないかと思いました。
通常ステーブルコインは、USDTであれば1ドル=1USDTの価値を担保するために、USDTというトークンを1単位発行する場合、1ドル分の裏付けとなる担保資産(ドル)を保有していることが想定されていますが、テザー社が発行するUSDTの裏付けとなるドルが100%ではない(参照:CryptoTimes記事「Tether・USDTの26%は裏付けなし 顧問弁護士が認める」)という情報も公になっており、今回のLEOトークンの発行も、これまで発行してきたUSDTを市場から回収し裏付け資産とする目的もあるのではないでしょうか。実際、Crypto Capitalへの不正譲渡の金額8.5億ドルと今回の調達資金10億ドルもどことなく整合する気がしています。
▼テザー社、Bitfinex、Crypto Capitalの資金の流れは下図の通り。
Crypto Capitalへの不正譲渡金やハッキング被害に遭った金額は回収され次第LEOトークンの買戻しに使われるという記載もあることから、LEOトークンの発行はBitfinexの被ってきた金銭的被害を穴埋めするという意図も垣間見え、財務体質改善に資するもののようです。
また、調べていて特に気になった点は取引所トークンとして取引所収益の27%を使ったLEOトークン買戻しの仕組み、投資商品としてLEOトークンを見た場合の時価総額の大きさ(10億LEO売り切ったら時価総額1100億円!BNBの時価総額は確認時点で3190億円ほどあり、上場してから買ってもあまり上値余地は大きくない気もします?)、ハッキングされた金銭および差し押さえられた金銭が回収され次第LEOトークンのバイバック&バーンに使われるという点などでしょうか。各種訴訟の動向も気になりますね。
以上、なるべくわかりやすく説明したつもりですが、LEOトークンの概要および3社の関係がつかめましたでしょうか。
(2019年5月22日追記分)5月20日に公募を無事終了し、USD、BTC、ETH、EOS、USDT建てでLEOの取引が開始済みとなっています。価格はIEO価格の1ドルを若干上回る水準での推移となっているようですね♬
最後までご覧いただきありがとうございます!
▼LEOトークンのプライベートセール概要(公式ブログ)
▼(追記分)無事10億ドルの資金調達に成功したようです!
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