情報がリスクとは、識者の間では常識らしいですが。
保険って、リスクマネジメントの手段として必要なのです。
(FP検定だとリスクマネジメントという分野で出題されます。)
元々は、海運業や冒険のリスク分散のための方法だったと記憶しています。
そんな保険に新しい風が吹いているようです。
テレマティックス保険というものがありまして。
「テレコミュニケーション(通信)」と「インフォマティクス(情報工学)」を組み合わせた造語だそうです。FINTECHみたいなものですね。
どういうものかと言いますと、運転状況を逐次、情報としてサーバーに送り安全な運転をしていればそれに応じて保険料を適正にセットするというものです。
以前モラルハザードの話はどこかでしたと思います。
「保険をかけた、これで病気になっても安心だ」という気のゆるみから健康維持の意識が低下し本当に病気になってしまう。
これだと保険会社は困るのです。「みんなこんな感じで気を使って生活すると、病気になるのは統計的にこれ位」そんなデータを元に保険料を算出しているからです。保険料の根拠データが変わってしまうんですね。
しかし、このテレマティックス保険の場合は、現状を保険会社に送り適宜適切に保険料を設定できます。
なんと公平な。
さらには多分「チェックされてるから健康管理をきちんとしておこう」なんて気分になりますし、「今よりもっと気を付ければ保険料が安くなる、ウシシ」なんて気持ちにもなると思います。
良いんじゃないですかね、飴と鞭で操作する感じじゃなくて、仕組みで理想の状態へ引っ張っている。私好みです。
一方で、自動車保険であっても、健康に関する保険であっても、「いたちごっこ」のような気はします。
抜け道があるんです。
例えばP2Pで車を貸すAnycaさんやCaFoReさんなんてサービスがあります。
現状をそのまま当てはめると、運転が上手な人に貸せばその分保険料が安くなることが期待できます。(もちろん逆の場合もあるでしょうし、保険会社もすぐに手を打つはずです)
例えば、毎日の運動状況を把握し健康管理の一助とする仕組みがあったとします。しかし健康は運動によって成り立つものではなく、むしろ「何を食べたか(食べなかったか)」という点も大きいのです。
最近、負ののれんや役員の去就で話題になった「結果にコミットする会社」さんも、運動だけでなく食事のケアを無茶苦茶するわけです。そこまで見ないといけない。
なんだか監視社会という言葉がぴったりくる、息苦しい社会になりそうです。
で、私が知っている方法だけで成立させようとすると、成立はしないのです。
監視とその透明性の確保にコストがかかるのですね。例えば運動をしたらスポーツクラブの店員に認定してもらうという仕組みがあったとして、その店員が不正をしないという仕組みも作らなくてはいけないからです。コストがかかるのですね。
もともとの話を確認します。
この仕組み自体は保険をかけた人がモラルハザードに陥らない仕組みを提供することで、公正な保険料で運営することを目的としたはずです。
それを達成しようとした結果、監視社会という息苦しい仕組みが想像でき、また、それを成立させるためにコストがかかる、そのコストは健全な行動をとって安くなる保険料よりも大きそうです。保険会社や関連会社は手数料を取れるのでやりたいかもしれませんが、利用者が欲しがらないので、結局のところ厳密にはやらない・できないでしょう。
技術の進歩によって、保険の算定根拠となるデータを入手できる用になったことは多分良い事です。
これにより、モラルハザードを防ぐことができ、公平な保険料を負担する事ができそうだからです。
一方でプライバシーという面や、データの作成者は本人かという自己同一性の面で課題は残されており、さらには何らかの対策が起こってもそれを回避する「裏技」とのいたちごっこになることが予想されます。
さらには、規制に規制をかけてがんじがらめになった業界と同じく、監視に監視を重ねた透明度が高いが誰かに見張られている社会になる前兆でもあります。(利用者が監視を意識できている状況はまだマシです。多くの場合監視する側は利用者にそれを意識させないでしょう。)
健全な社会のようには、少なくとも私には思えません。
そしてイタチごっこ上等で仕組みを成立させようとすると採算が合わなくなります。
安全運転を心がける、健康な生活を心がける事に対する「快」なインセンティブ設計ができ、皆の行動を誘導できると一番いいのですが。
というわけで、
・リアルタイムの情報収集は情報の持ち主への配慮が不可欠である。
・それ以前に、情報をマイナスの材料とするより、インセンティブ設計を働かせるためのプラスの材料を開示するという設計をした方が情報が積極的に集まり良いのでは?
という話でした。
カーシェアの会社でタイムズさんという会社があります。
これは正に、上記私の案を実現した形で、「私は安全に走行しました。データを見て確認してください、そして保険料を安くしてください」という上手な仕組みだと思いますです。
GDPR的な話や中国サイバーセキュリティ法的な話は考慮外ですが、情報の持ち主は誰だ?というところが、この二法の発端だという理解ですので無関係ではありません。
ではでは
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