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腸の炎症がアルツハイマー病に与える影響を再び確認

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  • 2024/11/03 15:03

近年、様々な研究によって腸と脳の相関性が明らかになってきました。

 

腸には数兆の微生物が生息し、これらの微生物は消化や免疫、さらには神経伝達物質の生成やストレス応答などの神経機能にも関与しています。

 

その中でも長年の問題となっているのが、アルツハイマー病です。

 

高齢者に多く発症する進行性の神経変性疾患で、記憶力の低下や認知機能の低下、最終的には人格や行動にも影響を及ぼします。

 

研究者たちは病気の原因を解明し、効果的な治療法を見つけるために多くの研究を行っていますが、その全容は明らかになっていません。

 

最近の研究では、脳内の神経炎症やアミロイドプラークの形成に着目するだけでなく、体の別の部分である「腸」がこの病気と密接に関わっている可能性が示されています。

 

今回はそんな腸とアルツハイマー病の関係についての研究記事です。

 

参考記事)

Gut Inflammation Link to Alzheimer's Disease Confirmed Yet Again(2024/11/02)

 

参考研究)

Gut inflammation associated with age and Alzheimer’s disease pathology: a human cohort study(2023/11/14)

The relationship between Alzheimer’s disease and intestinal microflora structure and inflammatory factors(2022/11/09)

 

  

研究内容と結果

Content image

  

ウィスコンシン大学の心理学者バーバラ・ベンドリン博士らが行った2023年の研究では、アルツハイマー病の患者が腸内により多くの炎症を持っていることが確認されました。

 

この研究では、アルツハイマー病予防のためのコホート研究に参加している125人の便サンプルから「便中カルプロテクチン」という炎症の指標を測定しました。

 

カルプロテクチンは腸の炎症反応を示す重要な指標であり、数値が高いほど炎症が激しいことを意味します。

 

調査の結果、アルツハイマー病患者の腸内カルプロテクチンレベルは、年齢に関係なく健常者よりも高いことが確認されました。

 

さらに、脳内にアミロイドプラークが多い参加者ほど、便中のカルプロテクチン値も高く、記憶力テストのスコアも低いことがわかりました。

 

また、認知症の診断を受けていない人でも、カルプロテクチンが高い人は記憶力に問題が生じる傾向が見られました。

 

このことから、腸内炎症がアルツハイマー病の初期段階から影響を及ぼしている可能性が浮かび上がります。

 

 

腸内炎症がもたらす全身への影響

Content image

  

ウィスコンシン大学の病理学者であるマーゴ・ヘストン氏ら研究チームは、腸内細菌叢の変化が全身に慢性的な炎症を引き起こし、最終的に脳へも悪影響を及ぼす可能性があると考えています。

 

腸の炎症が増加すると、血液脳関門(血流と脳を隔てるバリア)が弱まり、炎症分子や毒素が脳に侵入しやすくなります。

 

このような全身性の慢性炎症は、神経細胞に対する徐々に進行する損傷や神経変性を引き起こす原因になると考えられています。

 

同大学の細菌学者フェデリコ・レイ博士は「腸の透過性が高まると、炎症に関わる分子や毒素が血流に入り込む可能性が増加し、これが全身に慢性の炎症を引き起こす。この全身炎症が脳内でも神経の損傷や神経炎症を促進し、結果としてアルツハイマー病の進行を早めるかもしれない」と説明しています。

 

 

今後の研究と展望

研究者たちは現在、腸内炎症と食事との関係についても研究を進めています。

 

特に、食事によって引き起こされる炎症がアルツハイマー病の発症に関与するかどうかを検証するため、マウスを用いた実験が行われています。

 

特定の食品が腸内炎症を増加させ、それが脳に影響を与える可能性があると考えられているため、食事療法がアルツハイマー病の予防策として有効であるかどうかを調べることが目的です。

 

アルツハイマー病の予防と治療に関しては、数十年にわたる研究が行われているものの、いまだに根本的な解決策は見つかっていません。

 

しかし、腸内環境と脳の相関関係が明らかになってきたことで、腸内環境を調整することがアルツハイマー病の新たな治療法の開発に繋がる可能性があります。

 

 

まとめ

・腸内の炎症は、アルツハイマー病のリスクを高める可能性がある

・腸と脳のバリア機能の関係が明らかになりつつあり、腸内細菌叢の変化が全身性の炎症を引き起こし、血液脳関門を損なう可能性が示唆されている

・今後の研究では、「食事による腸内環境の改善とアルツハイマー病」との関係を明らかにすることが期待されている

 

 

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