イソップ寓話集の中に「木こりと旅人」という話があります。
この話はかなり有名なものですが、童話として子供に読み聞かせるというよりは、ビジネスの用語(木こりのジレンマ)として持て囃されているような気がします。
元の寓話は以下のようなものでした。
~ここから~
ある日旅人が森の中を歩いていると、大きな木を切り倒そうとしている木こりに出会いました。
その木こりは疲れ果て、今にも死にそうな表情で木を切っています。
動きも鈍く、体の切れも良くありません。
が、その木こりの持つ斧の刃もボロボロで、斧の切れも良くなさそうです。
そこで旅人は、木こりに声をかけました。
「あー、もしもしそこの木こりさん。
あなたの斧の刃は、ここからでもわかるほどボロボロじゃないですか。
一度作業を中断して、刃を研いでからにした方が良いのでは?」
すると木こりは怒りながら言い返しました。
「そんな時間、あるわけがない!」
~ここまで~
というわけで、この寓話で言いたかったことは「体と道具の管理は大事だよ」ということですけれども。
これは木を切るだけではなくてビジネス全般にも当てはまることであり、それ故に汎用的な教訓とされているわけですね。
有名なのは、スティーブン・R・コヴィー博士の著書『7つの習慣』の「第7の習慣:刃を研ぐ」に書かれているものでしょう。
(この記事を書く時に久しぶりに思い出して、再読を始めました)
該当箇所を以下、引用させて頂きます。
森の中で、必死で木を切り倒そうとしている人に出会ったとしよう。
「なにをしているんです?」とあなたは聞く。
すると男は投げやりに答える。
「見れば分かるだろう。この木を切っているんだ」
「疲れているみたいですね。いつからやっているんですか?」
あなたは大声で尋ねる。
「もう五時間だ。くたくただよ。大変な仕事だ」
「それなら、少し休んで、ノコギリの刃を研いだらどうです?
そうすればもっとはかどりますよ」
とあなたは助言する。
すると男ははき出すように言う。
「切るのに忙しくて、刃を研ぐ時間なんかあるもんか!」
引用は以上です。
で、私は個人的に思うのは「これって、今の日本という国にも当てはまるのでは?」ということです。
日本は「木を切る」ことのみに目を奪われて過ぎている木こりのようです。
この話の「刃を研ぐ」ところに相当するものは、いろいろあると思います。
科学技術や医療、あるいは暗号資産などの主に理系の分野への投資とか。
私がこれからやろうとしているのは、文系の人材の育成の方ですけども。
中でも、まず「自殺を減らす」ことが、最も優先順位が高いと思います。
とはいえ今の世の中で言えばですね。
「作業を中断してチェーンソーをホームセンターで買えば?」
「いやそもそもが、木材はいっぱい輸入しているやないのー」
「そうなると木こりは木こりにならなくてもええんでない?」
という話になるかもしれませんけど。
……こんな話を昔、書いたことがありましたわそう言えば。
この話にご興味ある方は、こちらもよろしくお願い致します。