以下の記述は、11月12日に私が主催したAMA(※1)「徹底討論!カードセール終了!?」の概要を記すものである。
まず最初に、Discordを通じて意見をくださり、またAMAに来てくださったユーザーの皆様(50名以上来てくださったのを観測しました!)、本AMAにあたって時間を割いてくれた事務局側の皆様、登壇してユーザーの意見を代弁してくれたSHIBKI氏、事務局との議論に参加して丁寧に交通整理をしてくれたゆらだい氏、それからサムネ画像の作成等に協力いただいたクロサワ氏に、多大なる感謝を申し述べたい。
では、以下、本論である。
本AMAは、やんぐ個人による、カードセール終了に関するガバナンス提案に関し、事務局と議論した状況を報告するものである(※2)。
私はユーザーであり、50Kを持っているが、ガバナンス提案をする権限しかない。 それ以上、公式に何かを言う権限はない。本AMAはそういう意味でのAMAではないことに注意されたい。報告も、私なりの理解に基づくものである。ただ、本AMAでは私ばかりでなくCG社の小澤氏にも来てもらっているので、私ばかりが話すわけでもない。
本AMA主催の動機としては、先日のカードセール終了ガバナンスの否決がある。賛否様々な意見があったが、否定論には、カードセール終了に対するネガティブなイメージ、カードセールに代わる盛り上がりに対する不安などが目立った。
そこで、私は、カードセール終了を見越した未来はどのようなものなのかを事務局と議論する必要があると思うに至った。ユーザーから2ヶ月ほどにわたってDiscordフォーラムにて意見を募集した上、その意見をぶつける形で、事務局と複数回、数時間にわたって面談し、議論した。
本AMAはこうした調査の結果を報告するものであるが、議論を通じて、
・クリスペに近視眼的でなくCG社やTCGVの戦略を理解する必要がある
・その中でクリスペの価値をどこに実現していくかを考える必要がある
・あるべきクリスペの価値の中でカードセールの位置づけを考える必要がある。
ということを実感した。したがって、まずはこの点について話す。
もしそれで、なるほどカードセール終了は必要だと理解され、ユーザーにとってもメリットがあることだと感じ取ってもらえるならばそれはそれでよい。だけど、そう感じられないユーザーも多いと思われる。Discordで集めたカードセール終了に対する不安の意見を参考に、その疑問も正直にぶつけた。結果、事務局から、熱量ある意気込みと、コミットを得ることができたと思っている。その点は後半に話す。
CryptpGames株式会社(以下、「CG社」という)の事業としての視点からは、クリプトスペルズ単体ではなく、会社経営全体的な考察をせざるを得ない。とりわけ、TCGVerseの発展の仕方において、クリプトスペルズはその一部に過ぎないため、全体の戦略の中で理解する必要がある。
重要なのは、これが我々のガバナンスの外にある、会社の方針だということである。会社の方針を決めるのは会社の株式であり、我々のガバナンスに優越する。したがって、ここに述べることは、我々は前提と考えなければならない。私たちクリスペユーザーはCG社に対し、すべてのコストをクリスペに投じ、クリスペを盛り上げることでCG社が成長すればよいと考えがちであるが、会社の現状はそうではない。そこが不満であれば我々は立ち去るしかない。
会社全体としてみれば、クリプトスペルズに限らない、ゲーム開発の事業を進めているところである。他社のゲーム開発に関わったりなど、社内のゲーム開発にとどまるものでもない。会社内部の事業としては、TCGCの価格が上昇することが至上命題であり、そのための戦略の選択が要求される状況である。
現実、残念ながらクリスペはCG社に対して赤字を垂れ流している。セールカードの売り上げなどは多くが無償配布のSPLによって行われ、基本的なモデルにおける収入源であるSPL購入はほとんどない。セールゴールド発行を見ても、発行コストの方が高くつく状態である。
以上2,3の状況を踏まえると、クリスペに関しての戦略は、
⑴ クリスペをサ終して黒字事業だけに注力する
⑵ クリスペへのコストを最小限にして別事業に注力する
⑶ クリスペを再生するべく再度コストを投下して盛り上げる
等からの選択が考えられるところであろう。
まず、CG社が⑴の方針を採ることはしばらくないということは確認しておきたい。
小澤氏は次のようにいう(※3)。
自分はクリスペを自分の子供のように思っているし、立ち上げからずっとクリスペの発展のことばかりを考えてきた。クリスペを潰すつもりはない。
会社の方針やTCGV全体の戦略とはいったが、自分も株主であるし、経営判断としても、クリスペは戦略の中で重要な意味を持っていると考えている。
それに、他社のゲーム開発や、暗号資産関係の様々なプロジェクトに関わることができるのも、クリスペのおかげというところもある。
BCGはほとんどのゲームが立ち上がっては消えてきた。サービス終了したゲームもたくさんある。その中で、これだけ続けられているゲームは希有である。それは会社としての強みであり、逆に言えばクリスペがサービス終了するということは、会社としても大きなマイナスででもある。
このように、方針⑴を取らないことは、小澤氏の強い意欲に支えられているばかりでなく、合理的である。
他方、⑶も採用していない。我々クリスペユーザーの多くは、クリスペ単独での黒字を望み、クリスペ単独での盛り上がりを期待する。しかし、CG社は現在、クリスペに注力することよりも、NFTWarsなどを拡張する方が戦略的に正しいとみている。時代の変化に沿った新規のプロジェクトの方が可能性があると考えている。もっとも、クリスペに投資することで事業が伸びるのであれば、投資提案は常に募集中である。
このような状況判断から、CG社が選択しているのは⑵である。このプランの中で、クリスペは、事務局の手を離れてユーザーが進めているという側面(以下、「DAO化」ともいう)を押し出したブランディングを行う意向である。
小澤氏は以下のようにいう。
BCGもたくさん出てきている。ほかのゲームと同じことをやっていたら埋もれてしまう。世界初、自動で回ってサービス終了しないTCGを作ったという実績をみんなで作りたい。現状を見ても、続いていること、続くこと自体が、BCG業界において大きな強みである。究極的には、ガバナンスの設置や大会開催なども自動化したい。サーバー代を支払っていること自体が中央集権的という考えもあるので、技術の発展によってはそれすらも必要としない未来もありうる。ともあれ、現状から一足飛びにそのような理想を実現することは難しいため、徐々に理想に近づけていく。
ただし、そこに至る道のりは必ずしも今確定できるわけではない。物事が短いスパンで変動する業界であり、ゴールを設定して明確な道筋を示すような方法は難しい。
気合いでなんとかする。ビジネスは結局気合い勝負というところもある。
技術の進歩や、業界の情勢で柔軟に探っていきたい。コストを抑えて続ける戦略をとるのは、そのチャンスが来るまで静かに待つということでもある。
なお、クリスペに割いている人員はなおもCG社内でもトップクラスであり、クリスペをおろそかにする意味ではない。なお、これらは現在の戦略であり、将来を拘束するものではない。
ここで、ユーザーより「続く」ということの意味が何であるかという問題提起がなされた。DAO化による構想はゲームが続くことによる競争力向上に主たる目的があるが、「続く」以上に面白いゲームでないと意味がないという考えも、ユーザーから多数聞かれた。サービスが存在するという意味で「続く」以外に何もないならばこれまた魅力は失われるため、続く+αの部分をいかに呈示できるかは問題であると考えるユーザーが多く、事務局の考えと乖離があるとの声も聞かれた。
ただ、この「続く」ことを重視する戦略自体は、上述のとおり会社の方針であり、我々ガバナンスの外にある。この戦略を前提に、+αの部分をどうやって最大化するかに議論の焦点を当てる必要がある。構築される仕組みが有効に機能したときには、ユーザーが主体となってゲームを作り上げていくという体験はそれ自体として魅力的な価値を持つ。これを対外的にアピールしていくため、必要な施策を実行すべきである。
以上の戦略的前提のもと、カードセール終了をどのように位置づけるか。
まず、ここまで話してきたことから明らかなとおり、クリスペの戦略はDAO化による自走であり、そのことによるブランディングである。カードセール終了は、それ自体としてこれまでにない価値(※4)である。珍しい試みをしているプロジェクトは、珍しさから一目置かれる存在になり、価値を生む。
この前提に立つとき、カードセール継続はDAO化の方向性と矛盾する。事務局を称する中央集権権力側がカードの能力を決め、環境を作ることの宣言は、思想的な自己矛盾に他ならないからである。また、カードセールを継続することは、事務局が工数を延々とかけ続けるということであり、それ自体DAO化の構想とは矛盾する。
カードセール終了は、ガバナンスによるカード発行、能力調整や環境変化などの機運を高めるであろう。ユーザーが積極的にこうした試みに参加したとき、ユーザーが主体となってゲームを作り上げていくという体験が魅力的な価値を持つ。
カードセール終了は単に事務局の工数削減だけではなく、中長期的にはユーザーにとってもメリットがあるものである。こうした要素を対外的にアピールし、クリスペのブランドとしていくためにも、カードセール終了は積極的に必要な施策になるものと解される。
消極的な側面に目を向けると、新規カードが増え続けることにより、データ量が増え、バグも増え、運営コストが増えてしまうという懸念がある。さらに、それと平行して新規ユーザーの学習コストが上がってしまうという懸念もある。
小澤氏は次のようにいう。
カードセールは、今すぐ辞めなきゃいけない状況でもない。
でも、いつかは辞めなければいけない。
カードが増えて保守コストや学習コストが増え続ければ、かならずゲームは辞めなければいけない時が来る。過去のソーシャルゲームやデジタルカードゲームが衰退した道である。
僕はそのことに、徐々に徐々にユーザーが気づいていくと思っている。カードセール終了が否決されたということは、ユーザーがそのことよりもセールの楽しみを重視しているということだから、まだそのときではないのかもしれない。
でも、ずっと続けるわけにもいかないというのは事実。だからどこかで止めて、新しい価値を作り上げていきたい。単に続けばいいとも思っているわけではない。盛り上がっていたいし、カードセール終了しても盛り上がるための努力は事務局としてもやっていきたい。
なお、そもそも必ずしもカードセールが生み出している価値がすべて失われるということでもない。コラボカードのセールは継続するし、プロモカードその他新カードの開発が行われなくなるわけでもない。上述のとおり、ガバナンス提案によるカード発行や調整の実績もあり、今後も検討されるであろう。
ただし、どんなに理由を並べられても、次のような直感は排除できない。
たとえば、「カードセール終了は通常盛り下がりを意味する」「楽しみがなくなる」「停滞感しかない」といった直感である。また、Discordでは、「カードプール(コンセプトの種類を含む)は現状でも足りていないのではないか」という意見も聞かれた。
こうした直感をも克服して、カードセール終了後の輝かしい未来を、DAO化した世界の魅力を呈示し、クリスペのブランドとしていくならば、今、一時的にでも、カードセール終了に代わる魅力の呈示のためにCG社が何らかの労力を割いてもらいたいと考えた。
逆に言えば、それができないならば、DAO化やカードセール終了は事務局によるゲーム放置、ユーザーの軽視と捉えられても仕方がない側面がある。もっと冷たくいえば、ユーザーへ権限を委譲してコストを削減し、ワクワクを奪いながら、新しい試みを広報に使うというのであるから、それに伴う対価をユーザー側に還元しなければならないとユーザーが考えるのは、当然のことである。
まず、カードセール終了を積極的なものであることを確証すべく、さらにカードセール終了と並行して積極的なアイデアを募集したく思った。Discordでアイデアを集めたところ、様々な意見が聞け、これらを議論の俎上に載せたが、具体的に何ができるかは、AMA当日までに、事務局との間で実施する具体案を詰めることができなかった。
Discordで聴取した意見のうち、コロシアムの詳細設定を可能にする案は、DAO化とも相性がよく、現在検討中であるが(※5)、これに限らず、イベントとしてDAO化に沿う改革案を募集し、そこにTCGCを付与することを考えている。アイデアを事務局主導で正式に募集し、事務局が対応可能で効果が大きいものをいくつか選び、アイデアを出してくれた人にTCGCを付与するなどのイベントを実施することが考えられる(※6)(※7)。このイベントの実施の限度では、事務局にコミットを得られたように思う。
クリスペ事務局に対しては、不信の声が聞かれるのも実情である。
過去に宣言していたことが反故にされたり、プロデューサーの交代により説明が変わる(そもそもプロデューサー制度はいつの間にかなくなった)、gitbook記載の一方的な変更など、不信感を抱く出来事は少なくない。
実際は不義理と断じられる事項ばかりでなく、実際は約束を反故にしたわけではないのに説明が不足している事例や、ユーザーが反故にされたと勘違いしている事例もあると思われる(そして、単なる不合理なクレームもあると思う)。しかし、いずれにしても説明不足・コミュニケーション不足である。
こうした問題について本AMAで細かに立ち入ることは時間の制約上不可能であるが、不義理は精算する姿勢を見せておかないと、ガバナンスへの権限委譲や、カードセール終了そのものが、運営が責任を果たさずに逃げたという負のオーラをまとうこととなり、ゲームの衰退につながる原因になると思われる。
小澤氏は次のようにいう。
僕はクリスペのことを片時も忘れたことはない。
だけど、会社全体のため、クリスペは他の人に任せ、他の事業を推し進めていった結果、クリスペでのユーザーとのコミュニケーションは疎遠になってしまったと思っており、そこは反省している。
それによってCG社が大きくなり、クリスペを続けることのできる企業に成長したという自負はあるが、クリスペから離れて、クリスペユーザーと対話する機会が少なくなっていたことは非常に申し訳なく思っている。
それによって生じた不満も受け止めていくつもりである。
今後は、今日のようにもっとユーザーとのコミュニケーションを増やしていきたい。たとえば、TCGVのAMAなどを利用して、クリスペのコーナーを設けるなど、様々な話題についてユーザーと意見交換するとともに、ユーザーの疑問に対応していきたい。
今後ユーザーとのコミュニケーションを増やすために、AMAなどを実施していき、クリスペに関するコミュニケーションを図っていくことについては、事務局のコミットを得られたように思う。
近日中に提案予定です。
最後にもう一度、来てくださった皆様に感謝を申し上げたいと思います。初めての試みで、どれだけ意味のあることができたかわかりませんが、たくさんの方が聞きに来てくださり、AMA後には大変嬉しいコメントもいただいたりと、ひとまずはやって良かったと思います。
また、ユーザー視点では、小澤さんから、未来を見据えたクリスペ発展への意欲や、ユーザーとのコミュニケーションへの意欲を聞けたのはとても良かったと思います。そもそもこのAMAのために何度も打ち合わせのために時間を取っていただいたこと自体から僕自身はクリスペへのコミットを感じていたところですが(社長の時間単価を考えるとえらいことをしてしまったと思います)、AMA後にユーザーの一部からも同様の声が聞こえてきて嬉しく思いました。
こうした試み自体、ユーザー主導の世界を象徴するものとして、どんどん広まっていって欲しいですし、単発ではなく継続的にこういうことが行われていけば有意義に思っています。本AMAがそうした動きを生み、今後DAO化された世界が形成されていくことの一助になれば幸いに思います。
なお、当然のことではありますが、本AMAに際して、事務局側から何ら費用等はいただいていません。AMAの中で、本AMAに対しても事務局側からTCGCを協賛したいくらいだという発言がありましたが、絶対に受け取るつもりはありません。こうした中央集権権力からの随意契約的な協賛はDAOの仕組みと逆行するものと思われ、私にとっては企画の自殺にほかならないからです(なお※6、7も参照)。ただ、コミュニティへの貢献には相応の対価が必要であるとは思っており、できれば今後は、それをコミュニティで決めて分配する仕組みの構築が必要であると思います。
当AMAに限っていえば本当にボランティアのつもりなのですが、【お褒めの言葉】【今後についてのご意見・ご批評】【投げALIS】【投げカード】【ストック購入】【共感してオニキスを一緒に盛り上げる!】【ご入信】など、もしコミュニティに私の取り組みを評価してもらえるのであれば大変嬉しく思います。
【脚注】
(※1)余談であるが本件でAMA(Ask Me Anything)といういいかたをするのは適切ではないと思う。僕は単なる1ユーザー。ここでいうAMAは「All Minds Assemble」(すべての頭脳を集めよう)とでもいうべきものである。
(※2)したがって、本稿はあくまで私の意見である。私はユーザーの一員であって、ユーザーに対して上からものをいえる立場ではないし、何かを公式に発表できる立場でもない。ただし、私はそれがDAO的運営だと考えている。今後も本件のようなユーザー主体での言語的コミュニケーションが増えていくことを望む。
(※3)小澤氏の意見を一字一句正確に反映したものでなく、要約である。文責は小澤氏ではなくすべて私にある。
(※4)NFTセールを終了しているゲームにはマイクリプトヒーローズがあるものと思われるが、カードゲームではなお珍しいのではないかと思われる。
(※5)各所で、これが確定的にAMAで話された旨の理解が見られたが、誤解である。
(※6)ここにおいて、「DAO化と運営(中央)からの報酬って矛盾」するとの意見が聞かれた。非常に説得力のある意見に感じたし、問題意識を持っていないわけではなかったが、ここは本件に限り目をつぶりたい(本当は矛盾的だと思う)。感覚としては、中央権力に対し、ユーザーが、可能な施策を提供してもらう代わりに対価をもらうという取引の感覚である。と、AMAでは申し上げたが、本当はみんなで決めるのが正解だと思うし、コミュニティへの貢献を決めるのはコミュニティだと思う。本件は事務局の工数が直接的に関わり、事務局の判断を中心に構築する必要があると考えたが、妥当な手段を現在模索中である。
(※7)ここにおいて、TCGCの分配に限ってみても「TCGVの中で誰が決めているのか」「クリスペの中の分配は誰が決めるべきなのか」という問題提起はあり得る。尤もであるが、前者はさらに上のレベルの問題であるし、後者に関しては注6と同様、一度目をつぶりたい(究極的にはみんなで決めるのが正解と考えている)。