自分の思った通りにいかなかったときや理不尽に叱られたときなど、自分ではどうすることもできない状況に陥った際、もの凄いストレスを感じるときがあると思います。
自分でどうにかできるシチュエーションであれば、それを自らの行動で直したり、直さないにしても納得してストレスを緩和できたりもします。
しかし、社会で生きる以上、そうでないシチュエーションも多くあります。
今回は、そんなストレスからくる身体の不調についての研究まとめです。
どうやら心理的なストレスが、身体に影響を及ぼす可能性があるようです。
参考記事)
・Thoughts Inside Your Head Can Unleash Physical Pain, Study Finds(2023/06/02)
参考研究)
・Cognitive dissonance increases spine loading in the neck and low back(2023/03/02)
“タバコは健康に悪いと理解”していながらも、“タバコを吸いたいという欲求”がある。
こういった異なった認知がある状態を“認知的不協和”と呼ばれています。
2013年3月にオハイオ州立大学と及びミシガン大学の研究チームによる発表では、言葉によって受けた心理的な苦痛が、心だけでなく身体にも余計な負担をかけることが示されています。
実験では、17名のボランティアの参加者を対象に、精密降下課題(物を上げ下げしてもらう作業)の後、その作業に対しての評価を口頭で伝えました。
参加者に伝えた評価は、初めのうちは作業がうまくいっていることを伝え、後の評価ではあなたは十分な仕事をしていないことを伝えました。
その結果、軽い作業であったにもかかわらず、心理的な苦痛が参加者の腰や首に負担がかかったという報告を受けました。
作業が上手くいっていたはずなのに、後の評価でそれを覆す結果になったことが認知的不協和を招いたと考えられます。
痛みは、身体的、社会的、心理的なストレスが混ざり合ったもので、経済的なストレスや精神的な不調が重なることでも現れます。
医師が腰痛を説明する際に使う言葉を選ぶだけで、患者の回復を促すことさえあります。
1987年に発表された腰痛治療の研究にて、整形外科医のゴードン・ワッデル氏は「腰痛をただの身体的な疾患として切るのではなく、何らかの原因のある病気として捉えなければいけない」と述べています。
17人のボランティアを対象にした実験では、背骨や腰にかかる負荷を測定するモーションセンサーを装着しながら、軽い箱を正確な位置に移動させるという課題を課されました。
走行練習では「あなたは背中を守る為に正しい動きをしている」と評価されました。
その後、フィードバックは次第にネガティブになり、「あなたは不満足な方法でタスクを行なっている」と評価されるようになりました。
被験者の不快感のスコアと背骨にかかる力学的負荷を比較したところ、ネガティブなフィードバックによって苦痛を感じた場合、タスク開始時のスコアと比較して、背骨の負荷が20〜30%増加していることが分かりました。
オハイオ州立大学の研究者マラス氏は「この背骨の負荷の増加は、かなり軽い負荷をかけたたったひとつの条件下で起こった」と述べています。
つまり、心理的なストレスが繰り返されると、背骨に大きな負担がかかり、痛みにつながる可能性があると考えられます。
こういった心理社会的側面を理解することは、物理的な治療法に加え、心理的な治療法を加えることに繋がります。
「何が人々の痛みを助長するのかを理解することで、初めて痛みを和らげることができる」と本研究はまちめられています。
・ネガティブな評価によって、腰の負担が増加し、痛みに変わる事例が報告された
・作業が順調である評価をされた後、真逆の評価をされたことによる認知的不協和からくるものと考えられる
・人か感じる物理的な痛みは、心理的な側面からくるものも多くあることが示唆される
この研究から思い当たるシチュエーションは、やはり理不尽に怒られたりする場合だと感じます。
始めにある上司に指示された行動をしている際、別の上司からそれについて注意を受けるなど、自分が関与しにくい状態になるとモチベーションだけでなくパフォーマンスが著しく落ちることは容易に考えられます。
心理的なストレスだけでなく身体的な不調も現れるとなると尚更です。
他人の評価を気にしてしまう人だと、なお顕著にストレスの影響を受けるでしょう。
このことを踏まえると、やはり“スルースキル”というのは自分の身を守る上では活きてくる考え方なのだと感じます。