word2vecという面白い考え方に出会った。Word to(2) Vectorということで、単語をベクトル化することで、コンピュータが単語の意味を理解したり、単語動詞で足し算や引き算ができるようになるというものである。例えば、『父』ー『男』 = 『母』のような計算式を立てられるようになるのである。そしてこの計算式は、学習する文章によって結果が異なってくる。つまり文章の筆者の考えを読み取ることができるのである!(?)
これを用いて全く読んでないカントの『判断力批判』を理解しようというのが今回の企画である。Kant's Critique of Judgement by Immanuel KantからFreeで入手し、word2vecを用いて『判断力批判』を分析し、あのイマニュエル・カントの考えを読み取っていこう。
*英語の文章を分析してます。
仕組みを知るとこれからの話がより理解しやすく面白いので、まずはそこから。全く仕組みに興味がない人は2章の本題へGo!
Word2vecは冒頭で述べたように単語をベクトル化するというものである。単語を何百何千の次元上にプロットするというものである。例えば、x軸に性別、y軸に年齢があったとする。わかりやすく2次元で考えてみる。すると以下の図ように理解できる。
このような軸を何百何千の数で増やしていくと多くの単語を理解できるようになっていくというものである。
word2vecの考え方を用いると、文章中で使われている似ているベクトルの単語を探し出すことができる。似ているベクトルをみることで、カントにとってどの単語がどの単語のニュアンスに近いかがわかるというものである。実際にその結果を見て、カントがどのような感性を持っているのか考察をしていく。分析結果はGoogleスプレットシートにまとめてある。
まずは『判断力批判』の判断(Judgement)という単語について調べてみた。すると以下の図のような結果が出力された。上から判断(Judgement)という単語と近いベクトルを持っている単語たちである。
まず目に入るのが、tasteという単語が一番近いということである。読んでないが、『味』という意味ではないだろうということはわかったので、文章中のtasteの使われ方とtasteの辞書を見比べると『(文芸・美術などの)審美眼』という意味で用いられているようであった。判断には審美眼がつきものということであろうか...
また"principle", "concept", "purposiveness"などの単語も上位に食い込んでいることから、判断には根本的な軸のようなものが必要で、目的意識を持つ必要があるのではないかと考えられる。
次に批判(Critique)を調べてみた。以下の図の結果が出力された。
批判には判断(determination)が一番近いというのは非常に面白い結果であった。批判をする判断が重要ということのように思える。自由(freedom)や普遍的な(universal)という単語が上位に食い込んでいるのもカントの考える批判という言葉の持つイメージを読み取る大きなヒントとなっているように感じられる。
最後に面白いと思った結果が出力された神(God)について考察する。結果は以下の図にようになった。一番近い"as"は『ような』と訳されるため、それと神(God)が近かったのも面白い。しかし何より自然(Nature)、存在(Existance)、思慮のある(sensible)という単語が近いベクトルを持つということから、カントは神(God)という存在を自然に存在する思慮深いものというように考えているのではないかと考えられる。
他にも様々な単語で調べてみたので、ぜひ他の結果もみてあなたなりの考察を落としてみてほしい。他の結果=>critique_of_judgement.model
カントの使っている単語をベクトル化すると、それらの単語で式を形成できるようになる。Aの概念からBの概念を引いたら彼にとって何が残るのかということを推測できるようになるのである。早速みていこう
判断(judgement) + 批判(Critique) = 審美的な(aesthetical)
判断と批判を足してみると、審美的なという単語が出てきた。判断力批判をするこの行為自体が審美さを必要とするのではないかと考えた。
判断(judgement) + 自由 (freedom) = 表現(representation)
判断と自由というそれぞれの概念を足すと表現という単語が出てきた。自由な判断をすることによって表現することができるようになる、表現することが必要になるとカントは考えているのではないだろうか。
人間(human) + 普遍的な(universal) = 直感(intuition)
この式もめちゃめちゃ面白い。人間の普遍的な共通項は直感という感覚を持って判断することができることなのではないかと思わせられた。
word2vecという考え方を用いて哲学者の本を読んでみる(読んでない)ととても面白い結果が得られた。しかし、しっかり『判断力批判』を読んでいる方からしたら全然ちげえわ!と怒鳴られるかもしれない。。。
でもとても面白かったので、こんな文章を同じ手法で調べてほしい!などあったらコメントください!やってみたいと思います。
こうやって技術の進歩が進むと文系の分野にも新しいアプローチが取れてくるのはとても面白いですね。古文や漢文、もちろん哲学などもこんな感じの授業になったらそれはそれで面白そう。