30/06/2016
今回は、今まで劇場ディレクター・フェスティバルディレクター・劇評家から受けた質問や、普段いろんな方から個別に受ける質問をまとめて、その中からいくつかご紹介したいと思います。
「創作のBrain(脳)」が今何を考えているのか、10個の質問に答えるYuuyaの言葉から感じていただけるのではないでしょうか…前置きは簡単に、早速始めましょう。
Q. なぜTENTなの?
TENTは今回の物語でとても重要な役割をします。それは肉体や精神のメタファーでもあり、同時に物理的な演劇的アプローチでもあります。
TENTは、山の中で道に迷った男が出入りする場所であり、唯一彼を守ってくれる空間です。観客は中を覗くことはできませんが、声は聞こえてくるのです。それが今回の「TENT」という作品の重要な効果になります。
同時に、海外カンパニーである私たちはどうしても舞台美術などに制限が出てきてしまいます。しかし元々演劇とは不自由な表現方法であり、その不自由さから様々なアイディアや匠の技が生まれてきました。
今回使用する「簡易TENT」も容易に持ち運び可能であり、世界中どんな場所でも上演を可能にする画期的な「舞台美術」です。
Q. TENTでは、どんな人物が登場するの?
今回の作品TENTには二人の男が出てきます。ですが、どちらがメインという発想はありません。
彼らは、ごくごく普通の現代に生きる日本人です。特別な発想や経験をしているわけではありません。ですが、とても重大な「闇」を抱えており、人に言えないある「想い」と戦っています。
それは、日本人の約15人に1人の割合で存在し、世界中に3億5000万人以上の人が同様の苦しみを抱えていると言われています。
この物語TENTや、その登場人物は決して遠い国のことではなく、全世界で共通する「あなたのすぐ隣」の出来事なのです。
Q. TENTに実体験が反映されているの?
私たちMY COMPLEXが作る物語はフィクションですが、実体験や経験を基に作品を作っています。
作品のビジュアルで地面に倒れているのは、どういう意味があるの?物語に関係してる?
今回のイメージは地面に倒れているようにも見えます。しかし見方を変えれば、空から落ちてきている最中のようにも見えると思います。
また、複雑な砂の模様は「人間の脳」のようにも見えます。今回の物語と直接的なリンクはしていませんが、登場人物が置かれた状況をビジュアルにした時に今回のイメージになりました。
Q. どうしてエディンバラで初演なの?日本で上演しようと思ったことはある?
Edinburgh fringeは私たちにとって大変重要な場所です。
世界中から多くの実験的で意欲的な作品と観客が集まるEdinburghは、私たちMY COMPLEXの作品を初演するのにふさわしい場所だと思っています。
同時にEdinburghでの手応えと実績を元に、世界中で作品を上演する準備が私たちにはあります。そこが日本でも同じです。
私たちは演劇はもっとグローバルであるべきだと思いますし、一つの国や国境に固執するものではないと考えています。
Q. 物語(台本)はどうやって書き始めるの?
演劇に限らず、様々な作品や音、色などから発想をもらいますが、具体的に描き始めるタイミングは「肌ざわり」です。
頭の中に溜め込んだインスピレーションが、不意にザラザラとした感覚に変わった時が作品を書き始めるタイミングです。
Q. 物語(台本)を書いている時に、英語に翻訳されることを意識してる?
全く意識していないといえば嘘になりますが、スムーズに書けている時は「台本を書いている」わけではなく、頭の中の登場人物が話したことを「書き写している」だけなので特に意識はしていません。
登場人物が英語で話せば、台本も英語で書く時もあります。でも、話さなくなった時は・・・頭で考えて書くので翻訳されることを意識しちゃいます。
Q. 物語(台本)を書いていて一番大変なことは何?
疲労困憊することです。例えばベタなお笑いを書いている時は、くだらないことばかり考えていますが、今回のように重いテーマの時は登場人物と同じような精神状態でいるので、書いている時はシンドイです。
登場人物が殺人を犯したなら、それと近い状態でいないといけないので・・・。
Q. 2014年の初挑戦から、書き方に変化はある?
基本的には変わらないと思いますが、3回目ということもあり、現地の様子や雰囲気がわかっているので書きやすくはなっています。
ただ、日本だけで上演するものを書いていた時とは明らかな変化があります。日本人だけの内輪ウケみたいなことは書けませんし、当然世界中の人が観ることを前提に書いています。
Q. エディンバラフリンジで何を成し遂げたい?
作品を上演するからには何かしらの足跡は残したいと思います。それは当然、評価であったり観客の動員であったりもします。
しかし、一番大切なことは、常に意識をしている「ボーダーを取り払う」ということです。
演劇大国イギリスでは「アジア人がつくる演劇ね…」と観てくる人も当然いますし、作り手側も「自分たちの文化やアイデンティティを前面に…」などと思いがちです。
それらはもちろん大切ですし、切っても切り離せないことではありますが、私たちMY COMPLEXが創る物語は、そう言った文化や人種を超えた普遍的な感情を訴えられる作品として受け入れられることが最大の目標です。
同じ内容を英語でインタビュー形式で録音しようとしたのですが、皆さんに理解していただくにはまだもう少し時間がかかりそうなので…
今日は、これから私たちのもう一つの創作活動・英語と演劇のワークショップ「ぷれいご」2期最終回です。
ここでは、イギリス現代演劇に挑戦中。
全く違う作品に触れることで、「TENT」に新しい風が吹き込むのでは。残り37日。