年をとるごとに体の不調には悩まされるのが生物ですが、男性も女性に共通して現れる見た目の変化といえば白髪の増加ではないでしょうか。
もともと髪の毛は一本一本が白い状態で生え、色素細胞(メラノサイトなど)によって着色されていきます。
この色素細胞の機能低下や機能停止によって髪の毛の着色ができず、白い毛のまま成長することで白髪と呼ばれる状態になります。
こういった細胞は、ストレスによって不活性化することで、着色する機能が失われてしまうといわれています。
とある逸話では、フランス革命中に囚われの身となったマリー・アントワネットが、一晩で白髪になってしまったとか……。
実際、グレーだったマリーの髪の毛がたった一夜にして真っ白になるということは信じがたいことですが、長期的にみるとそういうこともありえるようです。
今回はそんな白髪についての研究のお話です。
参考記事)
・Evidence in Humans Shows Stress Really Can Turn Hair Gray. But It Could Be Reversed.(2023/12/07)
参考研究)
・Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells(2020/01/22)
・Quantitative mapping of human hair greying and reversal in relation to life stress(2021/05/12)
・Compartmentation of Mitochondrial and Oxidative Metabolism in Growing Hair Follicles: A Ring of Fire(2017/03/23)
冒頭でのべたように、白髪や白髪は通常、年齢を重ねるにつれて毛包の色素細胞がゆっくりと死滅することによって引き起こされます。
これは、細胞が機能しないことによるメラニン色素の不足を意味します。
ただし、他の要因もメラニン生成に影響を与える可能性があるという証拠がいくつかあります。
過去の研究で科学者たちは、マウスのストレスと白髪との関連性を明らかにしましたが、それが人間で起こることは決定的に証明されていません。
2021年にコロンビア大学で行われた研究では、白髪とストレスの関係についていくつかの証拠が明らかになりました。
14人のボランティアを対象に、これが実際に起こっているという強力な証拠がいくつか得られました。
研究では、すでに髪に白髪や白髪の兆候が見られる9~65歳の参加者を2年半の選考の末に採用し、特別に開発された高解像度スキャン技術を使用して彼らの髪の毛を分析しました。
すると、参加者の毛髪の色素喪失の兆候が分析され、灰色になるプロセスだけでなく、色素の非常に小さな変化も明らかになりました。
また、一度色素の喪失が始まるとそれが常に続くわけではないことの分かりました。
一部の参加者が記入したストレスに関する日記(過去12ヶ月間)と色の程度を比較すると、ストレスのサイクルと毛髪の色素沈着の変化との間に何らかの相関関係があることに気づきました。
つまり、ストレスが軽減されると髪の色は元に戻る可能性があるようですが、加齢に伴う白髪を元に戻せるかは明らかではありません。
コロンビア大学のマーティン・ピカード准教授(行動医学)は、「古い白髪がその人本来の色素の状態に戻るメカニズムを理解すれば、ストレスや老化による影響について新たな手がかりが得られる可能性がある」と述べています。
研究者らは毛髪内部の何百ものタンパク質を分析し、白髪のエネルギー使用と代謝ストレスの指標であるミトコンドリアに関連するより多くのタンパク質との関連性を発見しました。
この関連性は以前にも科学者によって発見されており、ストレスが髪の色の変化を引き起こすという考えを裏付けています。
研究チームは、数学的モデルを使用して、より多くの人々と年齢層にわたって結果を拡張し、状況によっては白髪や白髪が実際にその色を取り戻すことができることを示唆しています。
今回の研究は、ストレスに関連した髪の色素沈着の喪失について、これまでで最も確実な証拠の一部と言えます。
ただし、サンプルの規模が小さいことから、研究の結果が全ての人に当てはまるわけではありません。
研究者らは、「髪が白髪になるかどうかは年齢によって閾値が存在する可能性が高く、ストレスやその他の生物学的要因により毛包が早期に老化する可能性がある」と述べています。
この研究は、“eLife”にて詳細を確認することができます。