ナース3年目の春に、外科病棟から内科病棟に移りました。入った時から、古い建物に、陰湿な不気味さを感じていたんです。嫌な雰囲気の病棟内でしたが、スタッフは皆明るくて、ひょうきんな人ばかりでした。いつの間にか、病棟内の不気味さが気にならなくなりました。
ただ一つ、気になっていたのは、廊下の奥にある、非常口。扉に大きく「解放厳禁」と張り紙がしてあったことです。
でも、日常の忙しさに、その事をすっかり忘れていました。
病棟では、年に2回避難訓練があります。春の避難訓練は6月。私は内科に移動して、2ヶ月が経っていましたが、当日の担当になってしまい、避難経路の確認をしました。その時、誰も避難経路に、その非常口の事を話題にしないのです。
内科病棟は,2階でしたので外階段を使って避難できるようになっているはず。
でも、その非常口を誰も使おうとはしませんでした。
外からは張り紙もなく、鍵さえあれば、入って来るのは自由です。
何故?内側だけが、解放厳禁なのか?
・・・・
ある日の夕方、「その時」は突然にやってきました。
業者の人が外から「荷物を搬入したいが、鍵を忘れたので、内側から開けてください!」と声を掛けられたのです。その場に居合わせた私は、躊躇無く内側から非常扉を開けてしまったのです。
開けた扉の奥には、エレベーター、そして長い廊下が続いていました。
「あれ?」 見覚えのある廊下です。
その先は霊安室に続きます。そして、さらに解剖室に続く廊下でした。
その扉は、内科病棟から霊安室への近道だったのです。
どうして、使われなくなったのか・・・
どうして、内側から「解放厳禁」なのか?
知りたい?
4年前、この扉を通って、霊安室に向かった、数人の医師と看護師は、相次いで不幸な事故に遭い、この病院を去ったそうです。
今は、どこにいるか、行方がわからない・・・
この病院に居たと言う、事実さえ消えてしまった・・・
呪われたコインもあるみたいです。