b.tokyoで登壇され、トークンを活用したサービスを行っているTokyo Otaku Mode の安宅さんが、トークンによって社会のあり方が変わる可能性がある、と肯定的にブログで書かれています。
ただ、僕のトークンに関しての考えは「バリバリ期待、懸念が少し」です。
期待と懸念に関してそれぞれ書きます。
まずは期待感からです。
「可視化できないけど大切なもの(例えば感謝の気持ちや信頼など)に価値を持たせることができる。また、トークンをインセンティブとして与えることでさらにそれらを促進させることができる」といったことがトークンエコノミーで可能になると言われています。
「可視化できないけど大切なもの」をアカデミックな言葉にすると「社会関係資本」と言われます。同義ではないかもしれませんが、
社会関係資本(Social Capital)
社会的ネットワーク(個人間のつながり)、およびそこから生じる信頼と互酬性(持ちつ持たれつのようなこと)の規範のこと
そして、その社会関係資本の概念では、人々が信頼でき、互酬性によって特徴づけられた社会は効率性が高いと言われてます。
難しい定義なので、簡単な例を交え説明します。
例えば、街中が泥棒だらけだとします。そうすると、身を守ることや防犯対策など至る所で余計なコストがかかってしまうため住みづらくなり効率が悪くなります。
一方、周りが知り合い同士で信頼できる人の場合は、そのような不必要なコストはかかりません。
トークンにより社会関係資本が可視化されるような社会が実現できれば、その人が自分にとって信頼できる人なのかがわかりやすくなります。そのような社会では、より効率よく、お互いに気持ちよく過ごせるようになるだろう、という期待感はあります。
一方、少しの懸念点です。
行動経済学に「アンダーマイニング効果」というものがあります。内発的に動機づけられた行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機づけを行うことによって、モチベーション(やる気)が低減する現象のことを言います。
例えば、自分は絵が趣味で普段からよく絵を描いてるとします。ある日、「友人からご飯奢ってるから絵を描いてくれ」と言われたとします。その時、今まで趣味として内発的にやっていたことが、「ご飯を奢る」という外発的要因によって絵を描く事になります。そしていつか報酬をもらわないと絵を描くやる気がなくなってしまうかもしれなません。これがアンダーマイニング効果です。
可視化できないけど大切なものや行為は金銭的報酬が伴いにくいものでした。したがって、「その人のため」「自分がやってて気持ちがいいから」などの純粋な内発的動機で行なっていたものが多いと思います。ですが、それらの行いに「トークン」という外発的要因が加わる事によって、逆に、そのようなことをやる人が削がれるのではないか、と懸念しています。例えば、毎朝ボランティアとして地域の交通安全行動をやってた人が「一回ごとに10コインあげるよ」って言われたらやる気が削がれるのでは、と思います。
ですが、適切なところでトークンを使えばアンダーマイニング効果は起こらないと思うのでそこまで心配しなくていいのかもしれません。
ただ、人類はまだトークンを持ち得た時代には生きたことがありません。トークンをもらえる事により、社会的に善とされる行動を多くするのか。または、アンダーマイニング効果によって減ってしまうのかわかりません。
「社会をよくする奴が偉くて稼げる」社会の実現に向けてトークンエコノミーを促進していきたいですね!!