パリスの審判前編では、大まかなストーリーを紹介していきました。
後編では絵の中身に一歩踏み込み、何が描かれているのかを紹介していきたいと思います。
パリスの審判
ではルーベンスのパリスの審判に戻っていきます。
彼の絵でも三美神やパリスが描かれています。
それぞれ右側から紹介していきます。
金のリンゴを持っているのがパリス。
そしてその上で木に手をかけているのが、旅や商業、知らせを司る神ヘルメスです。
きっとヘルメスが状況を説明しているのでしょう。
いちばん下描かれている犬はパリスの立場を表しているとされています。
孔雀が敵意を剥き出して犬を見ている理由もこの後に判明します。
ヘラ
続いて三美神一番右に位置するのは、ゼウスの妻ヘラです。
豊満な身体と赤い厚手な着物から豪華な印象を受けます。
ヘラのアトリビュート(その者を表す象徴のようなもの)は孔雀です。
ヘラのを描く場合には孔雀と一緒に描かれることが多いです。
彼女が選ばれるとパリスは最も強い権力を手にすることになっていましたが、パリスはヘラを選びませんでした。
孔雀が犬に威嚇しているのは、選ばれなかったことの悔しさを表しています。
アフロディーテ
続いて三美神中央に位置するのは、愛を司る神アフロディーテです。
透き通った衣を纏う姿は純粋さと美しさの表れです。
髪の毛に見える花飾りは、豊穣を司る神としての意味も込められているよう感じます。
アフロディーテのアトリビュートは恋の神クピド(キューピッド)です。
お馴染みの弓矢で意中の相手を打ち抜きます。
パリスがアフロディーテを選ぶと、パリスが最も想いを寄せる人と結ばれることになっています。
パリスが選んだのはこのアフロディーテです。
トロイアの王子であるパリスは、敵国であるスパルタの王妃へレネを手に入れたい願望があったためアフロディーテを選びます。
アテナ
三美神一番左に位置するのは戦いの神アテナです。
両手を上げ肉体をさらけ出した姿は、強さと自身の表れです。
彼女のアトリビュートは武具です。
矛や盾、兜やマントが一緒に描かれることが多いです。
盾にゴルゴン(メデューサ)の頭があることから、ペルセウスのゴルゴン討伐後の話であることが分かります。
もしパリスがアテナを選んだ場合、これからの全ての戦に勝利する力を得ることになっていました。
アレクト
権力でもなく力でもなく愛を選んだパリス。
しかし結局彼は、神の手を借りるのではなく自らの手でスパルタ王妃のヘレネを奪い去りにいきました。
これが後に泥沼のトロイア戦争に繋がって行くという暗示も、暗雲の中のアレクト神が物語ってます。
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