今回の記事を書いたのは、前回『日本の生産性が低い根源的な理由は、日本人の価値観が古いから』でblk3dayade様に頂いたコメントがきっかけでした(blk3dayade様、ありがとうございます)。
そこで私の返信の中に、以下の文言があったわけです。
日本人は基本は良い人ですし地に足がついていますから、そこは誇りを持って良いと思うのですけれども、その良いところが全部良い方に作用するとは思わないで注意した方が良いのではないかと。
昔、JALの社長さんが海外で褒められたことがありました。
何で褒められたのかと言えば、日本だと経営再建中の儲かっていない会社の社長さんが電車通勤なのは当たり前で、逆にそれで大金を貰ってたら「えー」て思われてしまいますけど、アメリカや欧州では「CEOだから大金を貰うのは当たり前」だからなんですね。
なので、以下のようなコメントで褒めてくれる人がたくさんいたわけです。
「米国では、このような強欲と富にまみれていないCEOは珍しい」
率直に申し上げて、我々日本人は「あんたらのCEOがもらい過ぎやねんてー」て思っちゃいますけどね。
しかしこの日本人の美徳が、裏目に出ることもあるわけです。
それが「グランドセイコーの高級価格帯で、ロゴが廉価品と同じように(機械で)刻印されていた」という話です。
ツイッターで見た話しで(かつ該当のツイートは探せませんでした)恐縮ですが、高級腕時計の愛好家が以下のような嘆きのツイートをしていました。
「グランドセイコーの高級機を買ったら、刻印が他の廉価版と同じく機械だった。がっかりした。スイス製の同価格帯の腕時計でこんなことをしているところはない」
恐らく同じ方だと思うのですが(別の方かもしれません。曖昧でごめんなさい)、別のツイートで「グランドセイコーの高級化を応援したい」旨のツイートをされていたんですよね。
それでがんばって買ったら、このような状態だったと。
確かこの時、この腕時計の定価は400万円台だったと思います。
ここまでの高価格になると、手作業(手作り)が値打ちの一つになるわけであり、低価格帯との違いで「ロゴが手で刻印されている」というのは、わかりやすい差別化になるわけです。
参考になるかどうかはわかりませんが。
というわけで、何が言いたいのかと言いますと。
その高級機を出す時に、社長さんから「待った!」がかからなかったため、その状態で出てしまった、という話です。
つまり、セイコーの社長さんは「利益を自分が独り占めして多く分捕るようなことをせず、従業員や株主にきちんと分配していた」ことが伺えます。
さらに言えば「多額の報酬をもらって、それで高級腕時計を買いまくっていたわけではない」からこそ「ここら辺の価格帯の高級機は、刻印がすべて手作業でされていることを知らなかった」わけです。
ただ、これはセイコーの社長さんだけの話ではなく、日本人全体の価値観も絡む話ではあります。
日本人にとっての腕時計は「企業戦士が身につける武器」のようなイメージがありましてですね、戦国時代の武士の刀みたいなものだったわけですから(良いように言えば)。
武士の刀と言えば武士の魂でもあるわけで、魂が宿ったものが刀です。
しかし刀は武器であり、戦いの道具でもあるわけですから、どっちかと言うとこっちのイメージの方が強いんですよね。
しかし現在は「刀剣と言えば、骨董品(希少価値のある美術工芸品)」ですから。
「人を斬るための(そういう用途の道具である)刀で優れているもの(=プレミアム)」ではなく「魂の宿った(哲学という本質的な価値のある)骨董品の一つ(=ラグジュアリー)」であると、頭を切り替えた方が良いのではないかと思います。
(タイトルが「HERO(ヒーローになる時、それは今)」のパクりであることに気付きました、それは今)