睡眠と健康とは切っても切れない関係があるということは、生活の中で身に染みている方も多いかと思います。
寝不足の次の日には、なんとなく身体が重かったり頭がぼーっとしたりと、その影響は仕事だけでなく遊びのパフォーマンスにも大きく関わってきます。
そう言った寝不足のストレスは、生活習慣病にもつながるとして、睡眠の質を上げることを推奨する研究者も多くいます。
今回も、そんな睡眠と病気に関する研究がテーマです。
どうやら睡眠時間を十分に取れない人は、2型糖尿病のリスクが高い傾向にあるようです。
参考記事)
・Scientists Identify a Link Between Sleep And Type 2 Diabetes Risk(2024/04/21)
参考研究)
・Habitual Short Sleep Duration, Diet, and Development of Type 2 Diabetes in Adults(2024/03/05)
シドニー大学の研究から、一日に6時間未満しか睡眠をとらない人は、 2型糖尿病のリスクが高い傾向にあることが発表されました。
研究では、英国のバイオバンクに登録されている247,867人の成人を対象に大規模なデータ分析が行われました。
睡眠時間の基準として、7〜8時間を平均的な睡眠時間とし、軽度(6時間)、中程度(5時間)、極端(3〜4時間)の3つのカテゴリーに分類されました。
研究者たちは、睡眠のデータと併せて食事内容についても分析を行いました。
対象者のうち約3.2%がフォローアップ期間中に2型糖尿病と診断されました。
食事が健康的である場合、糖尿病のリスクは低下傾向にあることが示されましたが、健康的な食事を行ったにもかかわらず、1日6時間未満の睡眠しか行わなかった場合は糖尿病のリスク増加が見られました。
また、7〜8時間の睡眠をとった人と比べると、睡眠時間が5時間の場合は2型糖尿病を発症するリスクが16%高く、3〜4時間寝た人のリスクは41%高いことが示されました。
単眠が糖尿病のリスクを高める理由として、体内のホルモン分泌の異常が考えられています。
2型糖尿病は、膵臓から生産されるインシュリン(インスリン)と呼ばれるホルモンが正常に分泌されないことが主な原因とされています。
食事によって血糖値が上がる(血液内の糖の割合が増える)と、血液内の糖を細胞に取り込むためにインシュリンが分泌されます。
インシュリンが分泌されると、GLUT4と呼ばれる細胞に穴を開けるタンパク質が反応し、その穴からグルコース(糖)を取り込んで血糖値を下げます。
もしインシュリンが分泌されなければ、血液内の糖の割合が多くなり、活性酸素など生み出すことで、細胞内に炎症が起きてしまいます。
特に指先や目などの血管が細かく張り巡らされた部分は炎症が顕著に現れ、炎症を抑えるために白血球などの抗炎症機能が働いたり、LDLなどの悪玉の脂肪分が溜まったりします。
その結果として血管が詰まり、指先、足先の壊死や失明などを起こしてしまいます。
これが糖尿病に多く見られる症状です。
過去の研究では、睡眠不足の人々は、血液中の炎症マーカーと遊離脂肪酸が増加し、インシュリン抵抗性(血糖値が高いことが維持されることで、インシュリンの分泌機能がエラーを起こし、正常に分泌されない状態)につながることが示されています。
さらに、十分に眠らない人や、睡眠のパターンが不規則な人(シフトワーカーなど)は、概日リズムとして知られる体の自然なリズムの混乱をきたします。
概日リズムの混乱により、コルチゾール、グルカゴンなどのホルモンの放出を妨げる可能性があり、これらのホルモンも血糖値のバランスをとる上で重要とされるものです。
こういったことから、6時間未満の睡眠をとる人は2型糖尿病のリスクの増加に繋がる可能性があると考えられます。
この研究は主に8時間以下の睡眠をとる人にフォーカスされていますが、睡眠を長く取りすぎる人も2型糖尿病のリスクの増加の危険性があります。
過去の研究では、睡眠時間と2型糖尿病のリスクとの間にU字型の相関関係が示されています。
毎日7〜8時間の睡眠をとることが最も低いリスクく、7時間未満、または8時間以上睡眠をとった場合はリスクが増加する傾向にあることが示されています。
詰まるところ、7〜8時間睡眠を基本として、健康的な食事と運動を心掛けることが生活習慣病の予防につながるということですね。
気持ちよく寝るためにはやはり運動……。
トレーニングやウォーキングなどを駆使しながら、今後も質の良い睡眠を取れるよう意識していきたいと思います。
この研究は、JAMANetworkにて詳細を確認することができます。