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インドで救急車に運ばれた話

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  • かんたろー
  • 2020/01/10 16:30

去年の春、1人でインドの北部を2週間散歩していたときの、ある日の話。

 

1章 熱中症

2章 ただの部屋

3章 救急車

4章 病院

5章 注射?薬物?

6章 治療費は?

 

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1章 熱中症

インドで救急車に運ばれた。熱中症で身体が動かなくなって病院に連れてかれた。

熱中症になった原因は、もともと体調を崩していたのと、20時間もエアコンなしの蒸し暑い寝台電車の上段にいたから。

長い電車旅を終え、ぼくは駅のホームを歩いていたら急に倒れてしまった。意識がなくなったというよりは、じぶんの身体を支えられなくなって「あ〜。もうムリだ〜。立ってられへん。」という感じで倒れたので頭とかは打ってない。なんとなく覚えている。

人で溢れかえる駅のホームで倒れたぼくの周りには、5人くらい人が集まった。手先足先が痺れていて自力ではどうしようもなかったので、「だれか助けてくれ〜」と願った。

そんななか、ぼくのちかくで電話をしながらぼくに国籍とか名前とかを聞いてくるひとがいた。

「あー、これ、病院に運ばれるやつやん。保険が効かへんから治療費めちゃめちゃ高いんだろうな〜」という心配をしていた記憶はある。

しかし、しばらくしても治療班みたいなのが来る気配はなかった。そして、寝転がっている日本人のまわりを数人のインド人男性が囲っているというナゾの状態がつづいた。

数分たつと、新たにインド人男性2人がぼくのところに現れた。そして、無理やり身体を起こされ両肩を抱えられ、駅の控え室みたいなところに運ばれた。身体が言うことを聞かないのにぼくは半強制的に歩かされた。「タンカーとかないんかよ!」とかおもった。死ぬかとおもった。

2章 ただの部屋

案内されたのは、救護室とかではなくただの部屋だった。

もし日本で熱中症になっていたら、「氷や冷えたタオルで手首や頭を冷やす」「涼しい部屋ポカリスウェットを飲ます」などといった対処されていただろう。

しかし、インドではそういう対処が全くなかった。彼らの中に「熱中症」という概念が浸透していないのだろうか。

ぼくは、とにかく薬とポカリがほしかった。「薬とポカリを買ってきてくれ」と何度も伝えた。「オッケー、オッケー」と言われたが、買ってきてもらうことはなかった。

しばらくすると、駅の人に「病院に連れていく」と言われ、再び見知らぬ男2人に両肩を抱えてもらい移動した。おんぶでも担架でもないので、すり足で進む。死ぬかとおもった。

3章 救急車

駅を出ると、向かい側から救急車が来た。なぜか、サイレンが鳴っていないうえに赤ランプすら点灯していない救急車だった。ナゾすぎた。

さらに、ナゾなことがあった。ぼくは患者なので当然救急車の後部座席にあるベッドに横たわる感じで運ばれるのだろうとおもっていた。しかし、どうやら違うらしい。ぼくの席は助手席だった。

「なんでだよ!」とおもって後ろをふりむくと、患者が本来寝転ぶであろうベッドには、すでに男6人くらい乗っていた。大きな座席として使われていたのだ。元気なときだったらバチギレしていただろうけど、ぼくは怒る気力もなく、ただただうなだれていた。死ぬかとおもった。

4章 病院

数分がたち病院に到着すると、薄暗い病室内のベッドに案内されて、なぜか10分くらい放置された。まわりを見渡しても白衣を着た人はどこにもいなかった。病室の中にいる人はみんな私服。

あとで知ったのだが、この日は土曜日だったため、病院は営業していなかったらしい。なぜ、患者を招いたのだ。

病室に案内されたものの、だれもぼくのことを診てくれないので、「看病する気ないのかな」とおもっていたら、ぼくのカバンの中のパスポートやら財布の中身やら、やたらとぼくのことを調べ始めた。

ぼくはこのとき、看病する気のない彼らのことを完全に疑っていた。国から治療の許可を得て、正式に高額な医療費でも請求してくるのかな、とか考えていた。

とにかく彼らは看病より調査ってかんじだった。死ぬかとおもった。

しばらくすると、調査がひと段落したのか、冷水やチャイ(インドの飲み物)を差し入れてくれるようになった。

でも、冷水とかじゃなく薬がほしかった。解熱剤と下痢止めがほしかった。

ぼくが「薬がほしい」と何回も伝え、お金を渡すと、やっとなんか買ってきてくれた。お釣りもちゃんと返された。

と、おもったら、買ってきたのはまさかの市販の注射器だった。

5章 注射?薬物?

「おい、まじかよ!素人に注射を打たれるの?」

私服の男2人に、袖をまくられ、消毒もなしで、注射する準備が整った。

「ああ、これがもし薬品じゃなくて薬物やったらおれの人生終わりやな。」とはおもったものの、

「はやくこの身体キツいの終わってくれ!」とおもったので、彼らに身を任せた。

すると、彼らは慣れた手つきで、ぼくの右腕に注射を。全然痛くない。

安心した。「めちゃめちゃ注射うまいやん!」とおもってたら、つぎはぼくの右おしりに注射を打つと伝えられた。

「なぜお尻?」とおもった。かなりナゾだった。

しかし、カラダがキツい状態をどうにかしたかったので再び彼らに身を任せた。

そして、右お尻に注射された。すると、急に右太ももが重たくなった。

「うわ!なにこれ!」っておもったときには、すでに筋肉がつったみたいになって動けない。

「もしかしたら、ぼくの身体の自由を奪っていって最終的に高額な医療費を請求するという作戦なのでは?」とか、変な想像していた。それくらいしかできることがなかった。

「あー、おれの身体どうなるんやろー」とかおもったりおわなかったりして15分ほど過ぎたときに、ふと気づいた。

「身体が軽くなってる!しんどくない!」まさかまさかの、熱と腹痛まで劇的になくなっていた。

6章 治療費は?

正直びっくりした。あやしいなと疑っていたあの注射が、まさかこんなに効果あったのかと。

「おっさんたち、ありがとう。」本気でそうおもった。さらに、しばらくすると立ち上がって歩けるくらいにまで元気になった。

彼らに「もう元気になった」と伝え、おそるおそる治療費はいくらかを聞いてみた。

すると、「治療費は無料だ」と。

「どういうこと?」

理由を聞いてみた。しかし、訛りの強い英語でよくわからない。

ただ、「〜の誕生日だ」の部分だけ聞き取れた。

「いや、だれの誕生日だよ!ありがとう!」とおもい、ひたすらお礼をいい、彼らとお別れした。

 

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25歳。関学卒。現在は、YouTube動画投稿とnote記事投稿とウーバーイーツの配達をやってます。

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