私、知りませんでした。
つい、先ほどまで。
あまりの衝撃だったので、ここに残しておこうと思います。
この「勤勉革命」とは、経済学博士で歴史人口学者でもある故・速水融先生が提唱されたもので「江戸時代の17世紀末より、農村部に生じた生産革命」です。
詳細はウィキペディアの勤勉革命のページをご参照頂きたいのですが、こちらでも一部引用させて頂きます。
家畜(資本)が行っていた労働を人間が肩代わりする資本節約・労働集約型の生産革命であり、これを通じて日本人の「勤勉性」が培われたとされる。
家畜を飼育するために割く労力を抑制し、人間自身が自発的に重労働も担うことで、生産を増やそうとした特徴がある。
産業革命(工業化)が、資本(機械)を利用して労働生産性を向上させる資本集約・労働節約型の生産革命であったのとは対照的な捉え方である。
うわぁー……やばくないですか、これは。
逆ですよ逆、産業革命の逆。
産業革命では「人がしていた労働を機械にさせる」のですが、勤勉革命は「家畜のしていた労働を人がする」わけですから。
もっと言えば「産業革命(工業化)は機械(=資本)を使用し、生産性の向上を図る資本集約・労働節約型の生産革命」ですが「勤勉革命は家畜(=資本)を労働に代替する」という、資本が真逆に向かっているというわけです。
それで結果的にどうなったのかと言いますと「生産性の向上」→「余力の形成」となりました。
「生産性の向上」は所得の増加に止まらず余暇も産み、休日・祭日が増えます。
「余力の形成」によって、識字率の向上や大衆文化の発展にも寄与します。
小農自立(作合という中間搾取を排除)に伴い隷属から解放もされます。
ということで、一言で言えば「成功しちゃった」んですねー。
だから今でも「一所懸命働けばどうにかなる、どうにかならないのは努力が足りないからだ」という価値観を持つ人がいるんですね。
(上記リンク先によりますと、速水先生は「勤勉革命の成果が減衰しないうちに工業化が行われたことが近代日本発展の土台となり、また現代において度々指摘される「日本人の働き過ぎ」の遠因となっている」と著書で仰っておられるそうです)
もうちょっと細かく言いますと。
何で日本はイギリスの真逆になったのかと言いますと、その理由は「土地の広さ」でした。
イギリスは日本に比べて人口密度は低く利用可能な土地が多かった上に、海外の植民地の獲得によってさらにそれが顕著になったため「労働者一人当たりの生産性向上が必要」な状態になっていました。
日本では逆に17世紀末には可耕地の大半が耕作地化されており、こちらは「単位面積当たりの生産性向上が必要」な状態になっていたわけです。
使える土地が狭いと、その土地に最も適した作物の選択や二期作や二毛作のような土地の使い方も必要ですし、それには小規模な農業経営の方が適していたのです。
土地かぁー。
そう言えば、日本のバブルは土地がメインだったなぁー。
(その時に「日本は平地が少ないから、土地の値段は下がらない(から、不動産の価格は必ず値上がりする)」という「土地神話」がありました)
それとあと「一所懸命」というのは「鎌倉時代の武士が先祖伝来の所領を命懸けで守ったこと」が由来だったなぁー。
いや、土地を大事にするのは良いことだけど、人も大事にしなきゃねー。
上記リンク先の記事の中に、以下の一文を見つけました。
西ヨーロッパにおいて勤勉を美徳とする倫理観はプロテスタンティズムの影響を受けたものであるが、日本人の「国民性」とも言われる勤勉性は勤勉革命、つまり経済原理に則った江戸時代農民の行動によって培われたものである。
私は今まで「日本人の勤勉な国民性は、石田梅岩の思想によるものだ」と考えていました(もちろんそれもあるでしょうけども)。
いや、本当に勉強になりました。
速水先生、ありがとうございます。
亡くなられたのは本当に残念です。
<追記>
KTAG様のコメントがきっかけで、土地と労働と資本は「生産の三要素」と言われていることを知りました。
北国宗太郎様の以下の記事がわかりやすくておすすめです。
くどいようですが、日本はその三要素のうちの「土地」を、あまりにも大切にしてしまっていたのです。
ただし、バブル崩壊でこの点は解消されましたが、その中の人による「労働」(というよりも「人」そのもの)を粗末にしているところは解消されていません。
私は今まで、日本人は「労働は尊い、労働者は偉い」と、労働をあまりにも高く評価し過ぎだと考えていましたが。
裏を返せば、これは「土地と労働と資本のうち、労働が最も貴重ではないものだから、たくさん働いて何とかしよう」という状態であるわけですから、この三つを比べると「労働」は一番評価が低い、とも言えるのです。
……んー、何だかわけがわからなくなってきましたが。
今、これからはWeb3の時代です(ちと停滞していますけど)。
そこにはリアルな「土地」は要らないですから。
資本だって、新たに暗号資産というものが生まれているわけですから。
だから、だから、だから。
日本の皆さん、もっと「人」を大事にしましょうよ。