企業深層研究】
ミンカブ・ジ・インフォノイド(下)
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ミンカブは2006年7月、瓜生憲社長兼CEO(経営最高責任者、48)がマスチューンを設立したことに始まる。瓜生は米ボストン大学卒業後、NTTドコモを経て金融界に転身。証券アナリストとしてゴールドマン・サックスなどで活躍。総務省の災害情報社会システム構築プロジェクトに参加後、06年にマスチューンを創業。後に日本最大級の投資家向け情報メディアとなる「みんなの株式」(現「MINKABU」)を立ち上げた。
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当初は個人投資家向けにサービスを提供していたが、14年8月、大手証券・金融ポータル事業者向けB2Bサービスのインターストラクチャーを連結子会社にした。同年10月、投資家向け株式情報配信サイト「Kabutan(株探)」を譲り受けた。
18年11月、社名をミンカブ・ジ・インフォノイドに変更。19年3月、東証マザーズ(現・東証グロース)に上場した。
「MINKABU」「株探」の投資家向けメディアの運営と、金融機関を中心顧客とした情報ソリューション事業が2本柱。取引先の金融機関は400社以上に上る。
金融大手SBIホールディングス(HD)はミンカブに出資、グループ3社で16.22%の株式を保有している(3月30日現在)。
SBIHDの代表取締役会長兼社長の北尾吉孝(72)と、ミンカブの100%子会社ライブドアのエグゼクティブ・アドバイザーに新たに就いた堀江貴文(50)は、ライブドア事件以来、「犬猿の仲」(関係者)といわれてきた。
年が押し詰まった22年12月27日、堀江が創業したロケット開発ベンチャー、インターステラテクノロジズ(北海道広尾郡大樹町、稲川貴大社長)は、SBIHD傘下のベンチャーキャピタル、SBIインベストメントから10億円の資金を調達した。SNS上で堀江は、たびたび北尾を罵倒していただけに、2人の急接近は驚きをもって受け止められた。
ライブドアとフジテレビジョン(現フジ・メディア・ホールディングス)によるニッポン放送株式の争奪戦が始まった時、ソフトバンク・インベスメント(現SBIHD)の北尾吉孝が、ニッポン放送=フジテレビの“白馬の騎士”として登場する。北尾はニッポン放送が持っていたフジテレビ株式を借り受け、一夜にしてフジの筆頭株主に躍り出た。堀江はニッポン放送を支配し、本丸のフジに駆け上がる作戦の途上で、北尾にハシゴを外されたのである。
北尾が立ちはだかり「ホリエモン、待った!」と大声で叫んだ図である。
以後、両者の関係は「不倶戴天の敵同士」と評された。
ところが、ロケット開発で両者は手を組んだ。周囲はあっけにとられた。
堀江のライブドア復帰で2人の関係は劇的に変化したのか?
ミンカブの23年3月期連結決算は売上高が前期比25.9%増の69億円となる予想だが、経常損益段階で2億5000万円の赤字(前期は8億2800万円の黒字)に転落する見通し。
世界的な広告市場の減速に加え、検索エンジンの仕様変更がメディア事業に悪影響を及ぼした。ライブドアの買収関連費用も膨らんだ。
ライブドアの買収に要した資金は株式の取得価額71億円とアドバイザリー費用の1億円である。
ライブドアが連結子会社になったことから、のれん代が44億2900万円増加(のれんの償却は15~18年を想定)。
ライブドアの売上高は40億円。ミンカブが目標にしていた売上高100億円は達成できる。だが、買収によって生じるのれん代の償却費、長期借入金の増加分(67億4800万円増)の金利負担が重圧となることだろう。
株価は4月27日、前日終値比4円安の1630円と年初来安値を更新した。=敬称略