ブロックチェーンには、これまで流動性の低かった資産の価値を可視化し、流動性を上げるポテンシャルがあります。そのような資産の一つが不動産です。今回は、現在の不動産業界の持つ問題点を掘り下げ、ブロックチェーンがどのようにそれらを解決していくか、いくつかのユースケースと共に探って行きましょう。
一口に不動産投資と言っても、不動産から収入を得る方法には様々な形態があります。不動産を購入して住居やオフィス、宿泊施設として貸し出して賃貸収入を得る手法や、購入した物件に新たな価値を追加して売り出す手法や、単純に将来性のある物件を購入して価値が上がったときに売却する手法など、多岐に渡ります。
しかし、不動産投資というのは投資の中でも特に敷居の高いものというイメージを持つ人が多くいます。その理由として、以下のような問題点が共通して挙げられます。
- 分割が難しいため、単価が高い
- 取引の手続きが煩雑
- 換金に時間がかかる
- 物件の劣化など、リスクが高い
このような要因から、不動産は資産の中でもとりわけ流動性の低いものとなっています。流動性の低さのために、マーケットが非常に閉鎖的になってしまっています。購入の際は基本的にオリジネーターとの1対1のやりとりであり、また、価格を決定する要因が多様で複雑なため、適正価格がわからないというのが問題となり、この問題のためにさらに参入の障壁が上がってしまうという悪循環に陥ってしまっていました。
90年代後半ににバブルが弾け、地価下落のより不動産所有のリスクの認知が広まりました。
この経済不振により、不動産所有権と管理の分散が求められるようになり、また、バブルが弾けたことによる不良債権を処理するために、不動産を証券化するという動きが生まれました。
流動性向上のために日本では90年代から不動産を証券化する動きが生まれました。そうすることで不動産を分割して単価を下げ、売却しやすくすることを目的としていました。
不動産の証券化には以下のメリットがあります。
- 単価が安くなり、参入の敷居が低くなる
- オフバランス化
- 一部の権利だけを証券化するなど、柔軟なコントロールが可能に
- 全てを売却してしまうわけではないので買い戻しも可能
- 不動産経営のリスクを投資家に分散できる
不動産経営のリスクには以下のようなものがあります。
このように、不動産を証券化することにより流動性をあげることが試みられましたが、流動性は多少向上したものの、手続きの煩雑さから市場がまだまだ閉鎖的なのが現状です。
通常の株式や債券は、企業と銀行の相対関係から価値が決定する上に、証券会社が一切を取り仕切るため、証券化も購入もさほど面倒ではありません。
しかし、不動産となると全く話が変わってきます。
不動産の場合利害関係者が多く、手続きが複雑で手数料も高くつきます。不動産を証券化する場合、証券化したい企業(オリジネーター)の他に、SPV(特別目的事業体)、サービサー企業、信託銀行、アレンジャーである証券会社など、多くのサードパーティを通すことになるのです。
その上、証券化に当たって物件に関する経歴など、各種資料の収集をしなけらばならず、非常に手続きが煩雑です。このような面倒な手続きを全てした上でシミュレートをし、利益を生み出す物件と認められなければ、証券化を却下されることさえもあります。
このような手続きの煩雑さから、証券化によって単価を下げたところで参入の障壁がなかなか下がらず、投資の中でも敷居の高いもの、というポジションを抜け出せないのが現状です。
このような不動産の証券化をしても残ってしまう問題に対し、ブロックチェーンを用いたソリューションが提案されています。
主に、不動産をセキュリティトークン化することでさらにステークを細分化し、交換しやすくし、流動性をあげるようとするものです。
また、物件の情報を改ざん不可能な形でブロックチェーン上に保存すれば、これまで複数の機関に散らばってしまっていた情報が一括管理ができるようになるため、面倒な手続きを一気に簡略化し、手数料も減らすことができます。
例えば、Atlantというプロジェクトでは、不動産をセキュリティトークン化して、独自のDEXに上場させ、ユーザー同士で簡単に取引ができるようにします。
このようにして不動産業界への参入の敷居が下がり、流動性の大幅な向上が目指されています。また、スマートコントラクトにより、トークン保有者への利益分配や、権利関係の透明性も高めます。
さらに、マーケット参加者が増えることできちんと他の資産と同様に市場で相対的な価値がつけられ、適正価格が曖昧であるという問題も改善されます。
また、トークンの上場自体に関しても、ブロックチェーンを用いた公平な審査システムを構築しています。
ConsenSysから生まれたMeridioというプロジェクトは、不動産オーナーが物件をリスティングでき、投資家を募集することのできるクラウドファンディングのような機能をつけました。また、トークンを用いて所有権を細分化することで、賃貸居住者もステークホルダーとなることができ、物件を綺麗に保つインセンティブとする構造を作っています。
このように、ブロックチェーンの分散型データベースとしての性質と、セキュリティトークンの流動性の低かった資産の流動性をあげる性質は、不動産ととても親和性が高いのです。
不動産投資の側面に焦点を当て、不動産のセキュリティトークン化して投資を促す以外にも、不動産の流動性向上を試みたアプローチがいくつもあります。
アメリカ発のRentberryというプロジェクトでは、賃貸契約の非効率性を問題視し、不動産所有者とテナントのスクリーニングの効率を上げ、P2Pの住居レンタルプラットフォームを築くために、ブロックチェーンを用いた分散型の評価システムを構築しています。
他にも、短期レンタル、すなわち宿泊やウィークリーマンションに目をつけ、分散型Airbnbのようなプラットフォームを目指したBee Tokenというプロジェクトもあり、年内にメインネットが公開される予定です。
ブロックチェーンが今後不動産業界にどのような改革をもたらすのか、追っていくのも面白いのではないでしょうか。
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参考
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