今回は、仮想通貨としてのALISの国内取引所上場可能性について、特にプロジェクトの運営会社側に求められる条件を考察してみたいと思います。
国内取引所上場に関してはこれまで多くの記事が出ていますが、あくまで期待感を込めた推測の域を出ておらず、じゃあ具体的にどんなことが必要になってくるのかという面での指摘がされていない印象です。
これまで国内取引所上場に関しては、明確なルールはなく、これまで上場してきた通貨・トークンがいわゆるホワイトリスト(金融庁がホームページで仮想通貨交換業者登録一覧として公開しているページの中で取り扱う仮想通貨として一覧表示しているもの)として認識され、ホワイトリスト入りした通貨・トークンが国内取引所への上場を果たしてきました。
今回、新たに国内取引所(交換業者)の仮想通貨交換業のルール作りをする一般社団法人日本仮想通貨交換業協会が、2019年6月25日付で、広く一般に意見を公募する「パブリックコメントの募集について」というお知らせを出しており、その中であくまで素案ではあるものの、自主規制規則「新規仮想通貨の販売に関する規則(案)」及び「新規仮想通貨の販売に関する規則に関するガイドライン(案)」を公表していることから、発行者側に求められる条件がどんなものになるのかをある程度推測・想定することが可能になっている現状となります。
パブリックコメントの募集期間
2019年6月25日(火)〜2019年7月26日(金) 17:00 まで
なお、規則案やガイドライン案はあくまでICOやIEOを想定した内容となっていることから、必ずしもALISのように、すでに資金調達を行った通貨の発行者に求められる条件ではない旨予めご理解の上読み進めていただけますようお願いします。
では、以下では自主規制規則「新規仮想通貨の販売に関する規則(案)」及び「新規仮想通貨の販売に関する規則に関するガイドライン(案)」を見ながら、ALIS運営にどんな内容が求められるのか、推測してみたいと思います。
本規則は、会員が行う新規仮想通貨の販売業務について、必要な事項を定める。
(定義)
第2条 この規則に使用する用語の定義は、次の各号のとおりとする。
(1) 発行 仮想通貨を新たに生成した上で、利用者に対して当該仮想通貨を交付し、利用できる状態に置く行為をいう。
(2) 発行者 仮想通貨を発行する者をいう。
(3) 新規仮想通貨 発行者が発行する仮想通貨をいう。
(4) 新規仮想通貨の販売 新規仮想通貨を売却又は新規仮想通貨と他の仮想通貨を交換する行為のうち、当該行為によってはじめて発行者(受託販売業務による場合には、発行者及び会員) 以外の第三者が当該仮想通貨を取得するものをいい、新規仮想通貨を受け取る権利を売却し又は他の仮想通貨と交換する行為を含む。
(6) 受託販売業務 会員が発行者の依頼に基づき新規仮想通貨の販売を行う業務をいう。
(17)購入者 新規仮想通貨の販売に際して、当該新規仮想通貨を取得する者をいう。
(18)優待プログラム 会員があらかじめ設定した条件を成就した第三者に対して、発行者がその報酬と して、新規仮想通貨の無償付与その他新規仮想通貨の有利な条件による販売を行 うプログラムをいう。
(解説)➡冒頭申し上げた通り、ICO、IEOのルールについて記載された規則ですので、新規仮想通貨の販売についての用語の定義が2条では規定されています。
なので、新規仮想通貨の販売という定義についてですが、定義によると「はじめて発行者(ALIS)以外の第三者が当該仮想通貨を取得」とありますが、ALISの場合、すでに海外取引所で取得が可能となるため、この定義に該当はしないと思われます。ただ、理解をよりわかりやすくするため、用語の定義として、発行者:ALIS運営、会員:仮想通貨交換業者=国内取引所のこととして以下では条文を見ていければと思います。
なお、第2条第18号にある優待プログラムに関して、新規仮想通貨の販売に関する規則に関するガイドライン(案)では具体的な例として、「あらかじめ紹介者に対して新規仮想通貨の販売に関するウ ェブサイト等のリンク等を付与した上で、当該リンク等を介して第三者が一定数の新規仮想通貨を購入した場合には、その紹介者に対して、新規仮想通貨を無償で付与する等の報酬を与えるプログラム(リフェラルプログラム)等」として具体例が挙げられており、いわゆるアフィリエイトによる報酬などが該当します。
第4条~第8条(第2章)では「必要な体制」として、自己販売=交換業者みずからがトークンを発行(例えば、取引所トークン)する場合の規則などが並びます。
第9条~第16条(第3章)ではいよいよ受託販売=発行者の依頼に基づき新規仮想通貨の販売を行う業務、についての規則が出てきます。第15条では、会員(交換業者)に求められる条件ともに、発行者に求められる条件にもなりますので、発行者が関係してくる第15条第1項について以下で引用してみたいと思います。
(受託販売審査等)
第15条 会員は、受託販売業務を行うに当たっては、対象事業の実現可能性等、発行者による適時かつ適切な情報の提供及び公表の可否その他新規仮想通貨の販売が適正かつ確実に行われることを確認するために、発行者及び対象事業に係る次の各号に掲げる受託販売審査の項目(以下「受託販売審査項目」という。)について厳正に審査しなければならない。
(1)対象事業の実現可能性等
(2)第5条第1項から第4項に定める情報を適時かつ適切に提供及び公表する ために必要な態勢の有無
(3)第6条第1項から第6項に定める調達資金の管理を適正かつ確実に実施す るために必要な態勢の有無
(4)期末日において発行者が保有する調達資金及び新規仮想通貨を財務諸表に 適切に開示するために必要な態勢の有無
(5)新規仮想通貨の販売に係る不適切な勧誘及び広告等を防止するために必要 な態勢の有無
(6)新規仮想通貨に係る仮想通貨関係情報(仮想通貨関係情報の管理態勢の整備 に関する規則第 2 条第 1 号に定める仮想通貨関係情報をいう。)を利用した 不適正な取引を防止するために必要な態勢の有無
(解説)➡会員である交換業者は、発行者の事業の実現可能性等を審査します。
第15条第2号では「第5条第1項から第4項に定める情報を適時かつ適切に提供及び公表」とありますが、具体的には発行者の情報、新規仮想通貨の情報、調達資金の情報、対象事業の情報などがそれにあたります。
また、第15条第3号では「第6条第1項から第6項に定める調達資金の管理」とありますが、こちらも具体的には金銭と仮想通貨の分別管理、資金使途の管理、秘密鍵のオフラインでの管理、秘密鍵について社内規定等に定める権限者以外の者からの隔離保管、調達資金である仮想通貨の全部又は一部を外部アドレスに払い出す場合には複数の対象秘密鍵を用いた電子署名を要求するなど役職員による不正流用を防止するための必要な措置などが求められます。
特にALISに当てはめてみた場合、「第5条第1項から第4項に定める情報を適時かつ適切に提供及び公表」、「第6条第1項から第6項に定める調達資金の管理」、期末日において発行者が保有する調達資金及び新規仮想通貨を財務諸表に 適切に開示するために必要な態勢など、多くの情報提供とともに、コーポレート・ガバナンスに関する情報開示が必要となってくることから、これまでに行ってきた資金調達やトークン流通に関する情報の整理とともに、一層の社内体制の整備が必要になってくるという理解になります。
以上のような情報をもとに、厳正な審査が交換業者(国内取引所)により行われた結果、最終的にALISが国内取引所に上場を果たせるという印象でしょうか。新規仮想通貨の販売(ICO)という、既存の仮想通貨の売買・交換より高い条件が求められる水準の準備をしておけば国内取引所上場もスムーズに進むのではないでしょうか。
全体として規則案を見てきた感じでは、あくまで交換業者向けの規則であり、交換業者に求められる条件のほうががかなり多いですね。
ALIS運営サイドとしてもいつでもこのような情報を整理して提出可能な状態にしておくことが最速での国内上場につながるのではないでしょうか。
頑張って国内上場を果たしてほしいですね!!