みなさん、トヨタが富士山麓の工場跡地を利用して建設しようとしている未来実験都市"Woven City"ってお聞きになったことがあるだろうか。自動運転、connected carなどの最新技術を、実際に人が居住する「街」を作って実証実験しようという、野心的なプロジェクトだ。詳細は下記サイトをご覧いただきたい。
さて、"woven"とは、もちろん、weaveの過去分詞である。道路が編み込まれた街というのが元のコンセプトらしい。もちろん、単に道がいっぱい交差して車や人が通るというだけでなく、「情報も行き交う」というような意味合いを持たせている(間違っていたらお詫びします)。
素晴らしいプロジェクトだと思う。さすが世界のトヨタ。ただ、英語を細々と飯のタネにしている身から一言言わせてほしい。
日本語で「ウーブン・シティ」はあかんやろ。
weave-wove-wovenは、中学校で習う不規則活用動詞の典型例。みんな、「ウィーブ」「ウォーブ」「ウォーブン」と練習しなかった?
もちろん、wovenの母音は二重母音(オウ)なので、本当は「ウォーブン」もよくない。カタカナで「ウォウヴン」と書いてそのまま読めば、英語の発音に極めて近い発音ができるのに。カタカナを読めば通用する単語はそんなに多くない。なんてもったいない。
どうしてもこの表記がカタカナとして違和感があるというのであれば、せめて「ウォーヴン」、百歩譲っても「ウォーブン」だろう。どっから「ウーブン」が出てくるのか?それじゃあ、wokenは「ウークン」、tokenは「トゥークン」?。noteはさしずめ「ヌート」なのか。
そこでトヨタに聞いてみた。お客様相談センターからすぐに返答がきた。このあたりはさすが超一流企業。対応が早い。
で、答えは、
"お問合せの「Woven city」は、新聞やニュースなどになるため、表記上、見る・話す・読むなどしやすくするため、英語の発音とは異なる「ウーブン」と表記しています。
しかしながら、英語と異なる表記であるとのご指摘は、仰る通りでございます。"
ということだった。
「ウーブン」が「ウォーブン」より見る・話す・読むなどしやすい?そもそもどう考えてもそうは思えないのだが、それよりも、「そのほうがわかりやすければ適当に変えちゃえ」という発想がいただけない。何の証拠もないが、このあたりは広告代理店のノリが起源ではないかとにらんでいる。
われわれは子どもたちに、やれ四技能を習得せよだの、民間試験を受けろだのと言って、「話せる英語」を目指して躍起になっているのではないのか?少し英語ができる(ビジネスで使えるという意味)人なら常識だと思うが、「カタカナ英語」は、日本人の英語習得への大きな障害の一つなのである。
「ストレージ」だとか「ワーニング」だとか普段平気で使っている人は、まず間違いなく、通じる英語を話せないのだ。なんでトヨタともあろうものが、余計なへんてこりんカタカナ英語を広めるのだろう。
2021年1月には、なんと、ウーブン・プラネット・グループという企業体が発足し、持ち株会社のウーブン・プラネット・ホールディングス(ここは、「ホールディングズ」にしてほしかったが)の下に、ウーブン・コア、ウーブン・アルファ、ウーブン・キャピタルの各社がぶら下がっているらしい。
これだけ「ウーブン」が増殖してしまい、法人登記もこれでしているのだろうから、もう「どうにも止まらない」状態か。
2021年1月にCES2020で、豊田章男社長が、"Woven City"プロジェクトを英語でかっこよく発表している(冒頭のサイトに動画あり)。そこで、社長自身が、「ウォーブン」と発音している(二重母音が弱く、「ウォウヴン」になっていないのが残念だが)。「ウーブン」の表記を豊田社長はどうお考えなのだろうか。