断食、ハーブ、凍結、時には人体に有害な化学物質などを使い、人類は、可能な限り寿命を伸ばそうと努力してきました。
しかし、どんなに権力を持っていたものでも、どんな億万長者でも、その夢にかなった者はいません。
これまでのところ、人が生きた最長の記録は122年です。
現代の科学では、この寿命をどのような見方をしているのでしょうか。
今回はそんな、寿命についてのお話です、
2023年4月20日にScience alertに掲載された記事からまとめていきます。
参考記事)
・How Long Could The Human Lifespan Get? The Answer May Surprise You(2023.4.20)
参考研究)
・Humans can't live forever, but we haven't even come close to the limit for how long our bodies could last(2023.4.20)
病気や怪我の危険のない空間に住んでいたとしても、人体は血液を送り出し、食べ物を消化し、生存に必要なすべての機能を実行するために消耗していきます。
老化は細胞やDNAに焼き付けられているため、年齢を重ねれば重ねるほど、この消耗から体が回復するまでに時間がかかります。
これは、いずれ組織が徐々に自己治癒能力を失い、病気や機能不全につながる可能性があることを意味します。
ある研究では、人体の回復時間は15年ごとに2倍になることが示されています。
40歳で、治るのに1週間かかった怪我は、55歳では治るのに2週間かかる可能性があります。
最終的に人体は、全ての回復力を失い、体の多くの部分が機能不全に陥り、死を迎えます。
しかし、研究者の間ではこの回復力を失う上限については議論が分かれています。
115年と言っている研究者もいれば、130年が限度と言っている者もいます。
アメリカとイギリスの50万人以上の人々を分析した最新の研究では、人間は120歳から150歳の間に全ての回復力を失うことが示されています。
では、その長寿を妨げているものは何なのか。
それは老化細胞にヒントが隠されています。
老化細胞とは、再生を停止するが死なない細胞のことです。
これが起こると、一部の老化細胞が破壊的な物に変わります。
炎症性の化学物質を放出し、幹細胞を含む健康な細胞に害を与え始めるのです。
しかし、全ての老化細胞が悪いわけではありません。
ミネソタ大学の研究チームは、一部の老化細胞は、傷の修復を助ける化学物質を分泌することも分かっています。
ある企業では、体内の悪い老化細胞だけを封じ込めて破壊する、“セノリティクス”と呼ばれる薬を開発しています。
これらの実験的な薬によって、そもそも細胞が老化すること自体を防ぐこと可能になるかもしれません。
しかし、これまでのところ有害な老化細胞を完全に防止、又は排除する方法を解明した人はいません。
60歳までに人体は、特に免疫系は有害な老化細胞を一掃するのが難しくなり、組織の損傷や機能不全を引き起こす可能性があります。
細胞老化の主な原因の一つはDNAの損傷であり、これが2009年のノーベル賞につながった、寿命とテロメアの関係に繋がっています。
テロメアを使った生物学的年齢は、暦年齢や現在何年生きてるかよりも、寿命を予測するのに適していると主張する人もいます。
テロメアはDNAの末端にある保護キャップであり、塩基対と呼ばれる一連の分子で構成されています。
年を重ねるにつれてこれらの塩基対は消失し、短くなっていきます。
そして、テロメアが短くなっていくほどに、DNAは損傷や老化の影響を受けやすくなるとされています。
生まれた時、白血球んなど特定の免疫細胞のテロメアは7,000から11,600の塩基対を持つことができます。
そのサイズが5,000塩基対まで減ると、死のリスクが高くなることが最近の研究で判明しました。
一方、ある研究では、100歳を超えて生きる人の中には、テロメアが年々短くなるのではなく長くなる場合があることもわかっています。
このことから一部の科学者はテロメア回復のプロセスを、若い個人で模倣する方法を研究するようになりました。
Avivクリニックでは、35人の高齢者に対し、高圧酸素療法(HBOT)を行った場合の反応を研究しました。
彼らは毎日30回のHBOTの後、白血球細胞のテロメアの長さを伸ばすことに成功しました。
しかし、30回以上のセッションの後、テロメアの成長が停止してしまうため、科学者は治療効果がどのくらい続くのかは未知数な点が多いです。
DNA損傷と細胞老化のもう一つの原因は、DNAのメチル化です。
これはメチル基と呼ばれる分子が遺伝子の特定の部位に結合することです。
場所によってはメチル基が遺伝子の活性化をブロックしたり、必要に応じて遺伝子活性を高めたりすることがあります。
一般的に、DNAメチル化は年をとるにつれて減少したり、間違った遺伝子が活性化される可能性があります。
これまでの研究では、メチル化の低下はアルツハイマー病心血管疾患がんなどいくつかの加齢に関連した病気と関係があるとされています。
テロメアと同様、DNAメチル化は科学者が生物学的年齢を測定するのに役立ちます。
例えば、あなたが50歳だとしても、何年にもわたる喫煙やアルコール摂取の後、細胞は通常の60歳に見られるレベルのメチル化を経験している可能性があります。
勿論、その分寿命が短くなる可能性が高いです。
メチル化年齢が実年齢より5歳高い人は、死亡リスクが16%高いことが研究で分かっています。
人間の寿命の制限要因の一つに、ミトコンドリアがあります。
ミトコンドリアは生物が進化していく中で獲得した効率的なエネルギー生産法の一つです。
小さな豆の形をした微細な構造は、生存に不可欠な細胞のエネルギーのほとんどを生成することができます。
一方、フリーラジカルと呼ばれる副産物も生成します。
フリーラジカルは、本来2つのペアであるべき電子が1つしかない分子や原子のことです。
基本的に不安定な原子であり、細胞の一部を傷つけ、酸化ストレスと呼ばれる損傷を引き起こします。
時間が経つにつれて酸化ストレスが蓄積し、パーキンソン病やアルツハイマー病、がんなど加齢に伴う病気を引き起こす原因になります。
喫煙やアルコール、公害物質や過剰な運動、座りっぱなしの生活や精神的なストレスなど、あらゆる原因がフリーラジカルの上昇に繋がります。
テロメアの短縮はDNA損傷に繋がる可能性があり、まだミトコンドリアが破壊されます。
また、ミトコンドリアからの、フリーラジカルはテロメアとDNAをさらに損傷する可能性があり、これら加齢に伴う問題は複雑に影響を及ぼし合っています。
逆に、これらの要因を取り除くことができれば、あるいは良い相互作用を引き起こすことができれば、人間の寿命は150年まで伸ばすことが可能だと考えられています。
・人間は150年以上生きることができるかもしれない
・老化の主な原因は、細胞やDNAの変異や損傷
・細胞とDNAの老化については多くの企業や研究者が今なお研究中
・今後、細胞の老化、テロメアの長さ、DNA のメチル化が長寿の鍵になる
以上、人間の寿命と科学的な長寿の限界についての研究まとめでした!
不老長寿は人類の夢のひとつですね。
DNAの損傷や不具合が人間の寿命を決めているのは何となく理解していましたが、ストレスや喫煙など、良くない生活習慣は寿命を縮めるサイクルを促進させてしまうということを改めて再認識させてくれる内容でした。
すぐに寿命を伸ばすことは叶わないとしても、生活の中で老化に抗う手はありそうですね。
そのために日々の過ごし方を見直すというのは有効であり、健康的に長生きする条件だと肝に銘じて過ごしていきたいと思います。