糸魚川市の昼闇山(ひるくらやま)は、昼闇谷という広大なカールがある。カールといえば黒部五郎や立山の山崎カールなどが有名だが、なかなかどうしてここも素晴らしい。黒部五郎や立山は滑りに行けないけど、ここなら行ける。国土地理院地図を眺めてはいつもうっとりしていた。
焼山温泉の駐車場に車を止め準備する。駐車場にはバスが2台あるのみ。やがてバスの運ちゃんがやってきた。運ちゃんに、どこの山に登るの?今年は雪少ない?と尋ねられる。
この温泉は残念ながら1月末で休業してしまい、今はバスの駐車場となっているようだ。
最初はとても緩やかな焼山温泉スキー場跡を登り、その上は棚田を歩いていく。目の前の昼闇山に朝日があたる。中央のピークが昼闇山、そこから落ち込む右の昼闇谷は尾根に隠れてよく見えない。
雪はベチャベチャで、早速シールに水を含んでスキーが重くなってしまった。しまった、シールに蝋を塗っておくんだった。出だしから修行ですか。
その後、林道を進んでいくと両側に杉が林立するアケビ平。杉は葉の先が茶色くなっている。まだ開ききっていないようでこれから花粉が舞い上がるのだろう。自分は花粉症ではないが、誰もがなる可能性があるという。花粉症は鼻の穴にワセリンを塗るのが効果的だそうだ。
ベチャ雪は標高が少し上がると表面が固くなったモナカ雪となる。踏むとバスッと沈むので歩きにくい。
900m辺りで昼闇谷に入り込む。帰りを考えて谷へは水平にトラバースを刻んだが無駄だった。この時期は次第に気温が上がりグズグズに溶けてしまう。帰りは使えなかった。
昼闇谷1100mのちょうど二股に分岐するところで右俣から尾根へと乗り上げる。尾根に乗ると視界が広がり右手に烏帽子岳と左に昼闇谷カール全貌が望める。すばらしい眺め。
昨夜は雨だったが上部では雪だったようでパラパラあられのような新雪がのっていてだんだんラッセルになった。
この尾根もなかなか広くて適度な斜度でスキー向きだな〜。なんて余裕こいて登っていると、濡れたシールに新雪が貼り付いて下駄になった。スキーは一段と重くなって、しかもシールが雪を噛めずにズリズリずり落ちる。修行ですか。ベチャ雪、モナカ雪、新雪とこの時期ならではの雪の変化だ。シールに着いた雪をこそぎ落とすのにスキーを脱ぐと、膝まで沈んだ。
尾根を登り切り頂上稜線に出て、アップダウンをこなすと正面に雪の壁が進路を阻むかのように現れた。これは右の尾根から回り込むべきか、正面突破か。しかしあんな急斜面スキーで登れるか?
迷ったあげく、尾根も狭く難儀しそうなので正面突破を試みる。新雪がしっかり結合しておりジグを切ってスキーのまま登れた。固く凍っていたり、逆に溶けてずり落ちるような雪だったら無理だったろう。アイゼンは持ってきたけど使わずにすんだ。
使わない重いクロモリアイゼンは単なる重し、これも修行だが担がないわけにいかない。
雪の壁はスキーで登れたが、尾根は細く急になり板を脱いで10mほどシートラで登った。なんと枝に樹氷が着いていた。寒いわけだ。
さぁ、難儀な細尾根を超えたら山頂へのビクトリーロードだ。
ゴール! 山頂に着いて初めて焼山と火打山を拝んだ。山頂でいい写真を撮りたいため、重い2kgのミラーレス一眼を担いできた。これも修行になるが、天気がいいと担ぐしかない。
ぐるり360度写真を撮ったら、シールを剥がしてまずは稜線を滑降する。2000mに満たない山で4月だというのにあり得ないパウダーで快適だ。
さぁ、途中で目をつけておいた雪庇の切れ目からエントリーするよ!
うひょー!!! 気持ちよすぎてガンガンスピードが出た。
どこまでも続く広大なゲレンデ。
しかし、実際のところ5分で滑り終えてしまった。あっという間。
振り返ってしばし自分のシュプールを眺める。まっさらな斜面に贅沢な一筆書きができて満悦至極だった。
満足したら、あとはストップスノーの昼闇谷を淡々と滑り、平坦な林道は淡々と手こぎし、平らなスキー場は淡々とスケーティングして終わった。
2019.4.6土
6:05 400m焼山温泉P
8:00 900m昼闇谷
9:10 1185m北西尾根
10:45 1610m頂上稜線
12:10 1841m昼闇山 12:30
13:40 焼山温泉P
距離 16.3km
高度上昇 1545m