親子の会話を通して子の地頭が育つ……というのは時折耳にすることがあります。
会話を通して相手の気持ちを考えたり自分の思いを伝えたりと、会話によるコミュニケーションは教育には欠かせないものです。
では、まだ言葉を理解できないような赤ん坊などに対してはどのような効果があるのでしょうか。
今回はそんな赤ちゃんへの語りかけに関する研究です。
参考記事)
・Talking to Your Baby Could Change Their Brain on a Cellular Level(2023.5.18)
参考研究)
・Language exposure and brain myelination in early development(2023.5.15)
イギリス イーストアングリア大学の研究者は、よく話しかけられた赤ちゃんは、言葉を理解する以前に脳の成長に対して良い影響が与えられている可能性を発見しました。
研究では、140人以上の幼児と乳児に音声の録音装置を装着し、3日間(合計6,208時間分)に渡って生活の中での会話について記録しました。
その後、子どもの昼寝中にMRIスキャンを実施し、脳内の様子を分析しました。
その結果、日常の環境でより多くの会話に触れた2歳半の子どもは、脳の言語関連領域でより多くのミエリンを持っていることが分かりました。
(ミエリン=神経細胞の軸索を取り囲んでいる物質。電気線を取り囲むビニールの管のような役割をする。電気信号が身体の他の部分へ伝わる速度を速める役割ももつ)
このことから、子どもの言語処理能力をサポートする可能性が高いと考えられています。
UEAの心理学部の主任研究者であるジョン・スペンサー氏は、「子どもの脳は、産まれてから最初の2年間で急速に発達し、脳の容積は2歳までに成人の約80%まで形成される」と述べ、ミエリンと脳の発達についての関係究明に期待を寄せています。
また、同研究にて、生後6ヶ月の乳児では、ミエリンの形成が遅くなる例が発見され、その分言語関連の脳領域の成長を促進させる可能性も推測されています。
研究者は「これらのプロセスについてまだまだ学ぶべきことがたくさんあります。子どもに接する人へのメッセージは明確です。“ーあなたの赤ちゃん、幼児、子どもにたくさん話しかけてください。ー”彼らは聞いているだけでなく、あなたの言語によって脳が作られていきます」と会話の重要性をまとめています。
この研究のまとめは、UEA(University of East Anglia)にて確認することもできます。
・子どもの脳は2歳までに80%形作られる
・乳幼児への会話は脳の発達を助けるかもしれない
・いずれにしろ、幼い頃から会話に触れるのは良いことである
学校授業や塾での勉強において大切なことの一つに“国語力”があります。
目や耳から入った情報を理解したり、相手が伝えたいことは何なのかを把握する能力と考えてもらって差し支えないでしょう。
先生が一方的に話す学校の授業スタイルついていくには必須と言っていい能力でもあります。
この国語力のほとんどは、家庭での親子の会話によって形成されます。
親子間の会話が少ない家庭はそれだけで不利であり、他の環境でこの力を鍛えることは難しいです。
中学受験を考えてる家庭などは、親が早い段階でこういった知識をつけているため、語彙力や理解力が高いことがよくあります。
そういう観点からいくと、会話をする前の段階から子どもに話しかけるというのは効果的なのだと感じます。