今年の夏も猛暑ですね。
外に出るのも億劫になるほどの気温です。
雲がかかればそれはそれで湿度が高いという八方塞がり。
冷房器具なしでこれに耐えることは果たして可能なのでしょうか……。
今回はそんな温度と人体に関する研究についてのお話。
これまで考えられてきた気温や湿度は、実際はもっと低いことが示されました。
参考記事)
・Scientists Identify The Maximum Heat Limit The Human Body Can Take(2023/08/12)
参考研究)
ケーララ大学の研究者たちは、人体が耐えられる熱や湿度の組み合わせを特定したと発表しました。
健康な若者であれば、乾燥した空気の中で摂氏35度の温度に6時間は耐えられるとされ、湿度が100%となると死に至ると考えられてきました。
今回の研究では、その限界値はもっと低い可能性があることが分かりました。
汗をかくことは、体温を下げるための主な手段です。
しかし、極端な暑さになると発汗が行われず、最終的には熱射病や臓器不全によって死に至ることが分かっています。
発汗が行なわれる限界値は必ずしもその温度や湿度に依存するのではなく、年齢や健康状態、その他社会的、経済的要因によって閾値が異なると専門家は言っています。
研究ではこの限界点を「湿球温度」と呼び、危険な値としています。
危険な湿度や温度を生み出すことがなかったヨーロッパの諸地域では、昨年の夏の暑さが原因で61,000人以上が死亡したと推定されています。
地球の気温が上昇するにつれて、先月は観測史上最も暑い月となりましたが、それに伴い湿球温度に達することが頻繁になると科学者は述べています。
NASAジェット推進研究所のコリン・レイモンド氏によると、この湿球現象(湿球温度に達すること)は、過去40年間で少なくとも2倍になっており、この増加は気候変動による深刻な問題だと警鐘を鳴らしています。
レイモンド氏の研究では、もし世界が工業化以前のレベルより2.5度温暖化すれば、今後10年の間に世界中のいくつかの地点で湿球温度(35度)を定期的に超えるようになると予測しています。
現在では熱と湿度の測定値を用いて計算されることが多いですが、湿球温度は本来、温度計の上に濡れた布を置き、それを空気に晒すことで測定されていました。
これにより、布からどれだけ早く水分が蒸発するかを測定することができます。
理論上の人間の生存限界である湿球温度35度は、乾熱35度、湿度100%、つまり湿度50%で46度を表しています。
この限界を検証するため、アメリカのペンシルベニア州立大学の研究者たちはヒートチャンバー内で若くて健康な人の体幹温度を測定しました。
その結果、参加者の体温上昇を止められなくなる“臨海環境限界”に達したのは湿球温度が30.6度であり、これまで指摘されていた35度はるかにし下回っていました。
研究チームのダニエル・ヴェチェリオ氏はAFP通信の取材に対し、極めて危険な体幹温度に達するまではおよそ5時間から7時間かかるかとを推定していると述べています。
南アジアの湿球温度に関する研究を発表したインドの研究者ジョン・モンテイロ氏も、この地域の湿球温度は35度のしきい値よりもかなり低いと述べています。
体温調節がうまくできない小さな子どもや、汗腺の少ない高齢者などは大きなリスクにさらされます。
実際、昨年の夏にヨーロッパで発生した熱中症による死者の90%近くが60歳以上の高齢者でした。
その他、気温の高い屋外で働かなければならない人や自由にトイレに行けない人(その結果脱水症状に陥る)など、気温に注意が必要な人もいます。
レイモンド氏は、「気候変動がもたらす多くの影響同様、最も被害を受けるのは極端な気候変動から身を守ることができない人々である」と述べています。
日本でも2000年以前と以降では、明らかに熱中症による死亡者数が増加していることが分かります。
電気代の高騰でエアコンなどの使用をためらう人もいる中、気温は日に日に厳しさを増してきます。
湿度の高い日本においては、周囲の温度には更に警戒が必要ですね。
あのしつこい蚊すら葉の裏に隠れて出てこない程の気温です。
早くこの猛暑日が去ってくれることを願います。