いやはや、とんでもない状況ですね。原油価格が1バレル=マイナス37ドルを付けてしまいました。え、価格がマイナスってどういうことなの?って感じですよね。これに伴ってCFD取扱業者のいくつかはシステムがおかしくなり(マイナス価格を想定していないため)、おかしな価格でロスカットになった人もいるようです。このへんは訴訟になるかもしれませんね。
ま、それはさておき(ぇ
原油価格といっても、正確には「5月物NY原油先物価格(WTI原油先物5月物)」のことですが、簡単に状況を解説してみます。
普通の商売っていうのは、
「原油、10円で売るぜ」→「はい、10円払うから原油ちょうだいな」
っていうものですよね。
これが価格がマイナスというのはどういうことかというと、
「原油、10円で引き取って」→「しょーがないな、10円で原油もらってやんよ」
ということになります。これまでの世の中の常識が完全に崩壊しています。
なんでこんなことになったのか。
原油の価値がそこまで落ちてしまったのかというと、そういうことではありません。
原油というのは先物相場として3種類あります。
1.WTI原油先物(アメリカ原産の原油相場)
2.ブレント原油先物(ヨーロッパ北海原産の原油相場)
3.ドバイ原油スポット(中東原産の原油相場)
このうち、WTI原油先物だけが急落してマイナスになってしまったのですね。
先物取引っていうのは、現物があってはじめて成り立つ相場です(現物決済)。
つまり、お金を支払った人(買い手)に対して、売り手は原油を届けなければならない義務があります。この取引はWTI原油先物相場においては月次で行われています。今回の相場でいえば、5月に買うという取引契約を4月に行うということですね(正確には4/21期日までに取引契約をする)。
問題になっているのは、上述した「現物の原油」を貯蔵する場所がないってことなんです。
新型コロ助の影響で、人の移動が制限されている状況下、車も動いてなければ飛行機も飛んでいない、原油を消費する産業も止まっているという状況にあります。つまり、原油がダブついているわけです。ジャボジャボです。
原油先物取引を行うためには、現物の原油をやりとりする必要があるのに、その現物を持ってこれないということなんです。所有権を移転するためには、物権の発生が必要ですが、原油を取引できる形での「物」にできないということなんですね。ちなみに、WTI原油取引における原油受け渡しの場所は、米国オクラホマです。オクラホマの原油貯蔵施設はもう満杯が近い状態にあります。
考えられる次善策は、原油を運ぶタンクローリーやタンカーに入れっぱなしにしておく(内地であるオクラホマまで運ばない or オクラホマから海上まで運ぶ)ということですが、これには膨大なコストがかかることは想像に難くありません。
4月に原油を買ってしまった買い手はどうするか。5月に原油を引き取ることは義務なので、現物として原油が来てしまいます。でも置き場所がありません。
「100円で買った原油だけど、50円で誰か引き取って...」←「いらね」
↓
「10円で誰か引き取って...」←「保管にコストかかるから、いらんよ」
↓
「もう、タダでいいから引き取って...」←「引き取ったらコストかかる。いらん!」
↓
「ぎゃー、10円あげるから引き取って!」←「ちょっと検討するわ(コスト計算)」
↓
「あああ、もう21日になっちゃう、100円で引き取って!」←「しかたねーな」
という状況ですね。こうして原油価格はマイナスになってしまったわけです。
もちろんこの背景には、先般のOPEC+による減産合意がとれなかったことによるサウジとロシアの原油生産に伴う原油のダブつき(それでタンカーがパンク状態)というのもあってのことです。
減産合意に伴う減産開始は5月1日からですが、原油ニーズの後退が継続している限り、また来月にも原油価格がマイナス、ということが発生するかもしれません。安易に原油先物に手を出して石油王を目指すのはやめておいたほうがいいと思います。
【以下、私が敬愛するユーチューバーJINさんの動画(無許可リンク)】
↓こうなり...
↓こうなった。
では、今日はこのへんで。