朝早くから体や頭を動かすと、お昼を過ぎたころには眠たくなってくる……。
人によってはお昼寝をするという習慣がある人もいるのではないでしょうか?
短時間のお昼寝はストレスの軽減やリラックス効果のみならず、眠気を吹き飛ばして学習効率や作業効率がアップするなど大きなメリットがあることで知られています。
今回はそんなお昼寝に関する研究についてのお話。
お昼寝をする習慣がある人は、脳の容積や若々しさという点で有利なようです。
参考記事)
・Regular Short Naps Could Be The Easiest Way to Reduce The Risk of Dementia(2023/06/22)
参考研究)
モンテビデオ共和国大学、ロンドン大学らの研究によって、定期的な短時間の昼寝は、脳の容量と若々しさが保たれることが示唆されました。
研究では、40歳から60歳までの37万8932人のデータを分析し、遺伝的に昼寝の多い人たちと、昼寝を促す遺伝子を持たない人達を比べ、認知機能にどのような違いがあるのかを調べました。
その結果、昼寝をする人はそうてない人に比べて脳が大きく、2.6~6.5歳ほど若い状態であることが分かりました。
University College Londonの神経科学者ヴァレンティーナ・パズ氏は、「私達の研究は習慣的な昼寝と脳の総体積の大きさとの間に因果関係があることを示しています」と述べています。
65歳以上の成人を対象とした過去の研究では、昼寝は短期的な認知能力を向上させ、認知テストでは昼寝をしている人の方がそうでない人より優れていることが示唆されています。
今回の研究では、適切な昼寝の長さは記録されていませんが、先行研究では30分以内の昼寝が最適であるとされています。
研究チームは、「高齢者のほぼ3分の1が昼寝をしています。脳容積の減少は高齢者でよくみられるにも関わらず、昼寝と脳容積との関係はよく分かっていません」と述べています。
この論文の著者の一人は、自己申告による昼寝に関するイギリス(UK)バイオバンクのデータと手首に装着したセンサーを用いて身体活動の測定値を記録しました。
この研究での重要な点は、潜在的なバイアスを避けるためにデータを調整したことです。
遺伝子変異を持つ個人について健康と認知がどのように関係するかを分析しましたが、日中の過度の眠気に関連する遺伝子変異を持つ人は除外しました。
入手した35,080人の遺伝子データと脳スキャンデータを用いて、日中の規則的な眠気の傾向に関連する92のDNAのセクションを調べ、メンデルランダム化を用いて解析を行いました。
メンデルランダム化を用いて健康に影響がある遺伝子を調べることで、研究観察で影響を及ぼした可能性が高い遺伝子や要素を同定することができます。
自己申告では57%の人が日中の昼寝を“全くしない”、あるいは“ほとんどしない”と答えました。
38%の人が“ときどきする”、5%の人が“たいていする”と答えました。
しかし、いつも昼寝をする人は、高齢、喫煙、糖尿病、心血管疾患など健康に影響を及ぼす可能性の高い要因を持っていました。
メンデルランダム化による分析では、昼寝と健康との関係に影響を及ぼす可能性のある因子を回避することができ出生時に設定された遺伝子を調べることができます。
パズ氏は、「この研究は、習慣的な昼寝と脳の認知能力や構造との因果関係を解明しようとした初めての研究です」と述べています。
今後の研究では、昼寝と他の認知機能の維持、向上などをどのように効率的に再現できるかを模索していくとしています。
・昼寝が脳の健康と因果関係があるのかどうかは、いまだ解明されていない
・研究では、昼寝が認知機能の因果関係について研究した
・その結果、習慣的な昼寝と脳の総容積の増大との間に緩やかな因果関係があることが分かった
この研究は、遺伝的に昼寝をしやすい人を対象にしていますが、昼寝を習慣化することにメリットがあること自体は変わりなさそうですね。
コーヒーなどで無理やり眠気を取り払うより、人間の生理的に必要な欲求に身を任せるのもありということだと思います。
仕事や勉強中にカフェインを摂取して眠気覚ましにしている人も、ノンカフェインの飲み物に変えて昼寝の習慣をつけるのもいいかもしれませんね。