夏の代名詞でもあり、忌み嫌われる昆虫と言えば……、蚊ですね……。
隙あらば生き血を啜りにくる困った生き物です。
人間は、蚊帳などの物理的な手段やハーブなど植物が発する揮発性の物質などを巧み使って蚊を遠ざけてきました。
実は、普段体を洗うボディーソープなども、そういった蚊を寄せ付けたり遠ざける効果に違いがあるようです。
今回はそんな蚊を遠ざける研究の一つの紹介です。
参考研究)
・Soap application alters mosquito-host interactions(2023/05)
蚊は、植物や動物から放出される揮発性有機化合物(VOC)を利用して栄養分を探します。
2013年5月にバージニア工科大学の病理生物学科によって発表された研究結果では、ボディーソープの香りの違いによって蚊の集まり度合いも変わってくることが分かりました。
実験では、
Native(ネイティブ ココナッツ)
Dial(ダイアル マルラ オイル)
Dove(ダヴ ディープ モイスチャー)
Simple Truth(シンプル トゥルース)
の4種類のボディソープで洗った服の袖と、ボディソープで洗っていない人間の皮膚の成分が付着した服の袖に、蚊がどれだけ集まってくるのかを調べました。
対象とした蚊のサンプルは、ヤブカの1種類であるネッタイシマカでした。(日本にいる近い種にヒトスジシマカがいます)
実験から分かったことは、蚊を最も呼び寄せなかったのは最初に述べたネイティブココナッツの香りを持つボディソープでした。
興味深かったのは、洗っていない人間の皮膚よりも、その他のボディーソープの方が蚊を呼び寄せたということです。
Dial、Dove、Simple Truthのいずれも、花の香りがするボディーソープです。
このことから蚊は、洗っていない人間の皮膚の匂いよりも、花の香りを好む傾向があることが示唆されています。
植物からは、テルペン、エステル、アルデヒド、アルコール、酸など蚊が感知できる様々な有機化合物(VOC)が放出されています。
本研究では、石鹸などの成分によって、人の体臭が大きく変化し、植物由来の化学物質の量が増加することが分かりました。
これによって、蚊を引き寄せる度合いが変化したことが示されています。
なぜココナッツの香りのボディソープが蚊を寄せ付けなかったのかについてはさらなる研究が必要です。
しかし、花の香りのするボディーソープは通常の人間の皮膚よりも蚊を寄せ付ける可能性があることが判明したことで、今後の石鹸やボディーソープを選ぶ際の基準にできると思います。
・花の香りのボディソープは蚊がよって来やすい
・蚊は植物由来の有機化合物を好む
・人の体臭もボディーソープによって、植物由来の化学物質優位になる
・蚊寄ってくることが気になる場合、花の香りのボディソープは避けた方がいいかもしれない
蚊は本来、花の蜜などを栄養として生活している昆虫のため、この研究結果も当然と言えば当然かもしれません。
人間の血を吸うのは、産卵期に必要となるタンパク質を摂取する時であり、オスの蚊は全く血を吸わないことでも知られています。
産卵期には、動物の呼気に含まれる二酸化炭素などの物質に敏感になったりもすることも分かっているため、その研究結果が全てではない可能性がありますが、ボディーソープから変えることは手軽にできる蚊対策になると思います。