男性はテストステロンなどいわゆる男性ホルモンなどの分泌が多いため、運動によって筋肉がつきやすいなどの身体的なメリットがあります。
では、女性は身体活動によるメリットが薄いのでしょうか。
どうやらそんなことはないようで、米国の成人40万人以上を対象とした新たな長期研究では、同量の身体活動後の女性と男性を比べたところ、女性のほうが長期的な健康上の利益を得やすいことが判明しました。
女性は、男性ほど体力と健康を維持するために多くの時間を費やす必要はないかもしれません。
以下に研究内容をまとめていきます。
参考記事)
・Women Don't Have to Try as Hard at The Gym to Reap Long-Term Health Benefits(2024/02/27)
参考研究)
・Sex Differences in Association of Physical Activity With All-Cause and Cardiovascular Mortality(2024/02)
カリフォルニア州シュミット心臓研究所の専門家が主導したこの研究にて、1997年から2019年までの参加者の健康データを追跡し、身体活動レベルと特定の病気による死亡率を比較しました。
研究者らは、調査対象となった女性が毎週行う早歩きやサイクリング(ウエイトトレーニングや体幹トレーニングも含む)などの運動量が、男性対象者に比べて大幅に少ないことを発見しました。
それにも関わらず、全く運動をしなかった女性と比べると、毎週少なくとも何かしらの身体活動を行った女性は、何らかの原因で死亡するリスクを最大24%程度低下させたことがわかりました。
男性の場合も死亡リスクの低下が見られましたが、女性と比べるとその減少率は低く、全死因死亡率の15%程度の減少となりました。
また、男性の対象者の場合、週に5時間の有酸素運動を行ったときが最も健康に生きる時間が長いことがわかりました。
一方、女性の対象者の場合、週に中程度から激しい有酸素運動をわずか2時間程度行うだけで、男性と同様の生存効果が得られました。
ウェイトリフティングや体幹トレーニングに関しても、男性は週に3回のセッションで最も高い生存効果が見られましたが、女性は週に1回のセッションだけで同じ効果が得られました。
この研究結果は、運動によって健康や寿命に良い効果を得るという点において、男性と女性では異なる量の運動が必要であることを示唆しています。
研究者らはなぜこのような性差が存在するのか現時点では不明としています。
予測されることとしては除脂肪体重が少ないことが挙げられており、これにより血管を拡張する能力が制限されるため、女性が身体活動を行うと、男性よりも心血管系を少しだけ激しく働かせることができることが要因ではないかと推測されています。(Sex Differences in Association of Physical Activity With All-Cause and Cardiovascular Mortality より)
これらの調査結果は、身体運動に対する推奨事項は性別によって異なるべきであることを示唆しています。
女性の運動量には男女差があるとよく言われますが、これは一部の研究者が考えているほど公衆衛生上の問題ではない可能性がある。
これらの関連性を確認し、女性が運動量を減らす必要がある理由を探るにはさらなる研究が必要とされています。
研究者らは、身体の健康に対して「皆がこうしろ」という画一的なアプローチの限界について検討する時期が来たと考えています。
心臓専門医のクリスティーン・アルバート氏は、「この先駆的な研究が、現在定期的な運動を行っていない女性たちにが運動するきっかけになることを期待している」と語りました。
この研究は、Journal of the American College of Cardiologyにて詳細を確認することができます。