2006年から2007年に渡り、世界経済は不況へ進んでいた。
そんな中ワイン氏も例外ではなく車は売れない。
しかし、結婚もし、子供を授かったワイン氏は思いがけない車の売れ方をすることになる・・・
2005年・2006年と順調に実績を積み重ねてきたワイン氏
しかし2007年に入ると景色が一変する。
今まで売っていた先輩方含め、売れない。
これは我々の店舗だけでなく、他の店舗はもちろん他社を含め業界全体が不穏な空気に包まれていた。
そんな売れない空気が充満する中一人のお客様がワイン氏を訪ねてきた。
お客A「すいません。ワインさんいらっしゃいますか?」
スタッフ「あ、はい少々おまちください。」
スタッフはワインを呼ぶ為お客Aをテーブルへ案内した。
スタッフに呼ばれたワイン氏はお客様の元へ向かった。
ワイン「お待たせしました。」
お客A「あ、ワインさんですか?私は上田と申します。」
ワイン「はい?上田様。何かご用件がございましたでしょうか?」
全く誰かわからなかった。
正直、お会いしたことはないはず。
でもなぜ私の事を知っているのか全く不明である。
そしてとても優しそうな中年の男性。思い出せない。
上田様「実はこの2年くらいいつもポストにこちらを入れて頂いてましたよね?」
これは・・私の名刺とメッセージカード!!
以前から年式の古い他社の車があり、一番最初の飛び込み訪問でお子様とお話した!!!!
あの飛び込みの後、奥様とは挨拶出来たがまさかご主人にお越しいただけるとは・・
まさか・・迷惑だからやめてくれとか、色々怒られるのではないか・・この時悪いイメージばかりが浮かぶ。
そして・・
上田様「実はそろそろ乗り換えを考えてまして。ミニバンのAという車種を買おうと思ってるんですが、いくらくらいか見積もりを出してもらえますか?」
ワイン「え??!!!!!!!!!!
はい!乗り換え検討されてるのですね!!承知しました!!」
なんと!乗り換えをするから見積もりを出して欲しいとの事!!
嬉しすぎる。
この後、見積もりを提示して商談に入る。今の時代は値引きが厳しいから売れない可能性があるかもな〜と考えながらも誠意を持って対応した。
すると
上田様「こちらのお値段が最大限の値引きですよね?」
ワイン「はい、そうなんです。後は下取りがいくらになるかです。」
上田様「そうですか。分かりました。買います。」
ワイン「はい?あ、ありがとうございます!!」
売れた。
その月は私の成約がお店全体の中でも最初の成約だった。
この事は店長からも褒められたのを覚えている。今は飛び込み訪問で販売する事は時代としても非効率でやらない人も多い。しかし非効率ではあるが意味がない行動ではなかった事は証明できた。苦しい時にこそ自分の取って来た行動が自分を救ってくれることが本当にあるのだという体験は今に活かされている。
店長が言っている「自分を売れ」という事はこういう体験ができる事なのかと感じた。上田様には初めて会うが、私への信頼は絶大だった。車の値段も殆ど何も言わず、下取りの値段に関しても「ワインさんが言うならそれでいいよ」と言ってくださった。この体験こそが信頼できる人とそれを探す人の体験。
続ける事の大切さ、自分を売る事の重要性、車を価格だけで買うのではなくワインの信頼の価格がプラスされた事で車の価格を下げずとも売れたのだと思う。
何かを価格だけで見ている間は信頼など築けないだろう。
価格が後から付いてきた原体験を私はこの時できたと思う。
それから月日は流れた。
私は孤軍奮闘していた。半年間で5人ものお客様が私の飛び込み訪問先のお客様でご契約頂く事に成功した。店頭で構えている香織先輩を差し置いて私が商談し、成約する日が続いた。
これは流石に申し訳ない気持ちと嬉しさの感情が入り混じり、何とも言えない感情になる。
さらにこうした信頼をしっかり築けたお客様からは紹介をしていただける機会が多い。そうすると10人以上は半年の間に紹介でご購入頂いた。
こうなると不景気でも運は味方する。
中小企業の社長さんがリースで5台契約したい・セカンドカーが欲しいなど色々なお客様に巡り合っていく。
気づいたら自動車保険だけで月5万円は稼げる様になった。自分ではそこそこ稼げるようになったので妻も喜んでくれてるのではないかと思っていた。
そして2007年も終わり2008年になり更に世界の景気は悪くなる。
私もその不況の煽りはもろに受け、流石に値引きに応じなければいけない商談も増えて来た様に感じていた。
そんなある日
妻との何気無い会話に衝撃受ける事になる。
この会話からまさか私の人生が大きく変わる人生の岐路に立つとは・・
あとがき
当時の飛び込み訪問で成約に繋げる事はとても珍しかった時代。ワイン氏は2007年に飛び込みフィーバー確変を起こす。
そして月日は流れる
ある日の妻との会話に人生を変えるかもしれない出来事が・・・
最終章へ続く