京都はお寺や神社が有名ですが、もちろん町には人々の生活があります。
人々が暮らしを営む住居も、京都は独自の進化を遂げました。それが有名な京町家。
この京町家の中はどうなっているの?
とても興味深いのですが、なにせ人が住んでいるところですから見せていただくことはできません。
最近は京町家をリニューアルしてゲストハウスやお店にしているところも増えてきて、そこへ行くと雰囲気はわかるのですが、これらはもはや住居とは違ってきています。
それが今回、実際に人が住んでおられる町家が期間限定で特別公開になりました!
これは珍しい。訪ねてみましょう!
公開されたのは、藤野さんのお宅です。
京都・御所南の閑静な住宅街にあります。
藤野家住宅は個人のお宅と言っても、国の登録有形文化財に指定されている貴重な建物。
外観は、高い塀が目に付きますね。
これは「大塀造(だいべいづくり)」と呼びます。
通りから家が見えないように、プライバシーを重視した作りかと思います。
裕福な商人や医者などが住宅用に建てた塀付きの町家とのことで、お金持ちの象徴のようです。
高い塀に隠された家の中はどうなっているのでしょう?
入ってみましょう。
なお、この公開は、京都市観光協会が主催の「京の夏の旅」文化財特別公開の一環として行われています。
この藤野家住宅は、京の夏の旅、初公開です!
先の入り口を入って、右手すぐにいきなり茶室がありました。
このような配置は珍しいように思います。
藤野家住宅は大正15年に建てられたそうです。
少し奥に進み、家の中へ上がらせていただきます。
右手の先は上の写真にあげた茶室。
左手には坪庭がありますね。小さな空間をうまく活用しています。
そして振り向くと…。
八畳の座敷と、こちらにも中庭があります。
お庭がふたつあると、双方の窓を開けると風が部屋を通り抜けるのです。
とっても涼しい。
これは、京都の暑い夏を過ごす知恵とのことです。
中庭の向こうは蔵が見えています。古民家と言えば蔵ですよね。
さぞかしお宝が眠っていそうですが、京町家は夏と冬のしつらえがあるので、例えば冬ならむしろやすだれなど夏のものを入れているのだそうです。
いや、それ以外にお宝もありそう。
このように、京町家はうなぎの寝床と言われるがごとく奥に細く伸びています。
レトロな時計が存在感を醸し出していました。
SEIKOSHAの表記がいいです。いまのセイコーですね。
残念ながら時計は動いていません。
この藤野家住宅は、今も藤野さんがお住いになっているとのこと。
と言っても、見渡しても藤野さんはおられません。
解説をされているボランティアガイドの方に藤野さんは今どこにおられるのですか?と伺ったところ、藤野さんのご主人は公開期間の1ヶ月間は毎朝外出され、夕方になると戻ってこられて、夜はこの家でお休みになるとのことでした。
いやぁ、ほんとに住んでおられるんだ。
ご主人を追い出して見学していてすみません、という感じです。
あと、2階にも上がらせていただきました。
2階から見る中庭もなかなか良いのですが、なにせうなぎの寝床ですぐ横に隣家があるのでお庭は写真撮影禁止です。
この2階の間の掛け軸は今尾景年の作。
再び1階の座敷に戻ってきました。
やっぱり緑があると癒されますね。
しばし部屋を吹き抜ける風にあたって涼んで、藤野家住宅をあとにしました。
京町家、夏はかなり快適そうな工夫が随所に見られるお家でした。
そのぶん冬は寒そうですが、冬のしつらえをして寒さに備え、また中庭に入る光で寒さが和らぐのかもしれません。
昔は暖房はあっても冷房はないので、徒然草にある「家の作りやうは、夏をむねとすべし」ということがよく分かるような気がして、とても勉強になりました。
Camera: PENTAX K-3II with SIGMA 17-70mm F2.8-4