乗鞍は山スキーで何度か登っているが、チャリは初めて。終点畳平は標高2700mで自転車で登れる国内最高点である。ヒルクライムの聖地で、先月もレースが行われたようだ。レースは長野県側から登るエコーラインで行われるが、今回登ったのは岐阜県側から登るスカイライン。
9/7土
7:30 1300m安房トンネル駐車場
8:25 1680m平湯峠ゲート
8:55 1970m夫婦松展望所
10:50 2700m畳平
11:35 肩の小屋
12:30 3025m剣ヶ峰
13:35 畳平
14:05 平湯大滝
チャリ距離 40km
安房トンネル料金所前の駐車場に車を止める。ここは立派なトイレもあり準備に最適だ。平湯キャンプ場を過ぎて左に曲がりスカイラインへと向かう。スタート直後の体が温まる前からいきなりの上り坂で苦しかった。
1時間ほどで平湯峠。ゲート手前には駐車場があって何人もここでチャリを組み立てていた。ゲートでおじさんがチャリダーに何か説明を受けているようで待つよう言われる。説明が終わると私に、「あんたは初めてでないね?」と聞かれたので、「えぇ、2〜3回」と適当に答えたら説明を省略してすぐに通してくれた。
夫婦松展望所から少し進むと、焼岳と穂高の展望台。最高の天気に最高の眺めで元気をもらう。
路傍にはサラシナショウマやコウメバチソウなどが現れて足を止めながら行く。もう半分は過ぎただろうか。上り一辺倒でだいぶ疲れてきた。
ヘアピンカーブがなくなって、猫岳に向かって真っ直ぐに道が延びていくようになった。カーブのない真っ直ぐな上りはかなりしんどくペダルを回す速度が遅くなる。錯覚かもしれないが、真っ直ぐだと傾斜がきつく感じる。
山の上部は寒いのではないかと長袖を羽織ってきたが日が照って汗がしたたり落ちた。前方を行くクロスバイクの2人組は私と似たようなペースだが、後方からドロップハンドルのチャリダーが、コンチハ〜と爽やかに追い抜いていった。
さぁ、素晴らしい高原帯に出た。ここまで来たらゴールは近い。
気持ちのいい道、止まって写真を撮っても良い。たくさんあるピークの名前は何だろうと地図で確認しても良い。押し歩きしてゆっくり行っても良い。立派な舗装路だがたまにバスが通るのみでとても静かだ。
そうやってゆっくり走ってようやくゴール。3時間以上かかった。レースのトップ選手は1時間足らずで漕ぎあげるそうだ。
さぁ、ここまで来たら山頂へ登らなくてどうする。ウエストポーチにボトルを一本入れて剣ヶ峰を目指した。
肩の小屋まで平坦な道を歩いて行って、ここから本格的な登りとなるとお尻の付け根から太ももの裏側が辛くて、なんだか足が上がらない、、、。う〜ん、初めての乗鞍ヒルクライム、ずいぶん足に負担がかかっていたようだ。
それに高度順応がうまくいってないのか、頭もクラクラする。まさにチャリクラ岳。ヒーハーいいながら一歩ずつ一歩ずつゆっくり登っていく。
9月に入ったのに登山者は意外と多く、すれ違いざまに次々「コンチハ〜」などと声をかけられる。辛くて挨拶を返す余裕無し。
できれば声をかけて欲しくないのだが、「コンチハー、コンチハー」とコンチハ攻撃を浴びせられる。人が多い山ではお互い顔も合わさずに挨拶する、ただ義務感ですれ違いざまに「コンチハ」と言うことが多いようである。
勘弁して欲しいので、僕には挨拶しなくていいですよー、無視していいですよー、というオーラを発しつつ、黙ってしんどそうな顔してうつむいて歩くしかない。
山頂も人が多く、山頂標識の記念撮影は順番待ちだ。
疲れてるので「写真撮って下さい」と声をかけられたら嫌だな〜。
休みたいけど声をかけられないように、なるべく自分の存在を消しつつビクビクしながらウロウロする。
とっとと下りよう。
下りで山頂小屋に寄る。ここなら撮ってと言われることもあるまい。北アルプスの写真に山名が記して掲示してあったので、山と見比べながら「ふ〜ん、あれが野口五郎か」と山座同定していると、「すみません、すみません」と後ろから声をかけられる。
ハッとして後ろを向くと、一眼カメラを構えたおじさんが
「あの〜、写真撮りたいんで、、、。」
彼の息子らしい人物が私の隣に立っていた。どいてくれってことね。
写真撮って攻撃でなくて、撮らせて攻撃にあってしまった。。。
もう人の多い山に単独で上らないようにしよう。
上りで使う筋肉と下りで使う筋肉は違うようで、下りは快調に小走りで下りた。途中振り返って雪渓をよく見ると、スキーヤーが何人も滑っていた。
あんなところ滑って楽しいのか? と思ったがヒルクライムを楽しむ坂バカチャリダーがいるのと同じように、彼らにとっては9月でも滑るってことが楽しいのだろう。
畳平に戻ったら売店をぶらぶらして、チャリにまたがる。ダウンヒルはあっという間の30分で終了した。
車に戻る前に平湯大滝に寄る。
私と同年代だろうか、男性が年老いた母親と二人で来ていて、母親をタブレットで撮影したあと後ろで滝を眺めていた私に「すみません、お願いできますか」と。
もちろんOKですよ! はい、チーズ!
山では「コンチハ攻撃」と「撮って、撮らせろ攻撃」は勘弁願いたいが、観光地では喜んで引き受けている。