カンブリア紀以降に生物が多様性を獲得していった要因として、光を感知するようになったことが考えられています。
今では地球上の多くの生物が光を頼りに生活しています。
一方、深海の生物や終始暗闇で生活するような生態系で育った生物は、光を頼らずに生きることができます。
今回紹介する“ブラインド・ケーブフィッシュ”もそんな盲目の生物の一つです。
目が退化してから長いとはいえ、細胞レベルでは光を感知するシステムを備えているようです。
参考記事)
・This Blind Fish Lives in Darkness, But Somehow It Can Still Perceive Light(2023/07/17)
参考研究)
・https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2023.0981(2023/07/12)
・Insulin resistance in cavefish as an adaptation to a nutrient-limited environment(2018/03/12)
メキシコの洞窟に生息する盲目の魚は、光の届かない深い暗闇の中でも光を感じることができます。
洞窟魚は体内サイクルに頼っているようには見えず、ほとんど睡眠もとらないものもいます。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの海洋生物学者インガ・スタインダル氏らは、洞窟行がまだ周期的な時間調節が可能かどうかを確認することにしました。
地球上のほとんどの動物には、サーカーディアンリズムという体内時計が備わっています。
サーディアンリズムは、毎日の睡眠サイクルや食事(空腹)のサイクルなど、私たちの行動を左右するさまざまな生物学的周期を司っています。
メキシカン・ブラインド・ケーブフィッシュは、30以上の孤立した洞窟の中に住んでおり、それぞれ独自に暗闇に適用しています。
彼らの体は振動に非常に敏感で、視力が限られているか完全に欠けている代わりに、水流の変化を察知して泳ぐことができます。
それぞれの洞窟の魚が、完全に機能する目を持つ同じ種から進化したにも関わらず、このような適用が起こりました。
この祖先のグループは、メキシコのエル・アルブラ地域とアメリカ南部の一部の地表水域にも生息しており、1万年から1000万年前間に洞窟にすむ魚へと変わっていきました。
ケーブフィッシュは希少で研究が難しく、飼育下での研究が難しい種ですが、盲目のA・メキシカヌスを実験室で飼育したところ、明暗サイクルを持っているという予想外の能力を示しました。
スタインダルと研究チームは3つの隔離された洞窟から、ブラインド・ケーブフィッシュの組織サンプルを採取し、その表面の胚をさまざまな条件下でテストしました。
その結果、洞窟行の細胞が光を浴びるといくつかの分子時計メカニズムが活性化することが分かりました。
洞窟魚の細胞は通常の魚類の細胞ほど強くは反応しなかったものの、光の検知は細胞レベルでは放置されていることが分かりました。
異なる洞窟の魚の間には、表層の魚と比較していくつかの類似点がある一方、それぞれの生物時計変異が異なる分子メカニズムを介して、独立して進化したことを確認する相違点もありました。
これらの研究結果を受けスタインダル氏は「メキシコの盲目洞窟魚の細胞は、光を感知し明暗サイクルに体内時計を同調させることができることが証明された」と述べています。
研究チームは、この細胞培養によって概日リズムについてより多くのことが理解でき、暗い環境に対する動物の適応を研究しやすくなる事が期待されています。
この研究はnatureにて確認することができます。