ゲームマーケット2020秋に行って参りました。
そこで買ったゲームの1つをレビューしてみます。
ボードゲームのレビューというのは初めてなので、お見苦しい点多々あるかと思いますがご容赦を。
なんて?って感じだと思うので解説。
即身仏という言葉を聞いたことがある方もいると思います。
乱暴な言い方をすると、究極の荒行の果て、仏教式のミイラです。
日本の一部地方に見られる民間信仰において、僧は死なず、生死の境を超え弥勒菩薩出世の時まで、衆生救済を目的として永遠の瞑想に入る(入定:にゅうじょう)と考えられている。僧が入定した後、その肉体は現身のまま即ち仏になるため、即身仏と呼ばれる。
(Wikipediaより)
木の皮や木の実を食べることによって命をつなぎ、経典を読んだり瞑想をする。まず最も腐敗の原因となる脂肪が燃焼され、次に筋肉が糖として消費され、皮下脂肪が落ちていき水分も少なくなる。生きている間にミイラの状態に体を近づける。生きたまま箱に入りそれを土中に埋めさせ読経をしながら入定した例もあった。この場合、節をぬいた竹で箱と地上を繋ぎ、空気の確保と最低限の通信(行者は読経をしながら鈴を鳴らす。鈴が鳴らなくなった時が入定のときである)を行えるようにした。行者は土中に入る前に、漆の防腐作用[注 1]に期待しまたは嘔吐することによって体の水分を少なくする目的で、漆の茶を飲むこともあった。
(Wikipediaより)
詳しいことを知りたい方は是非調べてみてください。
私は1度、友人と一緒に即身仏を実際に見に行ったことがあります。このゲームを購入するちょうど3年前のことです。
凄まじい修行の果ての、僧の遺体。自身の何もかもを捨て、衆生を救うために究極の荒行に挑み、そして見事に成功した人物が目の前にいるのかと考えると、本当に何とも言えない気持ちになりました。
行った時の記録はこちら↓(著者自身は私ではなく、記事内に出てくる「友人」が私です。)(100円払えば読めます。)
ちなみにこの友人はこの友人でいろいろとおもしろいことをやっているので、是非他の記事も見てみて欲しいです。
というわけで、プレイヤーは敬虔な僧侶になり、修行の果てに即身仏になることを目指します。
だいぶ狂ったゲームですね。
タイトルだけ見て「狂ってんなー!!気になる!!」となり、
パッケージを見て「狂ってんなー!!欲しい!!」となり、
お値段を聞いて「お、けっこうお手頃、買お」となりました。
細かい部分は省きます。詳細はルールブックをご参照ください。
ゲーム終了後に菩薩点(いわゆる勝利点)を計算し、獲得菩薩点がもっとも多いプレイヤーが、もっともよい即身仏になれたということで見事勝利します。
ゲーム終了条件は後述。菩薩点の獲得についても後述。
各プレイヤーは自分の手番で ①ドロー ②手札処理 の2つを行います。
①ドロー
山札もしくは2つの捨札置場から、合計2枚のカードを手札に加えます。
このとき2枚を引く場所の組み合わせは自由で、山札から2枚でも捨札置場から1枚ずつでもなんでもOK。
②手札処理
以下3つのうち、いずれかをしなくてはなりません。
手番終了時に手札が8枚以上ある場合、7枚以下になるまで以下3つのいずれかを複数回行います。
1.カード2枚組を捨てる
手札にある同じカードを2枚セットで捨札置場に捨てることができます。
特定のカード2枚の組み合わせでも、同様に捨てることができます。その組み合わせはルールブックご参照。
2.任意のカード1枚を任意のプレイヤーに渡す
任意のカード1枚を、任意のプレイヤーに渡すことができます。効果的に使えば相当な嫌がらせになりますが、考えなしに使うと相手を手助けすることにもなります。
考えなしだと手助けになるのは1.も同じですが。
3.スキップ
何もせず手番を終えます。
ゲーム終了条件を満たすまで、手番が回ってくる度に上記の①②を繰り返していくことになります。
まずは五穀集めフェイズで、五穀を手札に揃えるのを目的としてゲームを進めます。
ストーリー的には、最後の晩餐の食材集めといったところ。
捨札置場に捨てられた五穀を拾ったり、自分の運を信じて山札から引いたりして、五穀カード(米、麦、粟、黍、大豆)を集めます。
手札は8枚以上にすることができないので、終盤に必要なカードをキープし続けることは難しいです。
五穀カード5種が手札に揃ったプレイヤーは、手番終了時に手札を公開して、五穀カードが揃っていることを全員で確認し、次のフェイズへ進みます。
このとき、1番早く次のフェイズへ進んだプレイヤーはその場でボーナス菩薩点がもらえます。
集めた五穀を手札から無くすことを目的にゲームを進行します。
ストーリー的には最後の晩餐を済ませる、といった感じでしょうか。
手番の中で、五穀カードを2枚揃えて捨てたり、斎食(食事をするカード)とセットで五穀を捨てたりなどして、手札から五穀カードを捨てきります。
手番の最初にカードを2枚引かなくてはならないので、「捨札置場の1番上が五穀だから山札から2枚引いたらどっちも五穀だった」みたいなことにもなります。
また、このフェイズでのみ、斎食+漆茶のセットで手札を処理した場合、漆茶を自分の前に裏向きで置いておきます。
ゲーム終了時にこの漆茶の枚数がもっとも多いプレイヤーはボーナス菩薩点がもらえます。
五穀カードを捨て切ったプレイヤーは、手番終了時に手札を公開して、五穀カードが1枚もないことを全員で確認し、次のフェイズへ進みます。
このとき、1番早く次のフェイズへ進んだプレイヤーはその場でボーナス菩薩点がもらえます。
手札を0にする、もしくは手札を鐘4枚のみにすることを目的にゲームを進行します。
最後の晩餐も済ませ、いよいよ石室に入って土の中へ。土の中では竹筒を通して呼吸しつつ、鐘を鳴らしながら読経を続けます。
鐘の音が聞こえなくなったら、無事に入定。その後、上手に腐敗処理してミイラ化できれば、見事に即身仏になれます。
このフェイズではルールが少し変わります。
まずドロー枚数が1枚となります。
さらに、他のプレイヤーに渡せるカードは鐘のみとなります。なぜなら自分は土の中に入っており、他の僧へ伝えることができるのは鐘の音だけだからです。
さらにさらに、入定というカードは1枚で処理することができ、五穀断ちフェイズでの漆茶のように、自分の前に置いておきます。こちらもゲーム終了時に入定の枚数がもっとも多いプレイヤーはボーナス菩薩点がもらえます。
カードを1枚引き、いままでと同様2枚セットでカードを捨てることで、うまく手札枚数を減らしていきましょう。
手札を捨て切ったプレイヤーは見事即身仏になります。
誰か1人でも即身仏になった時点でゲーム終了です。
即身仏になったプレイヤーは菩薩点を獲得します。
ゲーム終了条件はもう1つあります。
それは、手札を鐘4枚だけにすること。こちらも同じく、誰か1人でも条件を満たせばゲーム終了です。
手札を鐘4枚のみにしたプレイヤーは菩薩点を獲得します。
誰か1人が入定した(即身仏になった)らゲーム終了。以下の菩薩点をカウントします。
・もっとも早く第2フェイズへ進んだプレイヤー:1菩薩点
・もっとも早く第3フェイズへ進んだプレイヤー:1菩薩点
・カードをすべて捨てきったプレイヤー:4菩薩点
・手札を鐘4枚のみにしたプレイヤー:3菩薩点
・漆茶の枚数がもっとも多いプレイヤー:3菩薩点
・入定の枚数がもっとも多いプレイヤー:3菩薩点
これらをカウントし、菩薩点をもっとも多く獲得したプレイヤーが、もっともよい即身仏になったということで見事勝利です。
漆茶を飲むことで体内から防腐し、よりよい状態でミイラ化できるとボーナス菩薩点。
深い深い瞑想を続け、よりよい精神で入定できるとボーナス菩薩点。
見てわかる通り、実は最速で入定しなくても勝利できる可能性はあるため、勝ったけど即身仏になってなくね?という点はご愛敬。
ゲーム終了後にも修業は続き、最終的には全員無事に即身仏にはなったのだと脳内保管しておきましょう。
ともすればいずこからか抗議が来かねないのでは…と心配になってしまう題材でゲームを作ってしまっている点がヤバい。個人的にはめちゃめちゃ好きですが。
自身で1度本物の即身仏を見たことがあるという経験もあり、ついつい惹かれて購入してしまいました。
題材とパッケージはちょっとオカルト・ホラーテイストが入っており、苦手な方は敬遠してしまうかも知れません。しかし…。
しかし、ここまでご覧になった方はおわかりの通り、ゲーム内容自体にオカルトやホラーといった要素はほとんどありません。そういったものが苦手な方でも、パッケージさえ見なければ安心してプレイできます。
むしろ、手札を増やしたり揃えたり減らしたりと、1つのゲーム内でフェイズごとに異なる目的を果たすために手を尽くすのは、個人的にはかなりまっとうなボードゲームという印象でした。
ここまで触れていませんでしたが、このゲームでは各プレイヤーごとにフェイズが食い違ってきます。
プレイヤーAは一足先に土中に入ったけど、プレイヤーB,Cは五穀断ちフェイズ、プレイヤーDはまだ五穀集めフェイズ、といったことが起きがちです。
そこでどういったプレイングをするかというと、五穀を手札から捨てたくて、しかもプレイヤーAの邪魔をしたいB,Cは、手札の五穀をプレイヤーAへ渡したりします。
地上の僧が、石室に入って土中で読経し続ける苦行中の僧に対し、空気穴のはずの竹筒を使って五穀をサラサラーと入れてる様子を想像するとおかしくて仕方なかったです。B,C最低。いやプレイングとしては合ってるんだけど。
他にも、土中で読経する僧の横でひたすら米食ってたり、麦送りあったり、やっぱり土中に大豆流し込んだり。
本当に君たち苦行中の苦行を全うする気ある??と言いたくなることを大真面目にやることになります。マジバカ。
普通にやるとフェイズに差がついてきますが、上述の通り、後から追う側は先行しているプレイヤーに嫌がらせをして遅延させることが可能です。
一方で土中に入ると嫌がらせプレイは難しくなるため、序盤の差が一向に詰まらないままゲームが終わる、という流れにはなりにくいかと思います。後から追うプレイヤーたちは満場一致で先行プレイヤーを邪魔したいはずですからね。
また、そういった状況の中であえて即身仏になることは目指さず、漆茶・入定でボーナス菩薩点による勝利を狙うなどのムーブも大いにアリです。
一見やべー題材に反して、最速入定以外にも勝ち筋が用意されているなど、なかなかどうしてまっとうなボードゲームだと感じました。
まだ1度しかプレイできていませんが、僭越ながら気付いたポイントを。
読経はもっとも基礎となる修行の1つ。ということでこのカードは、他のすべてのカードとセットで捨札にすることができる強力なカード。
水は手札入替ができる追加ドローカード。自分の手番中ならいつでも使うことができ、手札から水を1枚捨てることで、カードを1枚引くことができます。
これらを組み合わせると、「読経+何かのセットで捨て、すぐに水を捨てて読経を回収」という強力なムーブができます。手札枚数的には何かと水の2枚減になります。
このコンボのために読経と水をキープしておくべきか、まではまだわかりませんが、どちらも手札に揃っていれば是非使いたいコンボだと思います。
可能であれば他のプレイヤーが何を捨て、何を手札に持っているかを観察しておきましょう。
そして自分の次の手番のプレイヤーが欲しがっているカードが捨札置場の1番上にあるなら、そのカードを潰すように捨てたり、たったいま2枚揃えて捨てたカードを1枚渡してみたり、といった攻撃はかなり有効です。
よく考えるとめちゃめちゃ嫌な僧侶ですね。でも仕方ない。
個人的には、題材がかなり刺さった上にお値段も2,000円とお手頃、プレイしてみてもかなりまっとうなボードゲームといった感じで、これは買ってよかったと思えるゲームでした。
ただ、やはり題材が尖っているので、プレイする人は選ぶかなというのは否めません。
あとパッケージが見える向きで棚に置いておきたくはないです。
ちょっとした教養と宗教への理解を持ち、それらを遊び心で調理できる方には非常にオススメです。
ぜひ即身仏になりましょう。そしてぜひ本物の即身仏を見に行ってみましょう。