2017年の夏あたりから急激に高騰し、一時は1BTC=200万円以上を更新したビットコイン。5月の時点で暴落し、メディアでは「バブル」だと騒がれていました。
その当時の値段は20万円ほどでありましたが、結局年末にはあれよあれよと言う間に200万まで上がりました。
しかし、事件が起こります。
1月26日の「コインチェック騒動」です。大手取引所から580億円もの仮想通貨「NEM」が流出したというこの事件は、ビットコインを含む仮想通貨全体に痛烈な一撃を加えました。
一時期70万円までは落ち込み、SNSでもあまり仮想通貨の話題はされなくなりました。
さて、仮想通貨に湧く日本ですが、これはバブルなのでしょうか?
それを解説していきたいと思います。

そもそもバブルとはなんでしょうか?
バブルとは、経済や物の価値が「実力以上」に泡(バブル)のようにふくらんだ状態を言います。
シャボン玉の液は少しなのに、ふくらませば、実体からかけ離れて何十倍もの大きさに見えてしまうことからきた言葉です。
日本では、1980年代から「土地神話(土地の値段は永久に上がり続けるもの)」が蔓延しバブルに湧きました。しかし、実力以上に値上がりした土地は突然その適正価値にみんなが気づきます。
それがバブルの崩壊です。
バブル崩壊の後遺症はとても大きく、また回復まで長くかかったことから、のちに「失われた20年」とよばれるようになりました。
その昔、オランダでチューリップが高騰し他のも有名な話です。
このように、バブルとは物の価値が「実力以上」に膨らんでしまう現象を言います。

なぜ、物の価値は「実力以上」に膨らんでしまうのでしょうか。
物の値段は、需要と供給で決まります。古典派経済学で有名なアダム・スミスの「神の見えざる手」です。
普通は需要と供給のバランスで適正価格が自然と決まるのです。
しかし、新たな価値が発見されたり、人気が出たりと、欲しいと思う人が突然増えるとどうなるでしょうか?
価値が上がっていきますよね。
そしていつしか、買った時より売れば値上がることに気がつきます。
そうしてだんだんと、そのもの自体の価値が「欲しいから」ではなく「売れるから」買うという状況になります。
そうなると、「本来の価値」ではなく儲けるために買われ、「実力以上」の価値まで値上がります。
さて、そのもの自体の価値が「欲しいから」ではなく「売れるから」という動機で人々が参入し始めると「実力以上」の価値になり、バブルになると説明しましたが、
仮想通貨はどうでしょうか?
今の仮想通貨は、投資よりも投機目的が多いとされ、「売れるから」という動機で人々が参入していると言えるでしょう。
また、インターネットや投資家もそれを煽っています。
では、「実力以上」の価値なのでしょうか?
仮想通貨と過去のバブルの大きな違いは「ブロックチェーン」という新技術にあります。
この新技術がイノベーションを起こすほどの価値があるとされ、注目されているのが高騰の背景にあります。
しかし、ブロックチェーン技術はいまだその技術的な素晴らしさを、具体的インパクトをもって証明できずにいるため、世の人は本当に価値があるのか懐疑的です。
仮想通貨の時価総額は妥当なのか?
そもそも仮想通貨の適正価値とはどう判断するのでしょう。
ここでは仮にブロックチェーンが、インターネット並のインパクトを残しうる次世代の技術だと仮定します。
仮想通貨はお金の一種なので、世の中のお金の何パーセントくらいなら仮想通貨が占めても現実的だと思えるかで考えましょう。
仮想通貨全体の時価総額は約16兆円です。
全世界の金融資産は2京円あります。
仮に1%とすれば200兆円。
そのように実際のお金の価値と比較してみると…
本当に「ブロックチェーン技術は素晴らしく、世の中の通貨に取って代わる」のならば、現状の価値ではまだまだとも言えるかもしれません。
インターネットの普及を例に見てみる
ブロックチェーンの将来を考えるために、インターネットの歴史を振り返って未来予想をしてみましょう。
インターネットの普及までには3つのフェーズがあると言われています。
第1フェーズ
• 大学・軍事施設など技術に精通している人によって技術的な議論だけが重ねられる
• 情報を瞬間的にどこにでも送れる技術を社会にどう応用するか、有益な議論が行われる
第2フェーズ
• インターネットの一般開放
• AOLやダイヤルアップの時代
この段階では多くの人の期待が技術水準を上回り、バブルとなった結果バランスが崩れてしまいました。
第3フェーズ
• より合理的な企業の参入
• 情報、お金、生活の管理方法に革命が起こる
このフェーズではフェイスブック、アマゾン、eBay、アリババなどの企業の協調の成果で社会を変えて行くことに成功します。
仮想通貨やブロックチェーン技術の研究開発を行っているInput Output HKのCEO Charles Hoslinsonはこう語ります。
暗号通貨はこの3フェーズのうち、フェーズ1からフェーズ2に移ったばかりだ。
期待と興奮が入まじり、資金も流入しているが、期待値と現実的な技術が乖離している。これがもう少し続けば、バブルが崩壊する。
しかしバブルが崩壊して初めて技術が本当のものになる。
この理想と現実の誤差の修正によって、現実的な方法やそのための企業が生まれてくる。結果として、フェイスブックがSNSを作ったように、新しい社会基盤が生まれる。

さて、仮想通貨は適正価格かどうか?で論点になってくるのは
「ブロックチェーンは次世代の技術になりうるか?」でしょう。
そこにはたくさんの議論があり、語られています。
ブロックチェーンの真髄は「非中央集権的に行える信用担保」であり、「中央集権」によって「信用」をお金に変えることで成り立っているビジネスの価格破壊です。
保険や、証券などリプレイスの対象は様々です。
草コインと呼ばれ、多くのコインが様々な目的で作られています。
その中には、風呂敷だけ広げ、ほとんど開発の進んでない詐欺まがいなものもあるが、賢い人たちが真面目に開発しているものもあります。
しかし、ブロックチェーンが描く理想に対してまだまだ、「スケーラビリティ問題」など解決しなければいけない課題が多いのも事実です。
指標の1つにアメリカの調査会社ガートナーが毎年公開している「ハイプ・サイクル」があります。
「ハイプ・サイクル」は、新技術の可能性は誇大に宣伝されていることが多くそのテクノロジーの真の可能性を見極めるために、その技術の成熟度等をグラフにして示したものです。
これによれば、まだ幻滅期を迎えていないようです。
• バブルとは、物の価値が「実力以上」に膨らんでしまう現象
• 仮想通貨の実力はないともいえず、ブロックチェーン技術による
• ブロックチェーンは、インターネットでいう第3フェーズ
仮想通貨がバブルかどうかは、ブロックチェーン技術が本物かどうかによるところが大きく、一概に「バブルである」とは言い切れません。
しかし、そのブロックチェーン技術はインターネット並みのイノベーションと期待されているのも事実。そして課題がまだ残されているのも事実です。