糸魚川から上越まで久比岐サイクリングロードの途中、全国的にも珍しい地下にホームがあるという筒石駅に寄りました。
海岸線を走るサイクリングロードからいったん山側へ登っていきます。すぐに人家がなくなって結構な傾斜を漕ぎます。大きな橋脚が見えてきて、ずいぶん上に高速道路が走っていました。車は一台も来ないし山の中へ入っていくようで、「これほんとに駅があるの?」と心配になりました。600mほどで登り切ったところに、人家がポツンポツンと2軒ばかり。筒石駅の看板が出ていました。
駅の中のかつては改札口であったであろう場所を過ぎるとすぐに地下へのトンネルとなります。
地下にホームがある駅なんて、地下鉄ならどこもそうで珍しいことではないですが、北陸本線で昔からあるというのが希少価値なのでしょう。
エスカレーターなどはありません! 300段ほどの階段を自力で上り下りしなくてはいけません!
階段を下りていくと、古いトンネルにありがちなポタポタと水が漏れていました。それが下に下りるほど水量が増して、下りきったところでは脇の側溝にザーザー流れるほどです!
突き当たりを左に折れると階段はなくなりそろそろ近いなと感じます。と同時にこのまま先を進んでも大丈夫なのだろうか、という一抹の不安がよぎってきます。
通路の途中に直江津方面下り線のホームに下りる階段があり、さらに50mほど先には糸魚川方面上り線のホームへの階段があります。
ここまで来たら先に奥の上り線ホームまで行くのが筋です。いつもの私ならそうしていたでしょう。しかしひとりぽっちでこんなところへ来て、なんとなくざわざわした不安と焦燥から、「別に行かなくてもいいよね、上りも下りもどっちもいっしょ、却下却下」と、とにかく早くホームにたどりつこうと下りていきました。
最後の階段を下りるとそこは待合室も兼ねているのでしょうか、ベンチが置いてありました。
もしここに女性がひとりで待っていて、そこへ私のようなおじさんがやってきたら恐怖に顔が引きつるんじゃないかな。もちろん私も。お互い逃げ場が無いという感じじゃないですか。
扉を開けたらそこがホームで、とても薄暗い。
風が吹き抜けるので扉は閉めておかなければならない。
見ると出入り口から少し離れたところに何か物体がある。暗くてそれが最初、人がしゃがんでいるとはわからなかった。
人だと気づいてたじろいだ。外に車が一台止まっていたが、実際に利用する人がいるのね。
ちょうど列車が到着する時刻らしく「カンカン」と警告音が鳴り響きはじめた。
上り線ホームは正面ではなく左手対角線にずれており、やはり薄暗くそこがホームだともわからないほどでした。そこへ上り列車が煌々とライトを点けてやってきて止まりました。
上り列車はそのまま止まっていて、カンカンと音はまだ続いて鳴り響いていました。そこへ、やがて下り列車もやってきました。ホームで待っていた人が乗り込みましたが、誰ひとり下りてきませんでした。
写真は結構明るいですけど、ほんとに暗かったです!
なんか怖かったけど、タイミング良く上り下りの列車も見られて良かったです。しかも上り列車はイベント列車の雪月花でした。雪月花のまばゆいぐらいの明るい車内は、暗いホームにたたずむ私とは縁のない、憧れの別世界のように感じました。
タイミング良く見られたことに満足して、誰もいない暗い階段を明るい気持ちで外へと戻りました。