古代の生物の色彩は現在、そのほとんどが現代いる動物からの類推によって色付けられています。
一部の恐竜の羽毛や皮膚の化石には色素分子が保存されているもあり、生きていた頃の色彩を推測可能なものも存在します。
しかし、更に昔、何億万年の歳月を経て化石化した生物の色を完全に把握することは難しいです。
今回はそんな古代生物の色に関する研究の紹介です。
参考記事)
・Fossils Preserve The Original Color Patterns of Insects, Scientists Find(2023/09/20)
参考研究)
・更新され次第追記
・Preservation and Taphonomy of Fossil Insects from the Earliest Eocene of Denmark(2022/02/03)
・Insects' Dazzling Colours Have Been Preserved in Myanmar Amber For 99 Million Years(2020/06/30)
化石化した昆虫には、黒褐色の斑点や縞模様、しみなどが見られることが多くあります。
研究者たちは、これらの模様は昆虫の外骨格の厚さや硬さ、あるいはそれらの組織に含まれる色素を反映していると推測しています。
中国とアイルランドの研究チームは、昆虫の化石によく見られる色調パターンを調べるため、現代の昆虫を使って一連の実験を行いました。
実験では、光顕微鏡と走査型電子顕微鏡を使って、翅に印象的な単色模様があることで知られる直翅目昆虫の化石を撮影しました。
すると、暗い色の帯の中にだけ、昆虫の外骨格の痕跡が見つかりました。
次に、単純なパターンを持つ現生甲虫3種を選び、その外骨格をアルミホイルで包み、200℃~500℃の温度で焼いて化石化をシミュレートしました。
シミュレートした模擬化石を走査型電子顕微鏡で観察したところ、残った黒い斑点はメラニンを豊富に含む外骨格の色素部分であることが分かりました。
つまりメラニンを多く含む部分は残り、それ以外の部分は化石化のプロセスで消失してしまう可能性があるということです。
研究者たちは、縞模様や斑点模様は、化石化した昆虫が本来持っていた色調を表していると考えられると結論づけています。
メラニンの化学的証拠は、過去に発見されたカブトムシ、スズメバチ、イトトンボなど他の昆虫化石の濃い色の外骨格から見つかっています。
しかし、昆虫の化石記録は約4億年前のデボン紀前期まで遡るにもかかわらず、それらの色彩は脊椎動物に比べてほとんど注目されていませんでした。
研究を主導した南京大学の王教授らは、「この研究データは、昆虫の圧縮化石に見られる単色の色合いが生物学的なものであること、またメラニンに基づく色彩パターンであることを示す初めての実証的証拠となるだろう」と述べています。
今後、色調パターンを比較する研究が進むことで、"太古の生態系における昆虫の色彩、行動、生理機能など進化に関する貴重な洞察を得ることができるだろう”と期待されています。