フローラルなアロマの良い香りを嗅ぐとリラックスしてよく眠れたり、柑橘系の香りを嗅ぎながら学習をすると集中力がアップしたりと、香りと体との間には密接な関係がると言われています。
これには、香りが視床下部に直接働きかけることで自律神経のバランスが整い、副交感神経が優位になるなどのメカニズムがあるとされていますが、まだその全容は明らかになっていません。
今回紹介する研究はそんな香りと脳に関する内容です。
爽快感の強いメンソール系の香りを嗅ぐことは認知機能の向上に役立ち、認知症の予防策の一つになり得るかもしれません。
参考記事)
・Mouse Study Reveals Unexpected Connection Between Menthol And Alzheimer's(2023/10/05)
参考研究)
スペインのナバラ大学で行われた研究では、メンソールを一定期間嗅いだマウスは、アルツハイマー病による認知機能の低下を防いだことが報告されています。
この研究で注目されたのは、インターロイキン1β(IL-1β)という物質です。
インターロイキン1βは、微生物感染、ストレスなどの刺激により、種々の細胞から産生され、免疫応答、炎症反応、造血、内分泌、脳神経系細胞など作用する物質です。
強く炎症を引き起こす原因物質のひとつ(炎症誘発性サイトカイン)であり、適切に調節されていない場合、体に様々な害が現れます。
実験ではアルツハイマーの症状を起こすように遺伝子操作されたマウスと通常のマウスを、それぞれ6ヶ月間メンソールに曝しました。
その結果、アルツハイマー病マウスの認知機能低下を防いだだけでなく、通常のマウスの認知機能の改善も見られる結果となりました。
メントールの暴露は、マウスの認知能力と記憶能力の劣化を止めるのに十分であり、脳内のIL-1βも安全なレベルまで引き下げたようです。
過去の研究では、嗅覚と免疫、中枢神経の間には、複雑に相互しあうネットワークが構築されいることが示されています。
研究者らは、「特定の匂いがアルツハイマー病の治療として使用できる可能性を示している」と述べています。
どの臭いがどの免疫系の反応を引き起こすかを把握することができれば、それらを利用して病気の予防や改善をすることができ、今後の研究に期待が持たれています。
この研究は“frontiers”にて詳細を確認することができます。