ファスティングといえば、健康習慣の一つとして近年よく耳にするようになりました。
胃に物を入れないことで消化活動抑え、内臓を休ませたり、長寿遺伝を活性化できると考えられています。
国立老化研究所やウィスコンシン大学が行った過去の研究でも、食事を制限したアカゲザルは加齢関連疾患(がん・心血管疾患・糖代謝異常)による死亡率が低下したことが有名です。
正直なところ人間でも同様に効果があるかは分かりませんが、体を壊さない程度に断食をすることは、自分の食生活の見直しや、余計な物を体に入れないことによる体調の変化を知るうえで良いことだと思います。
今回は、そんな断続的な食事制限(ファスティング)についての研究を紹介します。
参考記事)
・Intermittent Fasting Seems to Result in Dynamic Changes to The Human Brain(2023/12/27)
参考研究)
・Dynamical alterations of brain function and gut microbiome in weight loss(2023/12/20)
中国河南省人民病院らの研究から、断続的な断食は腸と脳の両方に大きな変化をもたらし、健康的な体重を維持するための新しい選択肢となる可能性があると公表されました。
研究では、肥満に分類された25人のボランティアを62日間にわたって研究し、その間、カロリー摂取量と断食の管理を含むエネルギー制限(IER:intermittent energy restriction)プログラムに参加しました。
【IERの内容】
・フェーズ1(計4日間)
被験者はカロリーや食品の種類に制限のない通常の食事をとる
・フェーズ2(計32日間)
通常のカロリー摂取量の2/3(8日間)
1/2(8日間)
1/3(8日間)
1/4(8日間)
フェーズ3(計30日間)
絶食する日を作る
ただし隔日でカロリー制限食(男性は1日600キロカロリー、女性は1日500キロカロリー)
研究プログラムの結果、参加者は平均で7.6キログラムまたは体重の7.8%の体重を減らしただけでなく、脳の肥満関連領域の活動や腸内細菌の変化が見られました。
国立老年病臨床研究センターの健康研究者Qiang Zengは、「IERダイエットが人間の脳と腸のマイクロバイオーム(細菌叢)の関係性を変えることを示している」と述べています。
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって脳活動をスキャンしたところ、食欲の調節において重要である“下前頭眼窩回”の領域に変化があることが分かりました。
さらに、便サンプルと血液測定によって分析された腸内細菌叢の変化は、特定の脳領域に関連していることが分かりました。
例えば、腸内バクテリアのコプロコッカス(Coprococcus)や、ユウバクテリウム・ハリイ(Eubacterium hallii)の増減が、食物摂取に関しする私たちの意志と実行に関与する領域である左下前頭軌道回の活動も関連していました。
マイクロバイオームは、神経伝達物質と神経毒素を生成し、神経と血液循環を介して脳にアクセスすることができます。
その結果、脳は食事をコントロールし、その食事からの得られた栄養素によって腸内微生物叢の組成が変わっていくのです。
中国国立老年医学センターの医師Xiaoning Wang氏は、「腸内微生物叢は、脳と双方向の通信を行っていると考えられる」と述べています。
現在、世界中で10億人以上が肥満であると考えられており、がんから心臓病まで、さまざまな健康問題のリスクが高まっています。
脳と腸が互いにどのように依存しているかを解明することは、肥満を効果的に予防し、それらからくる病気の発生に大きな違いを生む可能性があります。
現時点では、何がこれらの変化を引き起こすのか、または腸が脳にどう影響を与えているのかは明らかではありません。
しかし、過去の研究でもアルツハイマー病と腸内細菌生物が遺伝的相関性が分かっているように、腸と脳が密接に関連することは明白です。
食事の制限によって腸をコントロールすることは、脳の特定の領域を治療する方法のひとつになるかもしれません。
この研究は米国の科学研究サイトFrontiersにて確認することができます。