体重を減らすには、身体に入れるカロリー量を減らすか、カロリーを消費するために運動量を増やすしかありません。
特に前者に代表される“極端な食事制限(クラッシュダイエット)”は、てっとり早く痩せるための方法として非常に人気があります。
しかし、極端な食事制限は、体調を崩したり精神的にも不安定になったりすることも多く知られています。
最近の研究では、長期的にみると体重が減少しにくい身体になってしまうことも分かってきました。
今回はそんなダイエット方法に対する研究者の見解をまとめていきます。
参考記事)
・A Crash Diet Could Be a Seriously Bad Idea For Weight Loss(2024/01/06)
参考研究)
・Persistent metabolic adaptation 6 years after “The Biggest Loser” competition(2016/05/02)
クラッシュダイエットは何年も前から存在していましたが、インフルエンサーやソーシャルメディアが発達によって、今では多くの人が知る人気のダイエット方法です。
通常、この種のダイエット方法は、数週間カロリー摂取量が1日800~1,200kcalと大幅に削減することが目安とされます。 (男性は1日に2,600~2,800kcal、女性は1,950~2,300kcalを目安としたカロリー摂取が望ましいとされています)
過去の研究では、これらの食事療法は特定の人にとっては非常に効果的であることが示唆されており、短期的には体重減少も見られました。
一方、肥満の成人278人を対象とした研究では、1日810カロリーのクラッシュダイエットを12週間行ったところ、食事量コントロールだけでカロリーを減らした人よりも12か月後の体重減少が大きいことが分かりました。
また、急激な食事制限を行ったグループでは、平均して11キロ近く体重が減りましたが、中程度の食事制限を行ったグループではわずか3キログラムしか体重が減りませんでした。
同様に、ある研究では、超低カロリーの食事が2型糖尿病患者にとって有益である可能性があることを示しました。
研究者らは、8週間にわたって1日600カロリーを摂取した参加者の60%が2型糖尿病を寛解(病気による症状や検査異常が消失した状態)させることができ、体重も~15kgの減少が見られました。
12週間後の追跡調査では、参加者の体重が約3kg戻っていることが示されましたが、血糖値に変化はありませんでした。
これらのダイエット法は、食事えお制限しなければいけない病気の人や、などやむを得ない理由によって体重を減らす必要がある一部の人にとっては、短期的に効果があるかもしれませんが、長期的には代謝を損なう可能性があります。
ここからはクラッシュダイエットのデメリットについて紹介していきます。
代謝は体内のすべての化学反応の合計です。
私たちは食べたものをエネルギーに変換し、余ったエネルギーを脂肪として蓄えます。
代謝は、食事、運動、ホルモンなど、多くのシステムに関係し、クラッシュダイエットはこれらすべての要素に影響を与えます。
【その他懸念される影響】
・基礎代謝の低下
・免疫力の低下
・ケトン体の増加
・脱水症状
・心臓への負担
・皮膚や髪へのダメージ
・ストレスの増加
……(参考:医師が警鐘!「短期集中型ダイエット」が体に及ぼす9つの悪影響より)
通常よりもはるかに少ない食物を摂取するということは、食べた物を消化・吸収するために体がそれほど多くのエネルギー(カロリー)を使用する必要がないことを意味します。
効率的にカロリーを代謝する代表的な存在である“筋肉”も落ち、平均的な体温の低下もみられます。
これらの要因はすべて代謝率の低下に繋がります。
また、急激なダイエットは疲労感を引き起こす可能性があり、ワークアウトだけでなくあらゆるアクティビティを行うことが難しくなります。
これは、利用可能なエネルギーが生命維持反応に優先されるためです。
長期的に見ると、クラッシュダイエットはコルチゾールなどのストレスホルモンの増加など、体のホルモン構成を変える可能性があります。
クラッシュダイエットは、甲状腺によって生成されるホルモンT3(基礎代謝率を調整する上で重要なホルモン)のレベルも低下させる可能性があります。
T3レベルの長期的な変化は、甲状腺機能低下症や体重増加を引き起こす可能性があります。
これらすべての変化により、再びいつも通りのカロリーを摂取し始めると、体は体重をより増やそうと働きます。
こうした変化は数年とは言わないまでも、何か月も続くかもしれません。
もし、あなたが体重を減らそうと考えている場合、最善と言える戦略は、長期にわたって段階的に食事をコントロールし、少しずつ運動量を増やすことです。
段階的なダイエットは、代謝率への悪影響が少ないことが分かっており、運動に必要なエネルギーレベルを維持するのにも役立ちます。
筋肉内のカロリー燃焼の原動力であるミトコンドリアの機能も維持し、カロリーを燃焼しやすい身体のまま体重を減らすことが可能です。
理想的なダイエットは、1週間に体重を約0.5〜1kg減らすダイエットです。
脂肪と炭水化物は、タンパク質と比較して、消化を促進するために使用するカロリーが少なくなります。
高タンパク質の食事では代謝率が通常レベルより11~14%増加しますが、炭水化物や脂肪の多い食事では代謝率が4~8%しか増加しません。
そのため、体重を減らそうとするときは、1日のカロリーの約30%をタンパク質で構成することがオススメされています。
ある研究では、参加者の食事が30%がタンパク質で構成されていた場合、15%のタンパク質の食事と比較して、12週間の被検中の消費カロリーが441kcal少ないことが分かりました。
これにより最終的には5kgの体重減少につながりました。
これらのことから、現在判明している体重を減らすための最良の方法は、1日に必要なカロリー数を少しずつ減らし、運動を行い、タンパク質を十分に摂取することです。