要約:「運営を外部の敵から守る」というブロックチェーンの機能は、「ユーザーを運営からどう守るか」や「ユーザーを政治腐敗からどう守るか」と同じく重要では?という問題提起。おもに運営がある程度強い権限をもつアプリケーションをチェーン上にデプロイする意味についてのべている。
チャートも激動、法律も激動な界隈ですが、最近色々なプラットフォームやアプリケーションが出てきて、分散性・非中央集権性にもレベルというか段階が色濃く現れるようになり、同じ「分散」とか「Dapps」とか「ブロックチェーン」っていう言葉を使うにも、各々が全く別のイメージを頭に浮かべながら会話をしているカンジがします。
さて、チェーンのセキュリティには次のような要素があるように思えます、もっとあったらご指摘下さい。
①改竄耐性・・・今までの残高やアセットなどの記録を簡単に書き換えることができないこと
②変更耐性・・・これからアセットや記録を更新するためのルールを変更できないこと
③透明性・・・誰からも検証できること
これ以外にも非効率なシステムと比べると導入するメリットは多いですが、チェーンというよりも電子署名・公開鍵暗号によるメリットであるケースも多かったりします。
では、①〜③まで全て揃っているケースもあり、それはBitcoin的な文脈で「分散」と呼ばれてきたものだと思うのですが、Dappsやコンソーシアムチェーンの場合欠けている場合もあります。部分的に満たすものにはどんな用途があるのでしょうか?
まず、分類から
欠けているものが0: ビットコイン、Ethereum、EOS、・・・などのチェーンのネイティブ通貨やコントラクト、Ethereum上のいくつかのDapps
①改竄耐性が欠けているもの: プライベートチェーン
②変更耐性が欠けているもの: Ethereum上のいくつかのDapps、EOS上のほとんどのDapps、プライベートチェーン
③透明性が欠けているもの: プライベートチェーンのいくつか。コンソーシアムチェーンのいくつか。参加ノードにソースが見れない仕組みになっているもの。
これらの用途はチェーンのセキュリティによって誰を何から守ろうとしているかではっきりするかと思います。
1つも欠けていないチェーンの用途: ビットコインなど、運営とユーザーを内部の腐敗や外部の圧力から守るようと。最も安全なアセットをつくることができる。
①改竄耐性だけが欠けているものの用途: 運営を外部のハッカー等から守る用途。1つも欠けてないパブリックチェーンがオープンソースで外部のハッカーから防衛し洗練されたセキュリティをそのまま利用することができる。運営を守るうえ、透明性があればユーザーが運営を監視できる。
②変更耐性だけが欠けているもの: 運営を外部の圧力・攻撃から守る用途。上のハッカーの事例に加え、権力による圧力でシャットダウンを試みても、計算を実行するノードが分散しているのでシャットダウンはかなり難しくなる。(運営主体のあるクラウドサービス・レンタルサーバーの場合は比較的容易)。政治腐敗した国でも稼働できる。変更圧力をかけられても、ストレージが生きていれば、他の主体がいくらでも活動を引き継げる。
③透明性が欠けているもの: 検証不可能ならおそらく用途がない。
おおよそ、界隈では「ユーザーを運営からどう守るか」や「ユーザーを権力からどう守るか」という部分にだけ着目しており、「運営を外部の敵からどう守るか」というコントラクトの重要な機能を無視しがちであるので、法的インフラが非常に整った国の視点だけでなく、深刻な政治腐敗の中で暮らす地域のニーズも考えるべきだと考えます。