革新的な報酬体系のソーシャルメディアとして知られるSteemit。これを支えるブロックチェーンデータベースがSteemです。本記事ではSteemのホワイトペーパーからプロジェクトの概観を読み解くだけでなく、Steemitが社会にもたらす新しい経済圏に関して説明していきます。
Steemはコミュニティに価値のある貢献を提供する人々に、正確で透明性のある報酬を与えることで、ソーシャルメディアとオンラインコミュニティをサポートすることを試みる初の暗号通貨です。解説に入る前に、間違えやすい言葉の定義から確認しましょう。
Steem:プロジェクト自体のことを指します。whitepaperにて概要が説明されているのはこのSteemです。
STEEM:通貨の単位です。Steem内で用いられ、BitcoinやEthreumといった他の通貨とと交換することができるものです。
Steemit:Steemのブロックチェーン上に展開されるアプリケーションの名前です。Steemitの他にもDtubeやSteemMonstersといったサービスがSteemのブロックチェーン上に展開されています。
本記事では、Steem上のサービスの中で最大のユーザー数を誇るdApps「Steemit」について解説していきます。
Steemitはブロックチェーンを用いて広告に依存しない収益構造を作り出したソーシャルメディアです。良い記事を書くこと、良い記事を評価することにインセンティブを与えるような経済圏を作り、インターネット上に価値あるコンテンツが生まれることを支えます。
しかしこのような経済圏を価値あるものとして持続させて行くためには、以下のような解決すべき課題が存在します。
- 正当な評価を行うインセンティブを存在させ、個人の自由行動がコミュニティ全体に貢献するようにする必要がある
- 投機目的のユーザーが増えることによってトークンの価値が不安定になることを防ぐ必要がある
Steemにおいては、STEEM,SP,SBDという3種類のトークンを用いることで、これらの課題を解決しています。Steemitにおいてこれらがどのような関係性を持っているのでしょうか。
3つのトークンの特徴をまとめると以下の通りです。
- STEEM:外部の取引所で他の通貨と交換することができ、Steem上のサービスを利用する目的で購入したり、投機目的で保持したりします。
- SP:Steem Powerを表し、Steemネットワーク上での影響力を高めます。Steemitにおいて、SPを多く保持する人ほど投票に重みが生じます。さらにSPの保持によって利息を受け取ることができます。しかし、SPからSTEEMに変換(Power Downという)するとき、14週間かけて13分割で取引することになります(2018年10月29日現在)。これはSteemitのネットワーク利用者が短期間に大きく増減し、Steemの価格が不安定になることを防ぐ目的があります
- SBD: Steem Dollarsを表し、ドルにペックされた安定した価値を保証するためのトークンです。厳密にはドルの価格と若干の差が生まれることがありますが、SBDの保持による利息の調節などによって0.95ドル~1.05ドルの範囲に収まることを目指しています。
上図のように、Steemitにおけるコンテンツの作成や、ブロックの生成、コンテンツへの評価を通してコミュニティに貢献した人は、SPやSBDとして報酬を受け取ることができます。SPとSBDを受け取る割合はユーザーが自由に設定することが可能で、Steemitのコミュニティの持続的な価値を信じる人であれば、コミュニティ内での権限に繋がるSPを100%で受け取る、といった判断をすることができます。
Steemitは今まで述べてきたようなトークン同士の関係性、インセンティブ設計を築くことで、、コンテンツ作成者、評価者、投資家、ブロック生産者等のプレイヤーをうまく動かすことに成功してきました。しかしその際同時に生まれる課題が存在していました
まず、報酬としてSPやSBDが付与されると述べましたが、これらは新規発行分の通貨によって支払われます。つまり、Steemのコミュニティが成長し続けない限り、通貨の価値は下がり過ぎてしまうのです。発行料は、Steemができた当初は年間100%分新たに通貨が発行される仕組みでしたが、2016年には9.5%、それ以降0.95%になるまで1年に0.95%ずつ減少するように設定されています。コミュニティの成長が通貨の発行に追いついて、通貨の価値とコミュニティの活性化を促進し続けることが今後重要でしょう。
また、コンテンツ内でSPを多く保有する人ほど影響力が大きくなる仕組みは、STEEMをSPへと変換させ、コミュニティに貢献させるインセンティブとして機能していますが、この際ユーザー間でのSPの保有量に大きな差が生じ新規のSteemitコミュニティへの参加意欲を削いでしまうことが考えられます。コミュニティを成長させる上で、今後SPとしてトークンを保有するインセンティブを保ちつつ、新規ユーザーにとって、より価値のある経済圏にすることのバランスが課題取るのではないでしょうか。
ともあれ、ユーザー数100万人を超える数少ないブロックチェーンサービスであるSteemitが、今後のソーシャルメディアの一角を担っていくことに期待が高まります。
Economies2.0の最新情報はこちらから
Economies2.comでこの記事をチェック
参考
https://steem.io/steem-whitepaper.pdf
Economies2.0はトークンエコノミーによる多様な経済圏とブロックチェーンによる権力の自律分散を目指し、未来の経済圏を考察するメディアです。ブロックチェーンに関する本質的な情報を発信していきます。
- ホームページ