

スプトレ相場編では、Splinterlandsでのカードの売買に使える相場や投資の知識や考え方を紹介していきます。
第6回はナンピンのお話です。
取引量の少ない高リスクのカードを避けたとしても、それでも値下がりする不測の事態は起こりえます。
価格が下がった時に毎回すぐに売れば損を最小化できますが、価値の高いカードも一時の値下がりで手放すと利益のチャンスを逃してしまいます。botによる値下がりが激しい昨今では他にも作戦が欲しいところです。
これまでは一回一回の売買にフォーカスしてきましたが、今回はナンピンを題材に、カード売買を複数回という長めの時間軸で捉えます。カード売買のハードルを下げて、売買を有利にしたり次の行動に繋げたりしやすくする考え方を紹介します。
「下手なナンピン素寒貧(すかんぴん)」と言われるように、ナンピンを焦りからの逃避や小手先のテクニックとして利用すると、損を拡大するだけで終わってしまうことがあります。
そのためこの記事ではナンピンという方法だけではなく、なぜその方法を採るのか、その強みは何なのか、順を追って解説していきます。
目次
1. 戦略と戦術
2. 分散して買う戦略の意義
3. 負けを織り込む戦略の威力
4. 相場での分散購入法-ナンピン
5. カード売買でナンピンする場合の検討例
今回は机上の空論が含まれたり、一般的な投資の本などで推奨されない方法だったりと、比較的高リスクな方法を取り上げています。今後のスプトレ相場編で補完もしますが、今回挙げている方法をそのまま適用しようとすると、リスク許容量を超える可能性があります。自身のトレード方針や予算を踏まえて、計画的に利用できるものか、考え方として取り込めるものか参考になれば幸いです
これまでは個々のカードの売買をいかに有利にするかという戦術について扱ってきましたが、今回は1回の売買ではなく戦略的な売買の方法に視野を広げます。
戦術と戦略の使い分けとしては、個々の戦いや技法を戦術、各所での戦いを総合した結果、勝利を収めるための方法を戦略としています。ほかの分野では以下のように捉えられるかなと図で例を出しています。こちらのリンクも解説の例です。
この記事、カード売買の文脈においては、買ったカードが一時的に下がっても、最終的に利益を上げる方法として戦略を考えていきます。

投資時に何かを分散する戦略は、既にある資金を増やす時の常套手段です。インデックス投資しかり、ドルコスト平均法しかり、1度に1つの対象に資金を投入せず、投資対象や買うタイミングを分散します。
これらのシステムではなぜ複数回に分けて購入するのでしょうか?
これを言語化しようとすると、リスクやばらつきを吸収したいというところに落ち着きます。
例えば、時間軸でのリスクを分散しようとする積み立て型の投資方法の例がこちらの図です。黄色で買っていき、最終的に緑で売ると幸せになれるというイメージです。

米国株の代表的な銘柄を加重平均した指数のように、右肩上がりで価格が上がっていく商品を考えます。
このような商品においては、一時的に価格が下がっても持ち続けた方が有利になるとよく言われていました。右肩上がりという前提があれば、図の点ごとに買い増していくことで、一時的に下がった時に慌てて売らずに、じっくりと資産を膨らませていけるという考え方です。値上がり、値下がりというばらつきを無視する知恵ですね。
カードの売買で考えると、リスクやばらつきには色々なものがあります。その時のDECの価格が将来的に見て高いか安いか、カード全体の価格が上昇中か下降中か、資産家が個々のカードを大きく買ったり売ったりするか。これらは予想も困難ですし、現状どんな状態なのか正確に認識することにも工夫や手間が必要です。
加えて、図のように右肩上がりのカードを見つけられるかも難しく、今後上がっていくのかも当然未知です。カード全体に分散して投資する商品もありません。
この記事では、機械的な積み立てまでは目標とせず、1種類のカードを数回に分散して売買する戦略に絞って紹介していきます。
右肩上がりでない未知の状況でも分散する強さが分かる例を一つ挙げましょう。カジノでの理論的な必勝法、マーチンゲール法です。

ルーレットの赤黒予想のように二択のギャンブルのための方法です。どちらが出るかは全く予想できず、勝率は50%とします。
この方法では、最初は$1など低額から始め、負けた時に掛け金を2倍にして再度賭けます。繰り返し賭け続けることで、どれだけ負けても、当たりを引いた時点で最初にかけた額だけプラスになります。
50%の勝負であれば10回連続で負ける確率は0.097%、1000回に1回ほどです。個々の勝負では負けることを受け入れつつも、全体としてマイナスになる確率は抑えられています。賭け金が雪だるま式に増えるため資金は膨大に必要ですが、資金を倍々に増やしていけば、全体として負ける確率も1/2ずつ小さくなっていきます。
マーチンゲール法は極端な例ですが、局所的な負けを織り込むことで長期的に有利になる戦略を考えることができます。どこで負けを許容して、どんな方法でその負けから利益を生み出すのか?個々の売買の最適化にこだわらないことで、戦略的な選択肢が生まれてきます。
※実際にルーレットでこの方法を使い続けると必ず負けます。資金の限界がありますし、公式記録でも21回同じ目が出続けた事例もあります。そもそもテーブルごとにベット額の上限が決まっていたり、ルーレットでは0や00という外れ枠があって赤黒でも勝率が50%なかったりとルール的に不利です。現実的には1回の負けのダメージが大きすぎて期待値はマイナスです。一度に大きく賭ける方法より長く楽しむことはできそうですが、資金は0に収束します。あぶく銭があってもカジノはご注意ください。
相場において負けを織り込んで分散購入する方法として、ナンピンというものが知られています。ナンピンは、最初に少額で買って、一定下がるごとに追加で購入していく方法です。先ほどのマーチンゲール法を緩くしたものと捉えると理解しやすいと思います。

右の図はナンピンの例です。値上がりした後のカードを、下がったタイミングで買うシナリオです。
最初に$4で2枚買ったところ、更に値下がりしたので$3で3枚購入。$4で全部売りという例です。
この時、4*2+3*3=17($)で買って、4*5=20($)で売ったので、$3の売り上げとなります。
ナンピンのメリットは2つあり、①平均購入コストの低下により売りやすくなる効果と、②打診買いにより買いやすくなる効果があります。
上の例をもう一度見てみると、$4と$3で買って、$4で売っているのが分かります。
これは、2回に分けて購入したことで1枚当たりの購入価格が$4より安くなったために、発生した選択肢です。もし最初の$4の時に全予算で買っていたとすると、$4で売っても売り上げは$0ですので、もう少し上がるのを待つしかありませんでした。
今回は、(総コスト)/(購入枚数) = (4*2+3*3)/5 = 3.4と、1枚当たりの価格が$4を下回っていたために、比較的安い値段でも売ることができるようになっていた訳です。この場合、$3.4より上で売れば利益、下で売れば損失となります。損益の境目のラインが$4より下がっているのが図でも見て取れます。

ナンピンにおいては、最初は少ない枚数から購入して徐々に枚数を増やします。よく使われる(?)のは、1-1-1、1-1-2、1-2-3、1-3-5、2-3-5といったように3回に分けて購入していきます。価格が安いカードであれば、これに3や5、10などかけた枚数で買っていきます。
分けて購入することで、少額からトレードに取り組めます。予想外の暴落が起きたら最初で撤退することもできますし、利益が出た段階で売って終了することもできます。気軽にまず1枚買ってみるか、とトレードモードに入れるので、経験値を積むのに向いているかなと思っています。
個人的には2-3-5や3-3-6が好きです。新しい平均コストが、これまでの平均コストと新しい購入との平均かそれより有利な値になるため、頭の中で色々考えたり比較したりするのが楽になります。また、Splinterlandsでは3や5は合成でよく見かける数ですので、売買もその単位で行う人が居る気もします。
ナンピンを取り入れることで、①平均購入コストの低下 ②打診買い の2つのメリットにより売買のハードルを下げることができることを解説しました。
もちろん枚数が増えると購入コストが上がるため、予算内で何を買うか?いくらで買うか?よく検討してから取り組む必要があります。「買ったら下がったので買い足す」という臨機応変な運用ではなく、今まで1回分の売買計画を立てていたのを、2回、3回分計画を立てるようにするイメージです。
計画的に運用することで、メリットを効果的に受けることができます。
ナンピンを安全に実践するために、予算の管理とカードの選定が重要になります。
例えば2-3-5枚と買い足しながら平均コストを下げるとするならば、最終的に10枚買った金額が自分の所持DECを超えていると破綻します。最大でも、1枚当たりの金額が自分の所持DECの10%以下である必要があります。
加えて、Bidでの購入を狙っていくのであれば、同時に複数種類買えてしまうことが多々あります。ですので、ナンピンしながら買っていきたいものの合計額が20%ほどになるように選んでいきます。
例えば10万DEC持っていれば一段階目の予算は2万DECなので、10種類ほど監視するならば、1枚1000DEC前後で2枚ずつ。Chaos Legionのエピックや金枠コモン、Untamedのレアあたりが、この場合のターゲットになるでしょうか。
※ 実際は最初に買ってから直ぐ売れるカードもあるため、もう少し購入しても良いかもです。2回目以降は購入コストも下がっていくこともあります。具体的にどれくらい買うかは、売買するカードにどれだけ慣れてきたか、情報を持っているかによって変わってくるところで、個々人で最適化できるポイントですね。

最後に、今週に実際に行っていた売買がこちらです。UntamedのFire Elementalを、2-3で購入しようとして、2-2だけ買えた時です。
このカードは定期的に$2弱まで吹き上げていたため、購入後にこの辺りの価格でマーケットに出していました。利益は、(1.85*3+2.08)*0.95 - (1.5*2+1.25*2) = 1.7485 ($)です。
売るときも2回に分散していますが、これは3枚売れた時点で購入コストをほぼ賄えるため、最後の1枚はより利益を上げるために高めに設定したものです。1枚だけ日を跨いでしまいましたが、無事に売れてほくほくです。
ナンピンによって売買のハードルを下げる方法と、カード売買で実際に考える例を紹介しました。新しい売買の選択肢やアイディアの元になれば幸いです。
そういえば以前、海外のSplinterlandsのスカラー系のギルドに所属していた時の雑談で、運営のおじさんが仰っていました。
商売は安く買って高く売るとよく言われるが、相対的に安く買い相対的に高く売るというのが重要なんだ
この言葉の真意はまだ分かっていませんが、今も時々思い出して考えることがあります。後にならないと安かったのか高かったのか分からない中で売買する以上、分散売買はこれに近づく一つの方法なのかなと思っています。
さて。ナンピンによって複数回に分けて買う方法を紹介しましたが、何を、いつ買うのかを決める方法についてはまだ深堀りすることができませんでした。
次回、第7回は「買い時を掴む監視方法」の予定です。ナンピンを前提に単一の商品を売買する相場師のやり方から、いつ何を買うのかの決め方を学びます。お楽しみに。
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