実際に仮想通貨投資をしている人や、ネットで情報を得ている人にとってはあまりにも当たり前のことであるが、職場でそんな会話が実際にあったので、木山泰嗣『弁護士が教える 分かりやすい「所得税法」の授業』を参考にまとめてみる。
まず現代日本の税制は「包括的所得概念」という考えをベースに構築されており、あらゆる「経済的価値の流入を包括的に『所得』として考えるもの」である。「あらゆる」「包括的に」というところがポイントで、あらゆる純資産の増加(経済的価値の流入)を包括的に所得として捉えるため、「純資産増加説」とも呼ばれる。
この包括性がどれほど徹底しているのか、「(泥棒等の)犯罪によって得た利得」(!)も日本の所得税法上は申告義務を免れない事実を考えるとよくわかる。「利息制限法で禁止されている利息の支払いを受けた場合のその制限を超えた部分」も所得であるため、ウシジマくんも(法律上)申告義務を免れない(実際に申告するかどうかは別)。最高裁でも「利息(超過利息)が『所得』として課税対象になる」と判示されているという。
しかし当然に、「違法な所得」についてはこれを返還する義務がある。民法学習者にはおなじみ703・704条にその定めがある。「不当利得」返還の義務である。
そうであっても、やはり一旦は「違法な所得」を律儀に申告納税し、民法703・704条にしたがって律儀に被害者に「不当利得」を返還。その時点で所得はなかったことになり、律儀に「更正の請求」をして、所得税の還付を経るというのが法律的にまっとうなプロセスということらしい。「違法な所得」ですら課税対象になるのであるから、仮想通貨投資で得た利益が課税所得になるのは、まあ、当然であろう。
ただしどんなものごとにも例外があり、「包括的所得概念」の下でも非課税所得は存在する。ただしそれらには法律で明文の規定がある。所得税法9条1項の1号から18号まで「非課税所得」が列挙されており、所得税法以外の法律で「非課税所得」が規定されていることもある。後者の例としてはたとえば、宝くじの当選金が非課税なのは「当せん金付証票法2条」に明文の規定があるからである。
仮想通貨で得た利益が非課税所得になる明文の法律上の規定はないので、やはり申告納税義務を免れないのである。